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『世界の歴史はイギリスから動く①』三橋貴明 AJER2016.10.25
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一般参加可能な講演会のお知らせ。
11月18日(金) 平成28年度 東ト協ロジ研第2回オープンセミナー
限定二十五名様のみ、弊社からお申し込み可能です。
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企業は利益を稼ぐために存在します。政府の目的は「経世済民」ですが、企業は利益でいいのです。
もちろん、利益を稼ぐためには何をやってもいい、という話ではありません。さらに、企業は稼いだ利益(=所得)を、「従業員」「国家・地域社会」「未来」「株主」などに分配することが求められます。
従業員への分配とは、もちろん給与の支払い。
国家・地域社会への分配は、税金の支払い。
未来への分配とは、投資。
株主への分配が、配当金や自社株買いになります。
現在の日本では、労働分配率が下がり、設備投資も低迷。さらに政府が法人税の無条件減税を推進しているため、株主への分配が過度に大きくなりすぎています。
もっとも、株主に偏った利益分配が行われたとしても、それでも儲かっている企業には利益剰余金が残るのです。すなわち、内部留保です。
『内部留保 増え続け377兆円 賃上げ、投資 迫る政府
http://mainichi.jp/articles/20161106/k00/00e/020/165000c
企業が蓄えたもうけを示す「内部留保」が増え続けている。財務省の法人企業統計によると、2015年度は377兆8689億円と前年度から約23兆円増加し、4年連続で過去最高を更新した。アベノミクス効果をアピールしたい政府は、来年の春闘もにらんで賃上げなどに回すよう迫っているが、企業側は慎重だ。
内部留保とは次の通りだ。企業は毎年の決算で、製品やサービスの売上高から、人件費や原材料費、借金の利払い費、法人税などを差し引く。残ったお金が1年間のもうけとなる「最終(当期)利益」だ。ここから株主への配当などを支払い、最後に残ったお金が内部留保として毎年積み上げられる。正式な会計用語ではないが、企業の財産や借金の内容を示す貸借対照表(バランスシート)で「利益剰余金」と記載される金額を指す場合が多い。
15年度の法人企業統計は約276万社(金融・保険業を除く)の利益剰余金を算出した。内訳は製造業が131兆8841億円、非製造業が245兆9848億円。企業規模を示す資本金別では、10億円以上の約5000社で約182兆円とほぼ半分を占める。
◆景気停滞へのいら立ち背景
積み上がる内部留保に政府は不満を募らせている。石原伸晃経済再生担当相は「経済を成長軌道に乗せるには、内部留保を設備投資や賃金の増加につなげることが重要だが、十分そうなっていない」と主張する。(中略)』
フロー面の内部留保は、利益剰余金で構わないと思うのですが、ストック面での内部留保には色々と定義があります。本エントリーでは、より厳密に「非金融法人企業の現金・預金」で見てみたいと思います。
【図 非金融法人企業の現金・預金(億円)】
出典:日本銀行「資金循環統計」
図の通り、実は日本企業は「第二次安倍政権発足以降」に、むしろ現金預金を積み増していっているのです。野田政権期(2012年)に200兆円前後だった企業の現金預金は、2016年6月末時点で253兆円に達しています。
4年間で50兆円超の現金預金を積み増したのが、日本企業です。もし、日本企業が野田政権期並みで内部留保を抑え、稼いだお金を「未来への投資」に回してくれていれば、日本のGDP成長率を毎年、少なくとも2~3%は押し上げた計算になります。あるいは、従業員への給与に分配してくれれば、現在の消費低迷はある程度、食い止められたでしょう。
とはいえ、日本企業は投資を増やさず、人件費も抑制し、内部留保として現預金を積み上げ続けています。これに対し、「政府が不満を募らせる」のはナンセンス極まりないでしょう。
なぜ、日本企業が投資を増やさないのか。人件費に回さないのか。
デフレが継続し、投資しても儲からないためです。
逆に、企業経営者が内部留保を取り崩し、投資拡大や決断するのはどんなときでしょうか。もちろん、投資利益が見込め、儲かるときになります。
儲からないにも関わらず、果敢な投資をする経営者は、むしろ経営者失格です。
あるいは、給与(きまって支給する給与)の引き上げを決断するには、安定的に需要拡大が見込めなければなりません。
というわけで、日本政府がやるべきことは、財政支出拡大で需要を創出し、企業が投資をすれば儲かる環境を構築することなのです。さらには、給与を安心して増やせる状況を作ることなのです。
ところが、第二次安倍政権発足以降の一般政府の資金不足額(=財政赤字拡大)を見ると、13年が約32兆円、14年が約25兆円、15年が約17兆円と、毎年、減り続けました。すなわち、政府が支出を切り詰め、あるいは国民から増税をすることで、政府の負債増加ペースを「遅くした」のです。完璧な緊縮財政です。
安倍政権がせめて民主党政権期並みの資金不足(約40兆円)を維持していれば、例えば15年だけで年間に23兆円もの需要拡大があったことになります。断言しますが、我が国はとっくにデフレからの脱却を果たしていただでしょう。
興味深いことに、政府の資金不足(財政赤字)の削減と、企業の内部留保積み増しは歩調をそろえています。
政府が財政を拡大すると、企業の内部留保が減る。企業が財政を圧縮すると、企業の内部留保が増える。
改めて考えてみると当然で、日本はいまだにデフレから脱却できていません。その状況で政府が緊縮財政を強行すれば、露骨な需要収縮になるため、企業の投資マインドは低下し、「儲かっても投資をしない、人件費も増やさない」ために、内部留保が増えるわけです。
現在の日本企業の内部留保拡大は、財政拡大という正しい政策に背を向けた、日本政府の怠慢がもたらしたものなのです。
日本政府は企業に「投資をしてくれ」「給料を上げてくれ」などと意味不明な要求をするのではなく、自らの積極財政で、企業が投資をしたくなる環境を構築しなければならないのです。それも、早急に。
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