ボクはフリートウッドのバーにいた。
目の前でビリヤードをするアメリカ人がいる。
ここのバーの常連である日本人のおばあちゃんに
『玉突きできるか!?』
と言われて、ビリヤード(玉突き)に参加する。
ビリヤードなんてやったことないけど何とかなると思ってやってみたが不甲斐ない結果で幕を閉じた。
その時の対戦相手のアメリカ人にボクが球を打つたびに
『What's happen!?』
と言われた。
あまりにも下手すぎたため、僕の身に何が起こったのか聞いてきた。
ボクは至って健康だし何も障害は抱えていないが、シンプルに才能が渇望しているための結果である。
ボクは椅子に座り残りのワインを飲み干した。
『7年前にしたセックスが一番気持ちよかった。』
と彼女はボクに話してくれた。
彼女の現在の歳は68歳。
7年前ということは、61歳の時の話だ。
『浮気相手とやったけど、あれって(セックスのこと)こんなに気持ちの良いもんやねんなー!!』
とボクに嬉しそうに報告してくる。
ボクは気分がゲンナリした。
おばあちゃんのセックスの話なんて聞きたくもなかったからだ。
しかも浮気相手とのセックスだ。
なんども言うが61歳の時にしたセックスが一番気持ちよかったらしい。
ボクは女性が話す下世話な話が大好きだが、今回は話のエンジンもかからなかった。
燃料を積んでいないエンジンを永遠に空吹きしているような感覚だった。
ボクは今年で28歳になるが61歳になるまでには、まだ半分の地点にも到達していない。
セックス。
ここにきてボクは惑わされた。
セックスに年齢制限は必要ないのだ。
セックスに本当に必要なものは“愛”や“若さ”なんかではなく、“体力”なんだ。
どんなに愛を語ったとしても、どんなに若々しくても、体力というものが無ければセックスは出来ない。
そして、逆も然り。
セックスをすることで体力作りになり、健康でいられる。
本当の認知症予防としての最高の提案である。
ボクは不可解な心境でウォッカにオレンジジュースを混ぜてもらったカクテルを飲んでいた。
味はクソまずい。
酒に酔ったアメリカ人女性に絡まれた。
『君達は日本人だろ?』
『そうだよ。』
『じゃあ、Son of bitch!!って日本語で何と言うんだ?』
立て続けに
『Kick ass!!って日本語で何と言うんだ!?』
と質問され、教えてあげた。
そのアメリカ人女性はビリヤードをしているアメリカ人男性に教えてあげた日本語で叫び始めた。
その光景を見ながら再び不味いカクテルを飲み始めた。
黄昏、日本編