寝る子は育つ・不眠は美容の敵・睡眠は百薬の長・風邪は寝て治す・一晩寝て頭を冷やせ
などなど、昔から睡眠にまつわる生活の知恵が語られています。
大昔から人は、昼夜という自然のリズムの中で生きてきました。
しかし、現代の私たちの生活の便利さが夜型社会を生み、高齢者のみならず若年層の睡眠不足が今深刻な問題です。
睡眠不足は、脳が休息できずにイライラする・辛抱できない・キレる・うつ病・家庭内暴力の
素因となります。又、肥満の原因につながります。
では、睡眠とはどのようなものでしょうか。
睡眠の原因は脳にあります。
ここでの脳とは大脳のことです。そして睡眠を必要としているのが大脳です。
胎児の中に大脳が存在する前は、意識は「無」の状態で、睡眠はありません。
大脳が出来て、まず現れるのが「レム睡眠」です。
大脳に芽生えたレム睡眠が大脳を育てることにより、大脳を覚醒させます。
レム睡眠の多い新生児や乳児の時期が脳の構築にとって特に大切であり、よく眠らせることが知能の発達に貢献することなのです。
生まれたばかりの人の脳は、成熟するまで10数年かかります。
「レム睡眠」は脳を創り育てるのです。さらにほぼ完成した脳を守り修復するには、「ノンレム睡眠」が重要な役割になります。
脳はエネルギーを大量に消費するため、連続的に使用すると機能低下を起こします。脳は非常に疲れやすく、もろい臓器ですので傷むわけです。しかも脳は全身の司令塔ですから、傷んだ脳をそのままにしていると正常な神経活動や身体動作も出来なくなり、生存自体危うくさせます。
疲れた脳を元通り元気に活動させるには、何より睡眠が大切です。
筋肉疲労は体が安静を保っていれば、眠らなくても殆どの身体機能が回復できます。
脳は睡眠がなければ、その働きは修復・回復が出来ません。
睡眠には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。
レム睡眠とノンレム睡眠を合わせた量が総睡眠量で、20%がレム睡眠80%がノンレム睡眠です。総睡眠量に占めるレム睡眠の割合は、発育と共に劇的に減っていきます。
レム睡眠の減少は、脳があるところまで成熟したからと考えられています。
「レム睡眠」は急速眼球運動(閉じた瞼の下で眼球がキョロキョロ動いていることを指します)を伴う睡眠で大脳を活性化し、ぐったりとした眠りです。
浅い眠りで体はぐったりしていても、意識はかなり高いレベルの覚醒に近い状態になっています。夢を見ていることが多い眠りです。しかも骨格筋はすっかり緩んでしまって体が動かせない状態です。金縛りや手足がぴくぴくしたり、寝言を発したり、寝相を変えたりすることがあります。
悪夢を見ることもあります。又、日中の情報を整理し記憶に留める作業を行い、記憶力の向上・運動神経の向上を担います。
レム睡眠がなければ、人は目覚めることはありません。
「ノンレム睡眠」はレム睡眠でない眠り、いわゆる安らかな眠りです。
脳を鎮静化して、ぐっすりとした眠りです。筋肉がすっかり、緩むことはありません。
ノンレム睡眠のほうが進化したハイテクな眠りです。ノンレム睡眠中は脳下垂体から成長ホルモンが分泌されるので、新陳代謝・免疫活動・体の成長などの促進が見られます。
熟睡すれば風邪が治ったり、成長する子供にノンレム睡眠が多い理由です。
寝入りばなの3時間は、深いノンレム睡眠で、脳や体の修復をし、明け方は覚醒に近づくためレム睡眠が増え夢を見ることが多いです。
睡眠の質は、男性がはるかに悪く、女性の方が、熟睡量が多い。老化も男性より遅いのですが、更年期以降不眠になりがちです。
入眠前のアルコール・カフェイン・激しいスポーツ・高温の湯の入浴は控え・昼寝は20分位にすると良いでしょう。
6時間未満の睡眠をショートスリーパーといい、ナポレオン・エジソン・ダビンチなどが有名です。アインシュタインは9時間以上睡眠のロングスリーパーです。
短睡眠と長睡眠との決定的な差は、睡眠の質の違いです。
短睡眠者は深いノンレム睡眠の割合が多く、長睡眠者はレム睡眠中途覚醒の割合が多く、質の悪い眠りを継続させていることになります。
理想の睡眠量は、1日7時間位ですが健康維持にとって毎日規則的な寝起きを心がけ朝の太陽を一杯浴びることです。
レム・ノンレム睡眠のバランスの取れたリズミカルな睡眠こそ、脳が活性化する唯一の手段です。
私達も睡眠の大切さを理解して、良質の睡眠をとり、脳を元気にして、ストレスのない健康な毎日を過ごしたいものです。
参考文献
「眠りを科学する」 井上昌次郎著(東京医科歯科大学名誉教授、医学博士)
「睡眠と脳の科学」 古賀良彦著(杏林大学医学部教授、医学博士)