トランプ大統領は中国と共同して北朝鮮問題を解決することを望んでいる。中国の為替操作国認定を見送ったことは、貿易不均衡解決案策定に少なくとも100日後(7月中旬)まで待つのだろうか?また、その間、米国は北朝鮮への単独軍事行動を控えるのだろうか?

 

 トランプ大統領は、北朝鮮問題と対中貿易赤字問題について中国政府に宿題を与え、それを実行するか見守っている。米艦隊を北朝鮮近海に派遣し圧力をかけていて、今にも軍事作戦が実施されるような報道が目立つが、軍の統帥権と宣戦布告権を持つ議会の承認が必要で(米軍は朝鮮国連軍でもあり国連との調整も必要)、大統領の判断で軍事行動を起こすのは無理がある。(米議会は4月8日より23日まで2週間イースター休暇で閉会中。)

 

 トランプ大統領は、選挙戦やツイッターで過激な発言をしているが、無理をせず法に従い政策を実施し、穏便な行動を取っている。(クシュナー・イバンカ夫妻の影響が強いと報道されている。)

 

トランプ大統領ツイート(日本時間4月16日21時18分)
Why would I call China a currency manipulator when they are working with us on the North Korean problem? We will see what happens!
ブルームバーグ翻訳「北朝鮮問題でわれわれと協力している中国を為替操作国とどうして呼べようか」
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/853583417916755968

 

ブルームバーグ記事 4月17日
トランプ大統領:北朝鮮問題で協力する中国を為替操作国とは呼べない
 トランプ米大統領は選挙公約に反して中国を為替操作国に認定しないことを決めた理由について、北朝鮮を抑え込むために中国政府の協力を得られるためだと説明した。
 トランプ大統領は16日午前にツイッターで2800万人のフォロワーに対し、「北朝鮮問題でわれわれと協力している中国を為替操作国とどうして呼べようか」とコメントした。
 北朝鮮は前日遅く(日本時間16日朝)にミサイル発射に失敗しており、トランプ大統領はそれを受けてツイートした。トランプ大統領はイースター(復活祭)の週末をフロリダ州パームビーチで過ごしている。

 米財務省は14日公表した外国為替報告書で、中国を為替操作国として認定することを見送った。代わりに同国に対し、人民元が市場原理に従い上昇するのを容認するよう求めた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-16/OOISUJ6TTDS001

 

「為替操作国認定問題」
4月14日、米財務省、半年毎の貿易主要国の外国為替報告書を発表、各国の為替操作国認定を見送り。

 

ブルームバーグ 4月15日
米財務省:中国の為替操作国認定見送り、日本の監視継続-為替報告書
 米財務省は14日公表した半期に一度の外国為替報告書で、中国を為替操作国として認定することを見送ったが、同国に対して人民元が市場原理に従って上昇することを容認するよう求めたほか、貿易のさらなる開放も要請した。
 為替操作国として認定した主要貿易相手国・地域はなかったが、同省は「監視リスト」に前回と同じく中国と韓国、日本、台湾、ドイツ、スイスの6カ国・地域を指定した。為替報告書の発表はトランプ政権下で初めて。
 報告書は「中国の現在の対米貿易黒字は極めて多額かつ持続的」であるとし、これは中国が米国の財・サービスに対して経済を一段と開放し、家計消費押し上げのため改革を加速する必要があることを浮き彫りにしていると指摘した。

 トランプ米大統領は12日、中国を為替操作国に認定しないことを明らかにし、選挙公約の一つを後退させていた。トランプ大統領は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、中国がここ何カ月は人民元を操作していないと発言する一方で、他国が自国通貨を切り下げていると非難し、ドルが強過ぎると述べた。

 昨年10月公表のオバマ政権最後の報告書と同様、中国は為替操作の判断のために財務省が使う3項目の基準のうち、多額の対米貿易黒字という1項目のみに抵触した。報告書によると、中国の昨年の米国に対する貿易黒字は3470億ドル(約37兆7700億円)と、主要貿易相手国で最大だった。台湾も1項目に抵触したが、それ以外の4カ国は2項目に抵触した。
 財務省は台湾と日本、韓国に対しては、介入を最小限にとどめ、柔軟で透明性のある為替政策を目指すよう求めた。
 米国は1994年以降、どの国も為替操作国として認定していない。財務省は為替操作の判断基準について、対米貿易黒字が200億ドル超、経常黒字が自国国内総生産(GDP)の3%超、GDPの2%規模の海外資産購入による継続的な通貨安誘導という3項目を維持した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-15/OOFC3R6KLVR501

 

米財務省HP
https://www.treasury.gov/resource-center/international/exchange-rate-policies/Pages/index.aspx

 

税関授権法に規定された為替操作国認定ルール
 TPA法(大統領貿易促進権限法)の「税関授権法(Trade Facilitation and Trade Enforcement Act of 2015)」(2016年2月24日施行)第701条の新しいルールによる対象国。
https://www.congress.gov/bill/114th-congress/house-bill/644

 

税関授権法第701条の判定基準、
(ⅱ)貿易相手国のマクロ経済と為替政策の分析
(Ⅰ)米国との貿易黒字(年間200億ドル以上)
(Ⅱ)経常収支の黒字(GDPの3%以上)
(Ⅲ)外為市場への継続的・一方的な介入(12ヶ月でGDPの2%以上)
  2000年以降の15年間の調査で、中国と台湾は12回、韓国は数回あった。調査時期は6月と12月、12ヶ月の内8ヶ月閾値を超える外貨購入があれば判断する。

制裁行動
(1)一般
 (A)海外投資会社の該当国への新規金融業務禁止
 (B)連邦政府の政府調達への参加禁止
 (C)IMFに対して、該当国のマクロ経済と為替政策と為替操作に関し追加的な厳しい監視を要求すること
 (D)貿易協定を結ぶ際、USTRと財務省は協力して、協定を結ぶかどうか判断、または相手国に是正を促し協定を結ぶこと。  

 

「米中首脳会談合意」
4月7日、米中首脳会談で対中国の貿易赤字を是正する100日計画策定を中国が行うことで合意した。

 

日経 4月8日 
貿易不均衡是正へ100日計画 米中首脳合意
対北朝鮮で協力強化
  【パームビーチ(米フロリダ州)=永沢毅】トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は7日午後、トランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」での2日間にわたる初の会談を終えた。両首脳は米国の対中貿易赤字の是正に向け、100日計画を策定することで合意。    北朝鮮の核・ミサイル問題で協力を強化することで一致した。
会談後、ティラーソン米国務長官やロス米商務長官が会談の内容を明らかにした。米側の説明によると、習氏はトランプ氏に対し、米軍によるシリアのアサド政権への空爆に理解を示した。
 両首脳は北朝鮮問題が極めて深刻な段階に入ったとの認識も共有した。ただ、この問題で具体的な項目の合意はないという。米側は人権問題の重要性を指摘した。
 トランプ氏は会談で「我々は多くの問題を解決することができる」と強調。習氏は「友好関係を安定的に発展させていきたい」と表明した。両首脳は7日午前の会談後、別荘内を2人で短時間、散策した。昼食会でも議論を続行し、会談を終了した。同日午後、習氏は帰国の途に就いた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN08H1W_Y7A400C1000000/