2006年9月16日札幌市で行われた神田橋條治先生の講演録です。


「PTSDの治療 ⑩」  の続き

そして、ここにもまた大事なことがあると思います。初めは僕が教えてあげるけれども、「バッチフラワーを勉強してください」と本人にいうんです。バッチ先生は「患者が自分で自分の治療をできるようにしょう」ということでこれを発明されたんです。これは試しても害はないから、いろんな本があるので本で勉強して自分で試してみて、バッチフラワーの38の中から自分用のものを選んでいろいろなときに使うようにしなさいと。勉強させる。



そうすると、そのことが PTSDにとってはまた著しく治療的なんです。なぜかというと、PTSDというものはほとんどパッシブな体験であり、そのとき、自分がその状況をまったくコントロールできなかったという体験です。だから、無力です。そしてその無力感というものが生活の中に瀰漫して、無気力であり、すぐにギブアップしてしまって手を切る。少し、「何くそ!」という人は根性焼きをしたり。根性焼きというのは前向きですね。「よし!」といってやる。無力から有力へと。だけど、自分でコントロールする方法を少しずつ少しずつ築き上げていこうとするスタンスは、生活の中から無力感をだんだん減らしていくという精神療法になるわけです。



三浦雄一郎さんはアルプスをびゅーっと下がっているから、あれは死の恐怖と闘いながらやっているんだろうけど、全然、PTSDなんかにならないものね。あれは好きでやっているんだから。スカイダイビングをやっている人もそうでしょう。あれは全然、無力感じゃないわ。自分で何とかうまくやってやろうということでやっているわけで、好きでやっているんです。好きでやっていてPTSDというのはない。PTSDが起こってくるのは全部、自分は全然する気もないのにそういう状況にさらされて、「あ~あ」というようなものです。「助けて」というようなものですね。そこを、「助けて」じゃなくて、「自分で自分を助けるぞ」というようなスタンスが生まれるということが精神療法なんです。


だから、精神療法でいろいろ難しいことをいうのは全部、根本の外なんです。ちょっとマニアの世界。やはり精神療法というものも本当に治療である限りは、犬や猫にもできる部分が本質。人間にしかできないのは趣味の世界でしょう。だけど、人間はうまいことをいってやらないことには、犬猫みたいにして「やってごらん」とかいっても、何とかかんとかいうて、やらないから、それにはやはりことばが必要だけれども。バッチのレメディをつかって次第に、自分なりに状況をコントロールしていこうとする。コントロールできるんじゃなくて、コントロールしていこうとするスタンスがついた瞬間にPTSDとしての治療は終わります。完成します。すると、薬はいらなくなります。それがPTSDの治療で、今のところ9割の人は成功していますので、僕はPTSDの治療についてはこれで完成だと思っています。



[追記]  神田橋   その後の経過でオーラップ(1mg)の1/4~1錠寝る前という処方はフラッシュバックの抑制に有効です。ことに知的障害のある人のフラッシュバックに有効です。また最近の経験ではエビリファイ(3mg)1~2錠の日中投与はフラッシュバックにもまた情動の不安定にも有効で使いやすいようです。漢方・オーラップ・エビリファイの使い分けや併用については現在模索中で結論が出ていません。



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長い間お読みいただきありがとうございます。m(u_u)m

これで一連の「神田橋先生の講演録」は終わりです。

過去の記事も参考に役立てていただければ幸いです。



[転載者追記]

素敵なオシゴトに携われたことに感謝を。

アメブロのご卒業にあたり、転載を快諾して下さったYOKOさんに感謝を。

神田橋先生に転載の承諾を得て下さった謎氏に感謝を。

そして何より、神田橋先生の業績に敬意を。

ここを訪れた方々のご参考になれば幸いです。

2008/11/25 捨てネコ












◎ この一連の記事はすべて神田橋先生の了承を得て載せています。