神田橋條治先生の講演 「双極性障害の診断と治療」 ⑴

             「うつ病と躁うつ病」  ⑵

                    「観察」 ⑶

                    「面接」 ⑷

   「双極性障害が統合失調症と誤診される原因」 ⑸

                  「抗不安薬」 ⑹

                「気分安定化薬」 ⑺

                  「精神療法」 ⑻

                    「予後」 ⑼

            「臨床医からの質問 ①」 ⑽

            「臨床医からの質問 ②」 ⑾

            「臨床医からの質問 ③」 12

            「臨床医からの質問 ④」 13

            「臨床医からの質問 ⑤」 14

            「臨床医からの質問 ⑥」 15



今回で最後となります。 今までの(15)の記事にリンクをはりましたので、ご覧になってください。



追記


■躁状態の沈静化


躁状態にあっても気分安定化薬が中核となるが、多くの場合、沈静化のための抗精神病薬の併用が必要である。統合失調症の興奮を沈静化するのに有効な、またうつ状態のイライラに有効なレボメプロマジンは退行した接近傾向を増大させるので、躁状態には好ましくない。


躁状態の沈静化での第一選択肢はロドピン(ゾテピン)である。治療者側が腹立たしく感じるとき、つまり一貫して充分に会話や気持ちが通じあう躁的興奮には、ロドピンが有効なことが多い。また血中尿酸値の高い人にロドピンの適応があるようだ。


精神的病状が加わって、話が通じあえない場合が出没する躁状態にはトロペロン(チミペロン)を選択する。


症状としての言動や気分が変転して、治療者側が「お手上げだ。どうしたものか」と困惑する状態には、ニューレプチル(プロペリシアジン)やバルネチール(スルトプリド)が有効なことがある。


なお躁状態には、その人の隠れた欲求や才能が露出するという作用があるので、それを観察しておき、後日、日常生活の中で発揮するように指導すると、波を小さくする精神療法の効果がある。

なお、この講演の後、数年間にわたり躁状態が続いていた1症例に、リチウムとマイスタン(クロパザム)を併用して、劇的に沈静したという経験をした。





今回で神田橋先生による「双極性障害の診断と治療」のお話は終わりです。ありがとうございました。m(_ _ )m