と言うけれど、仕事をして夜遅く帰って来てからピアノの練習をするのはなかなか難しいかも知れない。翌日も早かったりすると尚更だ。風呂にも入らずに一刻も早く眠りに就きたい時もあるものだ。夜、音を出す問題もあるだろう。完全防音という環境ならまだしも、電子ピアノでさえ鍵盤を弾く音が問題になる場合もある。


ショパンが言うように (*1)「全身全霊をあげて練習に集中しなければならない」としたら、疲れきった頭ではまともな練習さえおぼつかないことも考えられる。

中学校の先生が勉強法を説いていた時、「やる気が無くても兎に角机に向かうこと」と言っていたが、椅子に座ってもやる気が沸かなかった覚えがある(苦笑)。やはり着くだけではダメで、脳科学研究者の池谷裕二氏が言うように (*2)「やり始めるからやる気がでる」ものである。

学生時代、レッスンが迫っているから練習していた時などは、ピアノに向かって暫くすると眠たくなった時もあるが、今は疲れている時の方が却ってすんなりと音楽に入れるものだ。余計な雑念が無いからだと思う。


もしあなたが大人になってピアノを始めたのに、「仕事との兼ね合いでピアノを練習する時間が取れない…」と悩まれていたら、疲れている時にこそピアノに向かわれることをお勧めしたい。音楽があなたを癒やしてくれるに違いない。これこそ自己音楽療法と言えるだろう。


*1「弟子から見たショパン」(音楽之友社)
*2「脳には妙なクセがある」(扶桑社)