秋の風が吹いている。
ボクはそれを感じることができる。
この日の朝の気温は2度。
もう日本の冬じゃん!っと思い翌日厚着をして外に出たが、気温は12度あった。
ボクはニューヨークに遊ばれている。
なめられたもんだ。
Sammyさん宅へと遊びに行った。
Sammyさん宅へと入るや否や
『寒いなー、寒いから窓開けなあかんなー。』
とボケて笑かそうとしているのか、ただの天然なのか分からない発言で僕たちはいつも混乱する。
昔、長嶋茂雄さんが訪米した際は必ず会いに来てくれるというSammyさんの人脈の広さや(山陰新聞に掲載されていた情報) 懐の深さ、そして不意にエグい角度で投げ出されるボケ。
その総合力でアメリカで成功した偉人。
ボク達の面倒も見てくれる。
アウトレットモールに連れて行ってくれた。
まさかアメリカの風景を見ながら、都はるみの“大阪しぐれ”を聞くことになるとは想像もしていなかった。
マーティ・フリードマンなら喜ぶかもしれないが、ボクはマーティ・フリードマンではないしメガデスのギタリストでもない。
『俺昔スピード出しすぎてヘリコプターで追いかけられたことがあるんだよ!』
とアメリカの警察の底力を見せつけられたというエピソードを聞かされて、ボクは不意に笑った。
そんなエピソード聞いたことないよ!笑
『あそこの山の中腹に日本料理屋があるんや!ほら、鯉のぼりがあるやろ!』
と指をさしてくれた方向を見た。
そこにあったのは鯉のぼりではなく、アメリカの星条旗が風でなびいていた。
(確かに色の配合は似たようなものだから間違えるだろう)
という事にした。
もちろん、声には出さずに黙々とボクは頷いた。
夕方に焼肉を振舞ってくれた。
食後はMTVの対バンを鑑賞しながら(ピー音が炸裂していた) Sammyさんと将棋の対局をしていた。
家の窓から観るマンハッタンの摩天楼に、ボクは日本に残してきた記憶達を呼び起こしてた。
だが具体的な記憶は思い出せない。
記憶なんかどうでもよく、ただそこに何かが存在していた事に気付けただけだ。
外の景色は沈みかけた太陽の真っ赤な光で赤く鮮やかに染まっていた。
太陽はそのまま西に沈んだ。
誰も約束をしていないのに、太陽はまた明日も西に沈んでいく。
黄昏、日本編