会社の元後輩が起業して作った会社UZABASE 。コンサルティング会社や金融機関で、企業の初期的な分析をする際に使えるツールを開発して、いよいよサービスインしました。彼は年次では3つ下。退職後は外資系銀行に転職し、1年位前から友人と会社を作っています。


例えばコンサルティング会社で潜在的な顧客から何らかの引き合いが来た際に、外部資料ベースで簡単な調査をして、SD(Sales Development)パッケージにまとめるわけですが、その際に必要となる業績や、競合他社の状況、市場の統計情報などが一元化していて簡単に取れると言うのがウリで、しかも既存のサービスよりも使いやすく、相当廉価になっています。


もう少し中身を紹介すると、有価証券報告書で提出された数字は全て取れますし、普段使うような指標(収益性、安定性、株価指標など)は一目で分かるように加工されていて、エクセルへのダウンロードも簡単。政府統計へのリンクがあったり、矢野経済、富士経済だとどのような内容があるのかもリンクがはってあります。(買うのはそれぞれに問い合わせる必要がありますが) また便利なのは上場企業全てに約400の業種のフラグ立てをしてあるので、競合比較が容易であること。Bloombergでも日経でも帝国でも東証でも業種分けって結構いい加減で比較可能な競合企業をさがすところが結構手間なのですが、そこの手間も軽減されています。


創業メンバーはコンサル、外銀と実際に分析をしていた人たちが作っているので、そこのユーザビリティがウリ、ということのようです。


参入したばかりの会社がそんなことを出来るミソは2つあって、1つは情報の「流通業」に特化していること。情報元はそれを持っている各社と提携していて、それを流通させるところの編集の付加価値をとろうということです。もう1つは有価証券報告書の提出がXBRLという形式で提出されるようになったこと。以前このエントリー でも触れましたが、それによって一般人でも簡単なプログラムさえ組めれば決算情報を引っ張ってこれるようになりまいた。(私では無理ですが・・・)

「意味」のレイヤーと「表現」 のレイヤーがアンバンドルした、という市場の変革期に着目したともいえ、以前から「情報流通のアンバンドル」は興味を持っているテーマだったので非常に興味深く見ていました。


で、この会社が先々週くらいにうちの会社にプレゼンをしに来たので、デモを見なから色々話していました。個人的な感想としては、非常に使い勝手が良いですし、初期段階で必要な情報は網羅されていると感じました。BloombergからでもBLP関数を組めば出来ることもありますが(事実そのようにしてやっていましたが)どうしても自分で関数をいじるとバグもありますので、その部分の加工が安心できるのが良いですね。但し、やはり潜在顧客となる業種に先行的に入っているBloomberg、日経テレコン、Next有報革命などのツールに割り込んでいくのが大変なのと、同じようなことをやる競合企業も出てきているようで、これからの営業のスピードがまずは重要そうです。


一方で今後を考えると、個人的には2つほどポイントがあるなあ、と思っていてその点を伝えました。

1つ目は、現在は人手で業種分類を行なっているものをブラッシュアップしていく仕組みを如何に作りこめるか、2つ目はユーザー側が自由に編集する機能を持たせることで如何にスイッチングコストを上げるか、ということだと思います。


根本にあるのは、ネットにおける情報の「流通業」は如何に自動化できるかが肝で、それをWeb2.0的というか、CGM的というか、「みんなの意見」は案外正しい 的なメカニズムをビルトインできるか、ということが勝負を分けるような気がするという考えです。もちろんYahoo!的な編集の付加価値を取りに行くということはありえますが、BtoBの世界になるほど、最大公約数の使い方がおそらく最もよいソリューションとなるだろうからで、ユーザー企業の「使い方」の蓄積によって、業種分類なども「フォークソノミー」(人手による分類)的に最適化されていくような気がするからで、もちろんその精度は累積使用回数に比例すると思うからです。


2つ目の「編集機能」ですが、例えばうちのようなコンサルティング会社であれば、業種ごとに「この業種ならこのページを見たほうがいいよ」とか「過去にこの会社のプロジェクト/営業をやったよ」というような情報を書き込めたり、(セキュリティの問題さえなければ)そこに関連するプロジェクトの報告書をくっつけたり、とナレッジシェアのツールになっていけば、かなりスイッチングコストを高められます。見方を変えると、単なる「情報加工」という付加価値だけでなく「ナレッジシェアのインフラ提供」という付加価値を取り込んでいくことに他なりません。


これも、「単なる流通業の付加価値は低い/障壁事業になりづらい」という基本認識からみると至極もっともな結論かな、という気がします。


いずれにしろ、がんばって欲しいと思います。興味がある人はお問い合わせ下さい。


最近やわらかいエントリーが多かったので、久々にちゃんとした内容でした。