Catch at straws

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宮崎駿監督の引退作として話題になったこの作品。珍しく新作レンタルをして観てみました。

子供の頃から飛行機の設計を目指していた少年が
、日本が世界に誇る戦闘機・零戦を作るまでのお話です。零戦を作った実在の人物、堀越二郎の実話に堀辰雄という詩人のエピソードを乗せて作ったそうです。


まず前提知識として。
当時、空中戦で日本の零戦に敵う戦闘機は無く、アメリカ軍から悪魔の戦闘機と恐れられた、日本国産の最新戦闘機だったらしいです。


当時の日本はまだ、諸外国に比べずっと貧しく、技術も遅れていた為、飛行機を作っても国産のエンジンは馬力が少なく、すぐ壊れてしまうような状況でした。

第二次世界大戦に突入していく世界。各国が飛行技術を競い合う中、独自の理論で研究を重ねる二郎は、研究が行き詰まって落ち込んでいた時にある女性と出会い、恋に落ちる。しかし彼女は…。


私が感じたのは、とにかくやりたいことに全力でぶち当たる意志の強い男の生き様でした。
『どうせ○○だから』という事が全くない。
必ず出来る。うまくいく。仕事にも、好きな女性にも全力を尽くす。
そんな静かに信念を貫き通す男の姿が宮崎駿監督の理想の男性像だったのかなと思います。

二郎は子供の頃からイタリアのカプロー二という飛行機設計士を尊敬していました。激動の時代、すぐに彼も時代遅れになるのですが、恐らく、彼の設計ではなく、彼の思想、彼が目指していた先を感じていたのではないでしょうか?
他のどんな最新飛行機を見ても、目指す飛行機の形はブレず、その集大成として零戦を作り上げていきます。

開発に成功し、たくさんの飛行機を戦場に送り出したが、帰ってきたパイロットは一人もいない…。しかし彼は後悔しない。
全てを覚悟の上で突き進んできたのでしょう。

劇中、『設計士として輝けるのはせいぜい10年。君はその10年をいかに過ごすか?』という台詞が出てきます。
宮崎駿監督もクリエーターとして、同じ思いがあったのでしょうか。そしてこれが観客へのメッセージでもあると思います。題名を含め、その辺りがちょっとクドく、説教臭さは否めませんが、そこは監督の込めた想いが強い作品だという事で、ご愛嬌。

菜穂子さんの健気さにも胸を打たれましたが、監督自身がおっしゃっていた様に、この話は監督の妄想が元であったため、あまりにも男目線の男都合の女性像だったかなと。その辺りも監督の想いが強すぎた部分かなと感じました。

そんな気になる部分は若干あったものの、素晴らしい作品でした。
引退作品が最高傑作だったのかどうかの評価は置いといて、ジブリ作品を観て育った一少年として、大満足の引退作でした。

エンディングのユーミンの『ひこうき雲』も良かった。『空に~憧れて~♪』
昔、ラピュタやナウシカ、紅の豚の世界に入り込んだ少年時代を思い出させる、余韻に浸れるイイ歌でした。
空に憧れて、日本の飛行技術に翼を与えた堀越二郎と、日本中の少年に翼を与えた宮崎駿…うまい事言った?(笑)。自身の生き様、姿勢を重ねたのだろうなと、ファンとしてはそっちに感じ入る部分が多かったです。

後半が子供に邪魔されて集中出来なかったので、また改めてゆっくり観たいと思います。