例によってこの本↓から。
精神科薬物治療を語ろう―精神科医からみた官能的評価

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p.62~63、まるまる2ページを引用いたします。

---引用開始---
●究極の名人芸!

熊木:官能的評価についてお伺いしたいのですが、先ほどのフラッシュバックに四物湯合桂枝加芍薬湯が効くとか、エビリファイがいいのではないかということについてです。これは名人芸的なものです。このひらめきには因果というものが伴っていないのかもしれないですが、もしよろしかったら、そのようなひらめきに先生が到られた過程を、凡人にもわかるように説明していただけないでしょうか(笑)。

神田橋:それを言うと、皆から顰蹙を買うけれど、良いかなぁ・・・・・・しょうがないですよね。僕は、この薬が効きそうか効きそうでないか、投与する時点でわかりたいのですが、なかなかわかる方法はないよな、と思っていました。
 そうしたら、今アメリカでご活躍だと思うのですが、大村(恵昭)先生というずいぶん風変わりな先生のオーリングテスト(脚注省略・ネコ)というものに出会いました。オーリングテストというのは、今鍼灸の人や薬剤師にブームなんです。
 薬剤師が身体の診察をするのは違法ですが、オーリングを指で引っ張るだけだったら、身体に触れても医師法に違反しないだろうというので、薬剤師の人は皆やっています。
 ところがオーリングテストは、保護室に入っているような人にはできないし、薬がいっぱいありますからひとつずつテストをやっていたら引っ張るほうも疲れるし、どうしようもないなと思って、それで指テスト(脚注省略・ネコ)を考え出してやったりしてたんです。4,5年前までやっていました。ところが、手の動きが悪くなったり良くなったりするのは、自分の身体の中に、ある変化が起こるわけですから、動かないとか動きやすいという結果をもたらす内部変化を直接に察知できれば、手なんか動かさなくてもいいはずだと思って、動きが良いときと動きの悪いときの自分の身体内部の状態を一所懸命モニターしましたら、もう指テストをしなくていいようになりました。
 その薬をひょいと相手の前に出すと、相手の脳からこちらへ向かってくる邪気がスッと消えるので、「これ効くよ」と言って出したら、だんだん的中率が上がってきました。たくさんの薬についてやっていたんですが、最近では自分の使っている薬は、漢方も、ほぼ全部の薬効のイメージが頭の中に入りましたから、もう今はサンプルもいらないんです。と言っても、錠数になると、それほど正確度は高くありません。この話しになったらと思って(机の下のかばんから袋に分けた薬を取り出す)・・・・・・これはうちに陪席に来る人には教えるんだけど、覚える人も結構いるし、あきらめて覚えない人もいる。だけど、患者さんの中ですぐわかる人もいます。
 私がやっていたら、「ああ先生! それ! それ合う! 私に!」とか言った患者さんが何人もいます。とくに病気が悪いときは、合う合わないというのがわかるのでしょうね、脳の具合でわかるんでしょう。
 サンプルの薬を箱に入れて持ち歩くんですよ。これをクラスターに分けまして、これがマイナートランキライザー、これが比較的新しいメジャートランキライザー、これが古いメジャートランキライザー、それからこれがてんかん薬と睡眠薬、これが抗うつ薬--このように作っていまして、患者さんが来ると何もしゃべらないうちに、(サンプルをひとつずつ目の前の患者さんにかざすようにしながら)こうやって、この中にこの人に合う薬がある、とか言って、「これが合うからこの人はうつ病圏だ」といって決めるんです(笑)。
 何も聞かないうちに処方が決まって、処方が決まるから診断があとから決まる、という診療だから新患を含めても70人診れるんですよ。
 さらに練習を重ねていくと、新患の患者さんが来て、カルテが来て、そのとき患者さんは待合室にいて姿見えませんけど、だいたい待合室の方向はわかりますから、その方向に向かって(同じようにサンプルをひとつずつあげながら)こうしてやって、当てるの(笑)。「今度(診察室に入って)来る人はデパケンだよ、君」とか陪席の人に言って、実際に当たるかどうか、それを練習しているんです。まだ的中率はそんなに高くはないけど、5割は超えていますね。
 「どうしてわかるんですか」と言われても、知らない、わからないです。官能的評価もそんなふうになっちゃったら、いかんです(笑)。

---引用終わり---

やぁ・・・凄いね。(笑)
複数の薬の併用の場合どうなるのか、説明も後ろにあったのですが、いまいち分かりませんでした。
あと、電話でもわかるそうです。

しかしこの話し、「こういうのがあるんだって!」「すごーい!」とはなるけれど、そこから広がらないですにゃ。(苦笑)
だからkyupin先生はサイエンスに拘るんだろうなぁ、と勝手に思っています。
本当は、その気になれば、kyupin先生も同じ事ができるんじゃないかなぁ。そのほうが良い治療ができるかは別として。