街道散策ーー桃園県「大渓」 | 台湾観光のブログ

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桃園県「大渓」
茶の香漂う歴史の町


文/朱佳雯 写真/范揚敏

大渓は、かつて「大嵙崁」と呼ばれていたが、1920年「大渓」と改名された。桃園で最も早く発展した地域で、大漢渓から淡水河を経由する中国大陸との貿易が栄え、多くの商店と街道が誕生した。当地の建物はバロック様式と福建の風格が見事に融合して優美。近くの慈湖は、蒋介石元総統が眠る里とされ、その霊廟を衛兵がいまも守っている。このほか大渓には日本時代に創業したという大渓茶場跡があり、工場はインダストリアルな現代風に改造され、レトロモダンな空間でお茶が味わえる。大渓はゆっくりとそぞろ歩きをしたい文化の町だ。

Access:台湾鉄道桃園駅で下車、桃園バスターミナルから台湾好行バス利用。
慈湖線または小烏来線(休日のみ運行)で大渓老街・大渓陵寝・大渓老茶廠で下車。
台湾好行バス慈湖線/小烏来線:www.taoyuantrip.com.tw


大渓老街 



 淡水との水運のおかげで、大漢渓畔に位置する大渓(ダーシー)も本島北部を代表する物資の集散地として発展し、清代から日本時代にかけて繁栄を極めた。当地には樟脳・製茶・炭鉱産業が繁栄し、労働者や運送業者が集まり、外国商社が林立するようになった。現在の地名で言えば、和平・中央・中山といった街路がその中心地だったという。






 1919(大正8年)に、市街地の改革が断行され、和平路と中山路の拡張工事が進められた。それにあわせて、各商店や外国商社は競うように豪奢な社屋を建て替えたのである。往時の流行にあわせ、バロック様式と福建伝統の細工を組み合わせ、ギリシャの丘に中国の魚やコウモリなどが配置された見事な装飾が町屋の正面を飾った。しかし1930年代に入ると、大漢渓の川底に土砂がたまるようになり、交通路としての機能が失われて徐々に没落した。現在は往時の面影が保存された「老街」と呼ばれる商店街の散策が人気を集めている。


老街の美食
 老街周辺には当地の人々に人気の台湾風軽食が満載。開店数十年の老阿伯現滷豆干は、押し豆腐と半熟卵がお勧めで、味がしっかりしみこんでいる。老街には黄大目・黄日香などの豆干店があり、風味も豊富な豆干はお土産にぴったりだ。近くには頼媽媽豆花があり、アイスとホット、さらに黒豆の豆花も選択できるほか、小豆・ピーナッツ・タロイモなどのトッピングも豊富。当地名物・月光餅の発祥は日本時代にさかのぼる。中秋節に欠かせない贈答品で、サツマイモとタロイモの二種の餡があり、その形と焦げ目がついた表面が月に似ていることからこのように名づけられた。

老阿伯現滷豆干
Add:中正路37号
Opn:8:00-20:00、不定休


黄大目豆干店
Add:和平路37号

頼媽媽豆花
Add:中正路38号
Open:10:00-20:00

陳媽媽月光餅
Add:和平路87号
Open:9:00-18:00


倉庫咖啡


 倉庫咖啡は静かな中山路沿いにある。ここは店が少なく、街並みや大渓ならではの文化の香り豊かな風情をゆっくり楽しみたい。カフェの入口を開けると、仕切りのない広々とした空間から、中庭まで見渡せる。木箱で作られたオープン式カウンターに、本日のケーキメニューが置かれている。ケーキは毎日種類が変わるのがお楽しみ。クールなおかみさんはやって来る客をただ黙って迎えてくれるので、自在な雰囲気が感じられる。午後の陽光が大きなガラス窓を通して射し込み、外では猫が入りたそうに見ている。おかみがドアを開けてやると、カウンターの傍にもぐり込んで餌を食べる。倉庫咖啡では、おいしいドリンクとデザートをいただきながら、音楽や猫の鳴き声をバックに、静かに流れる時間を楽しむことができる。




Add:中山路43号 
Tel:+886-3-3874385
Open:火曜-金曜11:00-18:00
土曜・日曜9:30-18:00
月曜定休
予約:不可/カード:不可/サービス料:なし/ミニマムチャージ:一人につきドリンク一杯 

慈湖 


 以前、慈湖(ツーフー)は埤尾と呼ばれていた。蒋介石元総統が故郷、中国浙江省寧波府の景色と似ていると当地を愛し、1959年に別荘を建て、その母を偲んで慈湖と地名を改称した。1975年に亡くなると蒋介石総統の遺体は当地に安置された。霊廟は四合院という格式ある建物で、参拝が許されている。毎日九時から一時間ごとに衛兵の交代式があり、大勢の人たちが集まってそれを見守る。駐車場横のビジターセンター内には総統夫妻の生前の写真が展示され、記念品が販売されている。一方の慈湖記念彫塑公園は、台湾各地から集められた蒋介石をはじめ、国父孫文や蒋経国元総統の彫像が多数展示されている。なかでも高雄からやってきた蒋介石の坐像がもっとも巨大。百吉林蔭歩道と後慈湖を歩いて、大渓の自然の風景を満喫したい。




慈湖陵寝
Add:復興路一段1097号
Tel: +886-3-3884437(ビジターセンター)
Open:8:00-17:00
Access: 台湾好行バス慈湖線/小烏来線大渓陵寝前で下車 
備考:後慈湖は要事前申請


大渓老茶廠

 大渓老茶廠は、1899年に日本三井合名会社が台湾で開いた茶園。1926年に大渓に新型機械の製茶工場を建てて、「角板山工廠」と命名した。これが大渓老茶廠の前身である。当時茶葉が盛んに輸出され、茶葉は「黒い金」と呼ばれた。当時の生産量は多く、24時間休まずに稼働した時期もあったという。残念ながら1956年の大火事で、茶工場は大半が焼失した。その後軍の支援を得て再建され、茶工場二階に当時再構築された屋根の梁が残っている。



 2010年から、大渓老茶廠は全面的に修繕が行われ、当時のイギリス式の高い天井、日本式の通気構造と台湾式モルタル洗い出しの床など歴史的軌跡を残しつつ、ブルーグレーの窓の格子とセメントを基調とするインダストリアルなスタイルにリニューアルされた。現在茶の生産量は以前ほど多くないが、製茶は継続されており、日本時代に導入して以来70年というジャクソン揉捻機が今も稼働している。訪問前日に秋の製茶が完了したばかりで、工場内に茶の香がほんのり漂っていた。


 茶工場一の入口は茶の販売店で、大渓産の茶と台湾農林公司の茶、そして美しい茶器を販売している。かつての倉庫を改装してできた文物展示エリアでは、文物と写真から、当時の製茶産業の繁盛ぶりがうかがえる。普洱茶で壁を飾った茶書屋では、ポット入りお茶と珍しい茶料理があり、屋外の静心池を眺めながらじっくりお茶を楽しめる。二階は茶工場の当時のままの様子が残され、天井や換気扇などの構造から、当時の設計の工夫がわかる。




Add:復興路二段732巷80号
Tel:+886-3-3825089
Open:10:00-17:30
Web:www.daxitea.com
Access:台湾好行バス小烏来線(休日のみ運行)大渓老茶廠で下車