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『ヘリコプターマネー①』三橋貴明 AJER2016.8.23

https://youtu.be/1UzK-Gn-vpU
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 夕刊フジで短期集中連載「断末魔の中韓経済」を連載中です!

 明日は6時から文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。
http://www.joqr.co.jp/tera/


 またもや、台風10号が日本列島に接近中です。本日、関東もしくは東北に上陸する可能性があります。十分に、お気を付け下さい。


 さて、一度東シナ海へと抜け、その後、ほとんどUターンする形で、再び本州に接近してきた台風10号は「史上最も迷走した台風」と言えそうですが、安倍政権の迷走ぶりも相当なものです。

 安倍政権は、補正予算審議を考えると明らかに審議時間不足なる状況で、強引に「TPP(環太平洋経済連携協定)」についても審議しようと図っています。挙句の果てに、政府・与党内には「与党だけで強行採決もやむを得ない」との声もあるとのことです(報道では)。


 何故に、この状況でTPPを我が国が率先して批准しなければならないのでしょうか。意味が分かりません。


「日本がアメリカの属国だから」
 と、言われればそれまでですが、当のアメリカですら、TPPが批准されない可能性が出てきているのです。


TPP推進派はもうオバマだけ
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/08/post-5711.php
 こんなはずではなかった。1年前には、TPP(環太平洋経済連携協定)の批准は簡単と思われていた。協定が発効すれば、世界経済の40%を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。バラク・オバマ米大統領はこれを自らの経済政策のレガシー(遺産)と見なし、アジア重視の戦略を支える柱と位置付けている。
 長年の盟友ナンシー・ペロシ元下院議長を含め、民主党内には反対派が多いが、オバマは1年前に議会共和党の指導部と組んで、大統領に強い交渉権限を与える貿易促進権限法を成立させた。10月には署名式も済み、あとは自由貿易支持の共和党が多数を占める議会に批准してもらうだけ......のはずだった。
 それがどうだ。今は共和党の大統領候補ドナルド・トランプも民主党候補のヒラリー・クリントンも、TPPに反対している。両者ともTPPを悪者に仕立て上げ、いわゆるリーマン・ショック後の景気停滞で職を失い、その後の回復からも取り残
されている中産階級や労働者階級からの支持を集めようとしている。
 トランプは自由貿易を信奉する党主流派を切り捨て、これまで米政府が署名してきた他の貿易協定にまで矛先を向けている。国務長官時代にTPPを支持してきたクリントンは、予備選でバーニー・サンダース上院議員に対抗するため、やむなく左旋回を強いられた。
 TPPに好意的だった議会の支持も減っている。共和党重鎮のミッチ・マコネル上院院内総務(タバコ葉の産地であるケンタッキー州選出)は、協定の最終文書にたばこ規制が盛り込まれたことで支持を取り下げた。ポール・ライアン下院議長もオバマに、法案を議会に提出しないよう求めている。
 最後の望みは11月の大統領選後に始まるレームダック(死に体)議会での短期決戦だが、これも民主党のハリー・リード上院院内総務から、勝ち目は薄いと警告されている。
 オバマも、自身の選挙戦ではNAFTA(北米自由貿易協定)などに反対していたが、大統領就任後は一貫して自由貿易を推進してきた。しかし今は保護主義と孤立主義の海で孤独に漂流している。(後略)』


 トランプとヒラリーのTPPに対する反対姿勢は、若干、違いがあります。トランプはTPPという自由貿易協定(実際には「自由貿易」でも何でもないですが)そのものに反対で、ヒラリーはTPPの「中身」に反対しているわけです。


 TPPのルールとして、アメリカが批准しない場合は「TPPそのものが消滅」という話になります。すなわち、アメリカを除く他の国々だけで発効することはできません。

 アメリカの混乱を受け、
「ほら見ろ! TPPは結局、批准されないじゃないか」
「アメリカがTPPを批准し無さそうだから、大丈夫」
 的なよくわからない主張をする人がいるのですが、そういう話ではありません。まずは、計30もの分野があるTPPについて、碌に中身を審議せずに、しかも(断言しますが)国会議員のほとんどがTPPの全文を理解もしていなければ、そもそも読んでもいないような状況で、数十時間の審議を経て批准しようとしている日本の政治が問題という話です。


 しかも、TPPと日本を亡国に追いやるグローバリズムの罠の一つに過ぎません


 TPPとは、日本国民あるいはアメリカ国民(及びその他の国民)のためではなく、【上位1%のため】の協定に過ぎないのです。この事の本質を理解しなければ、奇跡的にTPPが無効になったとしても、次なる罠に振り回されることになるでしょう

 すでに、アメリカではこの種の議論が行われています。



TPPは上位1%のためにある 以前は貿易自由化で大きくなったパイが賃金上昇につながったが、今は上位1%を富ませるだけ ロバート・ライシュ(元米労働長官)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/tpp-8_1.php

 かつては私も自由貿易協定はいいものだと思っていた。だがそれは、アメリカの経済成長の恩恵をごく少数の富裕層が独占し、その他すべてのアメリカ人の賃金が伸び悩むようになる前のことだ。
 1960~1970年代に合意した貿易協定は、世界のアメリカ製品への需要を飛躍的に増やし、アメリカ国内の労働者に支払われる賃金も上がった。
 しかし今の貿易協定は、アメリカ製品への需要を高めることは同じでも、企業や金融機関の利益を膨らませるばかりで国内労働者の賃金は上がらず、低いままだ。
 実のところ、近年の貿易協定は、輸出入という意味での貿易というよりグローバルな投資が主たる対象になっている。(後略)』


 まさに、TPPは「グローバルな投資家」(※企業含む)をさらに富ませるための協定に過ぎません。もちろん、農業や工業製品の関税自主権がなくなるのも問題ですが、より深刻なのは「投資の自由化」になります。

 後略部で、ライシュ元労働長官が書いていますが、


『TPPによって、大企業はさらに手厚い知的所有権の保護を受けるることができるし、企業活動の障壁となるような法制度があれば、それが医療や安全、環境に関わることであっても、異議を申し立てることができる(ISD条項)。だが大多数のアメリカ人にとってここから得るものはほとんどない。』


 なのです。大多数のアメリカ人、更には大多数の日本人もTPPから得るものはほとんどありません。

 特に、個人的に心配なのは、やはり「発送電分離」「全農の株式会社化」といった国内の「改革」と、TPPの「投資の自由化」が並行的に進んでいる点です。全農が株式会社化されたのち、TPPが発効になっていたとして、我が国はカーギルによる全農買収を防ぐ手はあるのでしょうか。


 基本的には、ありません。TPPには投資の「内国民待遇」があります。


第九章 投資 第九・四条 内国民待遇
1.各締約国は、自国の領域内で行われる投資財産の設立、取得、拡張、経営、管理、運営及び売却その他の処分に関し、他の締約国の投資家に対し、同様の状況において自国の投資家に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。』
 
 もちろん、TPPが批准されなかったとしても、上記に類する協定をアメリカ(等)と締結してしまった場合、結局、カーギルによる全農買収を防止することはできません。農業関係でいえば、日本は投資について「種苗法」関連については投資の内国民待遇(及び最恵国待遇)を留保している、つまりはネガティブリストに入れていますが、農協法はありません。


 この手の議論を経ることで、TPPあるいは今後のグローバリズムに基づく構造改革が「誰の利益になるのか」が見えてきます。TPPの批准しないことはもちろん、「その背後にある思想」を理解することこそが、現在の日本国民に求められているのです。
  

「日本国のTPP批准に反対する!」に、ご賛同下さる方は、↓このリンクをクリックを! 

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