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『日本の問題①』三橋貴明 AJER2014.5.20(3)
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三橋貴明講演会・サイン会 19時より八重洲ブックセンターにて
http://www.yaesu-book.co.jp/events/talk/3927/
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竹中平蔵氏は、先日のテレビ愛知「激論コロシアム」の討論で、正規社員について「既得権益である」と明言しました。パソナ・グループの取締役会長にして、産業競争力会議の「民間議員」という名の民間人である竹中平蔵氏が、「雇用の安定」が忌むべきものと認識していることが分かります。
現在、様々な「労働規制の緩和」が推進されていますが、その一つが「正規社員の残業代廃止」つまりは正規社員という「岩盤規制」の破壊になります。何しろ、正規社員に残業代を払っていた日には、企業の人件費が上昇し、
「グローバル市場における企業の国際競争力(という名の価格競争力)が低下するではないか!」
という話になってしまうわけです。日本国民の実質賃金を引き下げ、貧困化させ、企業のグローバル市場における価格競争力を高めるためには、とにかく何でもやってくるのが「彼ら」です。
『高度専門職:労働時間規制なし…厚労省、容認に転換
http://mainichi.jp/select/news/20140528k0000m010133000c.html
厚生労働省は27日、「高度な専門職」で年収が数千万円以上の人を労働時間規制の対象外とし、仕事の「成果」だけに応じて賃金を払う新制度を導入する方針を固めた。2007年、第1次安倍政権が導入を目指しながら「残業代ゼロ」法案と批判され、断念した制度と類似の仕組みだ。同省は労働時間に関係なく成果のみで賃金が決まる対象を管理職のほかに広げることには慎重だったが、政府の産業競争力会議が導入を求めているのを受け、方針を転じた。田村憲久厚労相が28日の同会議で表明する。(後略)』
毎日新聞の紙面版には、元々の産業競争力会議の「労働規制緩和」案が載っているのですが、さすがに仰天してしまいました。何しろ、年収要件が「なし」だったのです。
【産業競争力会議の案】
・年収要件:なし
・対象職種:(一定の責任ある業務、職責を持つリーダー)経営企画・全社事業計画策定リーダー、海外プロジェクトリーダー、新商品企画・開発、ブランド戦略担当リーダー、IT・金融ビジネス関連コンサルタント、資産運用担当者、経済アナリスト
・条件:労使の合意、本人の同意
それに対し、厚生労働省の対案。
【厚生労働省の案】
・年収要件:あり(数千万円以上)
・対象職種:世界レベルの高度専門職、為替ディーラー、資産運用担当者、経済アナリスト
・条件:未定
厚生労働省の案の場合、日本の正規社員のほとんどが無関係ということになります。とはいえ、そうであったとしても、
「ああ、自分は関係ないんだ。良かった・・・・」
などと安心することはやめて欲しいのです。何しろ、我が国の派遣労働の解禁は、
「中曽根政権時代(86年)に解禁され、橋本政権期(96年)に業務の範囲が一気に拡大し、小泉政権期についに「製造業」でも認められる」
というプロセスを経て拡大していきました。
我が国の派遣解禁、拡大の歴史を振り返ってみましょう。
1986年:専門的な13業種のみの派遣業認可(ポジティブ・リスト)。後、26業務に拡大
1999年:派遣業についてネガティブリスト方式に(禁止業種以外は解禁)変更
2004年:製造業の派遣について解禁
2007年:製造業の派遣の期間延長(1年から3年に)
要するに、最初は「門戸が狭い」ポジティブリスト方式で「ひと穴」をあけられ、その後、次第に対象が拡大し、ネガティブリスト方式に変更、ネガティブリストの縮小という形で「規制緩和」の範囲が広がっていったのです。同じことを、「労働時間規制緩和」についてもやられはしないか、非常に危惧しています。と言いますか、「彼ら」はやろうとしてくるでしょう。
わたくしは、「雇用の安定」こそが、かつての日本の企業の「強み」だったと確信しているのです。特定の会社に勤め、安定的な雇用の下でロイヤリティを高めた「人材」が、自らの中に様々な技能やノウハウ、技術を蓄積し、同じく雇用が安定した「同僚」とチームを構成し、世界に立ち向かう。これこそが、グローバル市場における「本来の日本の価値パターン」であると信じているわけでございます。
とはいえ、上記の「考え方」では、
「グローバル市場における企業の価格競争力が高まらないじゃないか!」
というわけで、我が国では様々な規制の緩和が推進されていきました。結果、どうなりました?
国民の貧困化が続き、さらに企業は「本来の強み」を失ってはいませんか。確かに、短期的な「利益」は増えるかも知れませんが、中長期的に競争力を喪失していませんか、という問題提起を今こそしたいわけでございます。
特に、正規雇用の皆さん。皆さんは「既得権益」だそうです。何しろ、パソナ・グループの取締役会長自ら明言しました。
ならば、どうするべきなのか。について、是非とも一度、考えてみて欲しいのです。
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◇日本経済復活の会
積極財政による日本経済復活を目指して活動をしているボランティアグループです。
Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」
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