零崎藍織の人間吟遊 【絆】 | ばいばい

ばいばい

遥か望む彼方の光
君を照らし出さなくていい
狂おしい花びらを舞い散らせて
堕ちる桜を抱いて 眠る

「なあ、ナウいってどういう意味だと思う?
兄貴の雰囲気から言って傑作なもんだと思うんだけど」
 ナウい?どういう意味だろう?
「双識兄さんはどういうシチュエーションで、その言葉を使ったの?」
「今日はナウい朝だ!って…。分かるか?姉ちゃん」
「さっぱりだわ。でも、良い意味なんじゃないかしら」
「傑作だぜ」
 本当に。恐らく、無理やりに若者言葉を使おうとして、情報が古かったのだ。
 アホである。

「あ、そういや客来てたぜ?変な兄ちゃん」

 彼女はリラックスしきった様子で、ソファーで寛いでいた。
「よお、藍織」
「冷華くん、変な兄ちゃん、ですって」
 彼女は満面の笑みを浮かべる。
 月咲冷華は女性でありながら、男性としての自分を持っている。
 ただ、女であることに問題は感じていないため、
 見た目が可笑しなことになっている。

 だぼだぼのパーカーに、ダメージジーンズ。どちらも男性用。
 ただし髪は長く、その黒髪は胸の位置まである。
 綺麗に手入れされた、サラサラストレートヘアは違和感抜群だ。

「俺が男に見えたってか。お前の弟、良いセンスじゃん」
「そういう問題?」

 舞織がおずおずと尋ねる。
「あのう…そちらの…あの…、おにいさん?はどちら様ですか?」
「見て分からないかしら?」
「はい?」
 私は答える。
「双子の姉よ。一卵性双生児の」

「………えええええええええええ」
「………うおあああああああああ」

 舞織と人識が驚倒する。

「姉ちゃん、家族を殺したとか…噂に」
「もっともな疑問だわ」
 
 説明してやる。

 20年とちょっと前、双子の姉妹が生まれました。
 姉妹の母親の姉は子供の出来ない身体でした。
 そこで、双子の姉の方を養子に出すことになりました。

 母親の姉夫婦は不幸な事故で死亡しました。
 すでに男の子の生まれていた姉妹の両親は子供を施設に預けました。

 その子供はある日、施設の職員を殺害し、失踪しました。

「ちゃんちゃん♪」
 声が被った。双子なのでよくある。

「その頃、私は家族を殺してしまって、追われる身だったわ。
そこで、何故か、偶然、再会してね、
私が双識兄さんについて零崎になった後も、付き合いがずっとあったわけなのよ」
「そおそお、ちなみに俺は冷華ちゃんって、双識に言われたのが気に入らなくて、
一応、零崎冷織って名前だけもらって、一匹狼。格好よかろ?一匹狼だぜ」

 冷華はアホなことを言っている。


「零崎を始めねえか――?」


 ぴんぽーん。

「はいですう~」
「私が出るわ」

 扉を開けた瞬間、なだれ込んでくる、敵。
 冷華…いや、冷織と共に片っ端から片づける。

「おいおい、藍織、姉妹愛はいいって…」

 私は【犠牲宣詩】で死者の大群に【絆】と刻んでいった。
 冷華は少し嬉しそうだ。

 その時…。

「あれえ、冷織ちゃん」
 双識兄さんが外からひょこっと顔を出す。
「クソ兄貴いいいいいいい」
 冷華が臨戦態勢になる。

「ちゃん付けにするなって、何回言ったら分かるんだ、双識いいいい」
「いやあ、ごめん。冷織ちゃん」
「あ、死ぬ?それか一生、兄としての呼び名を使わない」

 双識兄さんは真顔になる。

「冷織くん、君は格好良いよ。兄として誇ろう」
「お兄さん」
 幸せそうな兄さんに呆れた風な下の家賊。


 我が家は今日も平和である。




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