喘息 | ばいばい

ばいばい

遥か望む彼方の光
君を照らし出さなくていい
狂おしい花びらを舞い散らせて
堕ちる桜を抱いて 眠る

私は4歳から喘息だったという。
それ以前から呼吸音がおかしかったというが、4歳で酸素室に放り込まれる程の発作を起こして治った、と母親は言った。
ならば何故、私は蚊取り線香でゼーゼー言ったのか、家族で楽しそうにやっていた花火に混ざれず居間の窓に張り付いて見ていたのか。
何故、妹はいつも、大して苦しそうでもないのに病院に連れて行ってもらえるのか。
妹はあんなに高飛車にならざるを得なかったのか。
全て虐待でしか説明がつかない。
妹ですら家のお金を盗んで上級生に友達になってもらっていた。小学一年生が。
私と弟は虐げられ、それの無かった妹に憎悪を向けた。子供同士の付き合いを学べなかった妹は問題行動を起こした。
私と弟は共に自殺企図歴がある。
私が飛び降り自殺を図った時の弟の、
どうしてこうするしかないの?
という、言葉が突き刺さっている。弟は確実に覚えている。何かを。
私は実家を逃げ出せた。弟は大学生だから逃げやすい立場にいる筈。妹は母親に哀れみを抱かず家を飛び出して欲しい。
娘に対して性虐待を行い、レズビアンSEXを仕込むような母親の側にいてロクな事はない。
あれはパラサイト。弟は一人暮らしを望んだようだったが仕送りするお金がないとか言われて諦めたらしい。
きっと知っている。彼女には一度離れた子供が戻ってくる事の無いことを。独りきりで老い続けるのだと。
虐待から始めて孤独に終わる。
当たり前のことに気づかないほど母親は性に狂っていたのか。挙句、父親との性生活が破綻して父親を自殺に追いやったのか。
不幸な人が幸せそうにふわふわと現実感のないようなあの姿。薬の副作用にしてもあの多幸感が無ければ母親は自殺しかねない。
彼女は狂うことでしか生きられない。トドメを刺すのは私に負担がかかるから、このままリビングデッドとして朽ちていくのを待つ。
産んでもらったお礼として手紙でも送るかな。内容は思いもつかないけれど、私は生きていることを悔やんではいない。

藍花