鶏の一生 卵 | 僕らはみんな生きている

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採卵鶏(レイヤー)
1.3日に1個卵を産むよう、人為的に育成された鶏

2014年日本のバタリーケージ

6、7段に積み重ねられています。非衛生で、昼間でも薄暗く、鶏の声を羽ばたきとホコリが充満しています。

機械によるくちばしの切断
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https://www.youtube.com/watch?v=7_z32_eSDTI
雌のひなは専用の鶏舎で群飼されます。過密な群飼によりひな同士のつつき合いが広がりやすく、傷つくひなが出てくるため、電気加温式断嘴器で、くちばしの切断(デビークまたはビークトリミングと呼ばれる)が行われます。
くちばしの切断は、無麻酔で行われ、日本の採卵養鶏の約50%で実施されています。
くちばしの表面の角質層と骨の間には神経と血管の通ったやわらかい組織があり、デビーク時には出血、鶏は痛みで苦しみます。

採卵用鶏の雄は、卵を産まないため、雛の段階で、ビニール袋にいれて圧死・窒息死、もしくはシュレッダーなどで生きたまま処分されます。
毎年1億8千万匹の雄の雛が処分されています(2006年 朝日新聞より)
※ドイツでは、これに対して裁判が行われ「オスのひよこが生後1日で処分されるのは不当であるとし、代替法を考えるよう判決が下された。

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処分された雄のひな

120日齢ころから成鶏用のケージで飼育されます。卵を集約的に生産できるよう、バタリーケージで飼育されることが多く、日本の採卵養鶏場では90%以上がバタリーケージ飼育です。

※バタリーケージとはワイヤーでできたケージ(間口25cm×奥行40cm×高さ45cm程度)の中にニワトリを2羽ずつ(日本の一般的な収容数)入れ、それを何段かに重ねて飼育する方式です。平均すると1羽当たり470平方cm程度。これは22cm×22cm満たない大きさです。
このバタリーケージという工場式畜産は、1930年代にアメリカで開発され、1950年代から日本でも普及した生産様式です。

この羽を伸ばすこともできないケージの中で、卵が産めなくなり屠殺されるまでの間を過ごします。

バタリーとは、「一連の類似した結合される単位からなる装置」の意味であり、この金網以外に何もないケージの中で、鶏は卵を産む「装置」にすぎず、装置として扱われる鶏は精神に異常をきたします。
四方と床も金網に囲まれて、ケージの中には巣も、止まり木も砂場もありません。

動物行動学者コンラート ローレンツは次のように言っています。
「動物のことを何がしか知っている人間にとって、鶏が無駄に覆いを得ようとして、何度も何度もケージ仲間の鶏の下にもぐりこもうとしているのを見ているのは、実に悲痛なものである。
こうした状況のもとで、雌鶏は間違いなくできるだけ長く卵を持っておこうとするだろう。ケージ仲間の混雑の中では卵を産みたくないという本能は、同じような状況で人ごみの中で排便したくないと思う文明人の気持ちと同じくらい強いはずだ」
(「動物の解放」 ピーター・シンガー著 より)
鶏には卵を隠れて産みたいという強い欲求があります。捕食者が産んだ卵を狙うからです。
また卵を産むときには排出口が目立ちます。そこをほかの鶏がつつくことを避けるためにも、鶏は巣を必要とします。また自分自身を捕食者から守るためにも巣が必要です。隠れることができ、なおかつ外の様子を伺うことのできる巣は鶏にぜったいに必要なものです。
「実際にケージの中にいて、捕食者はいない」などということは問題ではありません。
放牧飼育されている鶏には巣が与えられています。鶏にはお気に入りの巣があるそうです。自分のお気に入りの巣に、ほかの鶏が入って卵を産んでいるときは、その巣の前で順番を待ちます。

バタリーケージは狭く、何もないだけではなく、さらにその上金網が傾斜しています。鶏たちは、卵が転がりやすいよう傾斜した床(金網)の上で過ごしています。

運動不足のため、骨粗しょう症や骨軟化症が多発し、出荷の時には30%の鶏が骨折するとも言われています.
(「アニマルウェルフェア」 佐藤衆介著 より)

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(2011年 日本 アニマルライツセンター撮影

採卵鶏は150日齢頃から産卵をはじめます。
産卵を開始して約1年が経過すると、卵質や産卵率が低下し、この時点で、と殺される場合もありますが、長期にわたって飼養しようとする場合は、強制換羽がおこなわれます。
強制換羽とは、鶏に2週間程度、絶食・絶水などの給餌制限し栄養不足にさせることで、新しい羽を強制的に抜け変わらせることです。ショック療法ともいえる強制換羽で死ぬ鶏もいますが、生き残った鶏は、また市場に出せる質の良い卵を生むことができます。
※近年、断食による強制換羽ではなく、低栄養飼料の給餌による強制換羽も広がりつつあります。

強制換羽は日本の採卵養鶏では約50%で実施されています。 強制換羽後、約8ヶ月間産卵させ、産めなくなると、生きたまま輸送用容器に詰められ、食鳥処理場へ出荷されます。
1年以上採卵を続けた後の廃鶏の肉は、かたくて正肉利用には適さないことから、ミンチ処理後、肉だんごやハンバーグ、ハムなどの加工用に利用されています。
採卵用として飼育される動物は数ヶ月~3年以内にと殺されますが、ペットとして飼育されている鶏の中には、10年以上生きているものもいます


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出荷される鶏

食鳥処理場では給水されず、喉を乾かせ水を飲みたいを焦がれながら、と殺されます。
http://maypat01.blog.fc2.com/blog-entry-180.html


朝起きたら羽ばたきし、身づくろいをし、一日に地面を15000回つつき、あちこち歩いて採食する生き物です。
見慣れないものがあったら好奇心でついばみます。くちばしを使ってたくみに羽毛の間に入り込んだ寄生虫をとり、尾腺(※)から出る分泌物を羽毛にぬりつけてグルーミング(羽づくろい)します。
しかしデビークされていれば、満足に地面をつつくことも、羽づくろいもできません
※尾腺:鳥の腰には、脂を分泌する部分があります

土の上を歩いていれば自然に擦り切れる爪は、伸びきり、金網にからまります。

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(2011年 日本 アニマルライツセンター撮影

バタリーケージの中に砂はなく、鳥は掃除行動の一種である「砂浴び」をすることができません。
しかし砂浴びの真似事はします。
羽は汚れ、金網で擦り切れます。
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(2011年 日本 アニマルライツセンター撮影

ケージ飼育と放牧飼育を比較すると、
「他に何もすることが無いケージ飼育では摂食時間が有意に長かった。しかし摂食時間のうち30~50%は餌の摂食をともなわない、偽摂食行動(食べる真似)である」という報告もあるそうです。
(「アニマルウェルフェア」 佐藤衆介著 より)


EUでは2012年から、従来型のケージは禁止、ケージの中には止まり木、砂、巣箱を設置しなければならない、とされています。しかしそれでも、ケージ飼いは鶏にとっては辛いものでしょう。
ケージの最低面積が決められていますが、1羽あたり750平方センチメートルという狭さです。27cm×27cm程度に過ぎません。
しかし、すでにケージ飼育(囲いの中で飼うこと)そのものを禁止している国もあります。
スイスはすでに10年以上前にケージ飼育を禁止。スイスの採卵用鶏は、放し飼いもしくは、平飼いのみです。オランダも2008年にケージ飼育を禁止。ほぼ100%ケージ飼育完全廃止が実現しています(対応できていない会社も数%あります)
海外では企業単位での取り組みも進んでいます。イギリスとスイスのマクドナルドはケージ飼育された鶏の卵を使っていません。2013年、フランスの有名スーパー「モノプリ」は、フランスで初めて「バタリー飼育で生産された鶏卵を販売しない」と宣言。今後は平飼い、放し飼い、または有機農法で育てられたニワトリの卵のみを販売するといっています。同年、オーストラリアの大手スーパー「ウールワース」はケージ飼育された鶏の卵を2018年から販売しないと発表しています。
ドイツではさらに企業単位でのケージフリーが進んでいます。
http://www.kaefigfrei.de/transparenz/

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(2011年 日本 アニマルライツセンター撮影

私たちがスーパーで買う卵は、日本で作られた卵です。日本のスーパーで売られている1パック100~200円の卵はほぼ100%、バタリーゲージで作られています。
卵に含まれる栄養素は、すべて植物から摂取することが可能です。わたしたちは卵を食べないというとても簡単な選択をすることができます。
2012年のカナダの研究では、卵黄を一週間に3個以上食べる人は2個以下の人に比べると、プラーク堆積量(プラークが堆積すると、心臓病を発症するリスクが増大する)が遥かに多いことが明らかになっています。今の日本人の卵の1週間の消費量は6個以上です。
栄養学上、卵を食べなくとも、問題はありません。しかし食べるのであれば、『屋外に放し飼いされ、ストレスなく育った健康な鶏の卵を、ごく少量食べる』という選択をすることができます。それは私たちの健康にも、鶏の幸せにもつながる選択です。
大量生産・大量消費のシステムに組み込まれた鶏を解放することにつながります。動物の幸せは放生にあります。

鶏は恐竜の子孫です。
日本国が示す「動物愛護の基本的な考え方」には「動物の愛護の基本は、人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊厳を守るということにある。」とあります。
しかし、バタリーケージには、動物への尊厳もへったくれもありません。
ただの搾取・虐待しかありません。

東北大震災では、原発20キロ圏内が鶏が約63万羽いたといわれています。圏内に残された鶏は、ケージの中で、自ら餌を求めて歩き回ることもできず、飢えと乾きでほぼ全滅しました。
生き残った数百羽については、ビニール袋に入れて、二酸化炭素注入による窒息死、という方法がとられました。これは鳥インフルエンザのときの殺処分方法と同じです。

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餌を求め、ケージから頭を出して死んでいる鶏
(今本獣医師「福島第一原発周辺における動物たちの現状報告書」より)

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(2011年 日本アニマルライツセンター撮影
 
鶏は1日に200万羽 と殺されています。(2009年 農林水産省統計)
日本人の卵の消費量は、世界第二位(世界鶏卵評議会IEC2010年出典)

2011年時点での日本の採卵鶏の飼養戸数は、2,930 戸。1億7591万羽の採卵鶏が飼育されています。
近年飼養戸数、羽数ともに減っています。しかし10万羽以上の規模の農家が増えており、
1戸あたりの飼養羽数は増加しています。(一戸当たり平均49600羽 2011年度)
生産性を重視し、鶏の感受性を無視した工場式畜産が進められています。

鶏卵の国内自給率は90%台後半。(参考:農林水産省、財務省資料)

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鶏は、卵を産む装置ではなく、感受性のある生き物です。
科学情報誌new scientistによると、金網以外に何もないバタリーケージで育てられた鶏と、敷き藁の上で育てられた鶏に巣箱を与えると、敷き藁の上で育てられた鶏は、じきに巣箱から離れたそうですが、ケージで育てられた鶏は、巣箱に夢中になって、そこからなかなか離れなかったそうです。
(「動物の解放」ピーター・シンガー著 より)

また、空調が利いた室内で、餌や水が目の前にあり、糞をしたら金網の下に落ちる、という衛生的な飼い方と、日陰と日向が混在し、暑さ寒さを自分でしのがねばならず、わらの上からくちばしでつついて餌を探さねばならない屋外飼育を、鶏に選択させたところ、鶏は後者を選択したそうです。
(「動物たちの幸せとは何か」 佐藤衆介著 より)





バタリーケージの卵を食べたくない!キャンペーン
がはじまっています。
http://save-niwatori.jimdo.com/

毎月28日は「ニワトリを守る日」





採卵用鶏の関わる法令など
(採卵用鶏の権利を守るための制度は、日本にはありません)

動物の愛護および管理に関する法律
畜産動物は、動物愛護管理法の対象動物であり、第44条の罰則の対象動物である。しかし第10条の動物取扱業の登録を要する対象動物ではない。
また動物愛護管理法に、畜産動物に限定した条項はない。

産業動物の飼養及び保管に関する基準 
「産業動物の衛生管理及び安全の保持」「虐待の防止」などが記されているが、この基準は努力義務のみである。ごく簡単な内容で、具体的な飼養方法についての記載はない。

アニマルウェルフェア(動物福祉)に対応した採卵鶏の飼養管理指針 
農林水産省の要請で、畜産技術協会が作成、2010年公表。国際的なアニマルウェルフェアへの取り組みを受けて作成された指針。罰則はなく、拘束力は弱い。具体的な飼養方法、数値目標も記載されているが、従来型バタリーケージをなんら規制するものではなく、改良型ケージ(エンリッチケージ)への移行のための巣箱、砂、止まり木の設置などについても記載はない。またビークトリミング(くちばしの切断)、強制換羽の方法が記載されているが、これを禁止するものではない。

家畜伝染病予防法
家畜の伝染性疾病の発生の予防とまん延の防止のための法律。家畜伝染病予防法施行規則第21条において規定された飼養衛生管理基準には「家畜の健康に悪影響を及ぼすような過密な状態で家畜を飼養しないこと」とある。また、毎年、飼養衛生管理基準の遵守状況について調査が行われ、家畜伝染病予防法第十二条の七に基づき、毎年インターネットで公表されている。
そのほか、動物福祉に関する項目はない。
 
養鶏振興法
種卵(ふ化させるための卵)を生産する種鶏業者と、鶏のひなを生産するふ化業者に関する法律。種卵・ひなの表示規定や、ふ化業者の登録について記されている。「施設の整備」の項で、種鶏やひなが病気にかからぬようにすること、という努力義務が記されているが、その他に動物福祉に関係する条項はない。

家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(家畜排せつ物法)
家畜の排泄物の処理や保管、有効利用について記されている。動物福祉に関する条項はない。

食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律
鶏のと殺(食鳥処理)事業の許可、公衆衛生上必要な措置などについての法律。食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律施行規則(厚生労働省令)に「食鳥の集荷に当たっては、異常なものの排除に努めるとともに、生体の健康の保持に留意して輸送すること」とあるほかは、動物福祉に関する条項はない。




数値は、2007年調査 畜産技術協会資料より
http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/index.html


ブロイラーについてはこちら
→ http://maypat01.blog.fc2.com/blog-entry-8.html