田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba -5ページ目

安保法案の成立

安保法案が成立した。ほんとによかったと胸を撫で下ろしている。もしこれが成立しなかったらどうなるのか。我が国は国を守るという国民の意志が弱いと判断され、中国や韓国の日本侮蔑運動が一層加速することになったであろう。日本人に対する嫌がらせの類が頻繁に起きることになる。外交交渉で日本の言い分に耳を傾けてくれる国もない。そういう意味で今回の安保法案の成立は、日本が変わり始めたということを世界に示す大きな一歩であると判断している。中韓などの我が国に対する対応も少しは抑制が効いてくるかもしれない。困難な中でも初心を貫いて法案を成立させた安倍総理の頑張りに拍手を送りたい。安倍総理は歴史に残ることをやってくれたと思う。一つだけ残念なことは尖閣を守る領域警備の法律が今回は見送られたということである。


さて今の世界で自分の国を守る法律が整備されていない国は日本だけである。今回の安保法案ですべてが解決されたわけではないが、自衛隊も諸外国の軍同様、国際法で動くという方向に一歩近づくことになったのである。世界の軍は国際法で動く。国際法とは何か。明文化された条約などと慣習法の集合体である。軍の行動に関しては禁止事項が決まっている。世界の軍は禁止規定(ネガティブリスト)で動く。禁止事項以外は何でも出来る。これに対し日本の自衛隊だけが国際法で動くことが出来ない。自衛隊が行動するためには国内法上根拠法令を必要とする。自衛隊は決められたことしか出来ない。自衛隊は根拠規定(ポジティブリスト)で動く。これは日本政府が自衛隊の行動を制約しているからである。


自衛隊が行動するためには、イラク特措法やテロ対策特措法が必要であった。イラク特措法がなければ陸自、空自をイラクなどに派遣することは出来ない。テロ対策特措法がなければ、海上自衛隊をインド洋に派遣して外国艦艇に給油することは出来ない。しかしこのような法律を必要とするのは世界で日本だけなのである。これまでは何か事態が生じてから法律が作られるので適時に事態に対処することが出来なかった。しかも派遣された自衛隊は法律で決められたこと以外は実施できない。インド洋の海自艦艇は、目の前で海賊に襲われている商船を見てもこれを助けることは出来ない。それは違法行為になるのである。他の国の艦艇であれば直ちに救出行動を開始するであろう。


また集団的自衛権もこれまで行使できないとされてきた。一緒に作戦行動をしている友軍に対し、「俺がやられたときは助けてくれ、でもお前がやられたときには俺は助けられないから逃げる」という状況下で自衛隊は派遣されてきたのである。こんな非道徳的な行動をする自衛隊に対し諸外国の軍が信頼を置いてくれるわけがない。自衛官は非常に気後れしながら任務についていたのである。


今回の安保法案でこれらの問題も解決されることになった。何も我が国だけが特別なことをしようとしているわけではない。出来るだけ自衛隊も諸外国の軍と同じように行動できるようにしようとしているだけなのである。これに対し戦争法案だとか言って野党やマスコミが大キャンペーンを張った。多くの国民がこれに騙されて安保法案反対デモを繰り返した。しかし日本国民も戦後の自虐史観から少しずつ解き放たれているようだ。法案成立後の安倍内閣の支持率はさほど下がっていないからだ。


安保法案は戦争法案ではない。

戦争抑止法案なのである。


戦争が出来ないと戦争に巻き込まれる確率は高くなる。軍事力を整えて、来るなら戦うぞと構える国に対し戦争を仕掛ける国は少ない。プロレスラーに飛び掛る馬鹿はいないということである。


自衛官のリスクが高まると民主党が心配してくれた。自衛隊の任務が拡大すれば自衛官のリスクが高まるのは当然のことだ。しかし、自衛官がリスクを引き受けてくれるから、他方では国民のリスクが減少するのである。自衛官という職業はリスクを引き受けることが前提である。自衛官は身の危険を顧みず任務遂行に当たるという宣誓をして仕事についている。しかし駆けつけ警護などの場合、武器が使えるようになるので自衛官のリスクも減少する場合もある。本法案によって一概に自衛官のリスクが高まるとも言えないのだ。


今回民主党の岡田代表が安保法案廃案のためにあらゆる行動を取ると言っていた。この人は今の我が国の安全保障体制についての知識があるのだろうかと思ってしまう。国を守れない現状を放置せよといっているに等しい。全く無責任である。また岡田氏はもともと話せば分かる、話し合いですべてが解決できるという考え方の持ち主だ。しかし国会の中でさえ話し合いで解決できずに委員長席を取り囲んだり、暴力沙汰を引き起こしたり、正にあらゆる行動を取った。岡田氏のように話し合っても分からない人は世界に山ほどいる。中国や韓国を見ていればよく分かるではないか。だからこそ国を守る安保法制が必要なのだ。岡田氏は安保法案に反対することによって、自ら安保法制が必要だという事を証明してくれた。


更に憲法違反という意見も多かった。しかし憲法は法律との整合性以前に国民生活との整合性が問題にされなければいけない。国が外敵の侵略を受けても国民を守れないような状態が放置されていいわけがない。そのとき憲法がそれを妨げるのであれば憲法が速やかに改正されなければならない。しかし我が国の現状で速やかな憲法改正が難しければ、憲法解釈を変更するというのは極めて合理的な考え方だと思う。


「憲法を守って国亡ぶ」では本末転倒である。我が国では憲法学者の多くが憲法解釈に重点を置き、一度確立した憲法解釈を変えてはいけないと言うが、憲法解釈だけではなく現憲法が抱える問題点についても議論してもらいたいものだ。そうすれば憲法解釈は情勢変化に応じて変わるべきものだという考え方も出てくるのではないかと思う。憲法解釈は変えるべきでない、集団的自衛権の行使は憲法改正してから認めるべきだと言っている人の99%は安保法制の成立には反対なのだ。