大人になるということは涙もろくなるものだとボクは定義している。
ボクはTETSUと一緒に映画を観ていた。
観た映画はフォレスト・ガンプ。
この映画を観るのは5回目だけど、ボクの涙腺はバカみたいに緩いので崩壊してしまう。
男2人でフォレスト・ガンプを観るのはゲイカップルぐらいしかいないと思う。
本当にそう思う。
TETSUとの思い出を書こう。
なぜなら、彼はすでにニューヨークを去り日本に帰ってしまったからだ。
彼と初めて出会ったのはダラスのバーだった。
酒に酔っ払ったメキシコ人のトラック運転手達ががウェイトレスのケツを触ったりしてバカ騒ぎをしていた。
それを見た正義感の強いTETSUがリーダー格の男の肩を押し倒した。
っというのは全くの嘘で、本当はダンキンドーナツを一緒に買って帰り、グランドセントラルターミナルの広場の階段で食べたというだけの話。
彼との最終日にブライアントパークでスケートをした。
ボクは生粋のコメディアンなので、上手く滑れなかった。
コメディアンが滑ることはタブーなのだ。
ボクが滑る姿を後ろから見た悪童のTETSUは後ろから押してきやがった。
ボクはその度に、今まで使ったことのない筋肉を使って耐え忍んだ(結局4度転んだ。2度としないスポーツの1つに殿堂入りした)
Dallas BBQでアメリカンディナー。
最後の会食なので話に花が咲く。
会話には熱を帯びていた。
ドナルド・トランプの総資産の話、LAの不法移民の受け入れ体制についての話、高校時代ボクがニーチェの精神世界に傾倒してろくに友達がつくれなかった話、
っというのも全くの嘘で、Dallas式のBBQの量の多さにゲンナリしていた。
そりゃあ、Americanはでかいわ。
いつものメンバーで最後の夜を過ごす。
時間という奴は本当にろくな奴ではない。
苦しいときは時間の経過が遅いのに、楽しい時は時間の経過を早くする。
TETSUと出会ってからの3ヶ月間は今までボクの色彩のなかったニューヨークでの生活を鮮やかにしてくれた。
その楽しさの頂点の中で別れてしまうのは、寂しい。
本当はもっと伝えなければならないことがあったが、その時は言葉で表現ができない。
いつも、正しい言葉は後からやってくるのだ。
そして、朝7時を迎えた。
TETSUはジョン・F・ケネディ空港に向かう時間のために起きた。
ボクは仕事に向かう時間のために起きた。
『帰りたくないっす!』
TETSUが言ったこの言葉に陰りはなく、本当にそうなのだと思う。
旅には終わりがある。
終わりというのは別れることだ。
だが、また会える。
“good bye”ではなく“see you again”で。
『もっと遊べばよかったなぁ。』
こう思ったのも、最後になってから気づく。
TETSUとハグをして手を振って別れた。
ボクは仕事に向かった。
仕事を終え家に帰ってきてから、いつものダンキンドーナツでアイスティーとクソ甘いドーナツを買って食べた。
『いつもなら、あいつがいたのになぁ。』
と思い、ボクは余計に寂しくなった。
黄昏、日本編