家の近くの古ぼけたバーにいた。
バーテンダーの人が少しばかりのアルコールが入ってるわけか、少しふらついていた。
店の長老に連れて行ってもらったお店だけにその長老と常連客は仲良くしている。
ボクは高い位置にあるテレビを見ていた。
3台あるテレビのうち2台はアメフトの試合を放送していた。
もう1台はジョン・シナ(WWE)のことが大好きな黒人の少年がシナ本人に会えるというサプライズ企画を放送していた。
まずはトリプルHと対面し会場のチケットをプレゼントしてもらい、WWEスーパースターのいる控え室に招待してもらっていた。
背後からジョンシナが忍び寄りサプライズ成功というわけだ。
その映像を見ながらボクはカバナーズアイランドに行ったことを思い出した。
3週間も前の出来事。
回顧録だ。
夏のニューヨークの人気スポットであるガバナーズアイランド。
たった2ドルのフェリーの往復券でこの地に着くことができる。
ボク達は現地集合のようなシステムをとっていた。
目的地までは己の“生き方”で行く
という前衛的であり、一つの人生の指針のような思想を兼ね備えているので何も言わなくてもそういうシステムになった。
ダーウィンの進化論になぞらえるのなら、生き残るのは強い生物ではなく変化に対応できる生物である、と。
そして、ボク達は変化に対応できる人間であるということの証明のためにやっていることなのだ。
幾多もの試練を潜り抜けた戦友と共に島内を観光した。
元気はつらつオロナミンCのような黒人に道を聞いた。
大した情報は得られなかった。
ワントレードセンターを見るたびに
『ここに旅客機が突っ込んだのか。』
と自分が歴史の動いた場所にいる事が今だに信じられないなかにいる。
今年で28歳になる。
チェ・ゲバラがキューバで“自由を教えるため”の革命を起こした年齢が28歳。
ダウタウンのごっつええ感じの放送が始まったのが28歳。
ジョン・レノンがオノ・ヨーコと挙式をしたのが28歳。
なるほど、人にはそれぞれドラマがある。
ボクの人生はドラマチックではなく、さざ波のような人生だ。
ただそこに存在するだけだ。
帰りのフェリーはとても静かに時は過ぎ去った。
Manhattanについた事が気付かなかったぐらいだ。
続く。
黄昏、日本編