思えば坂元さんと豊原さんと初めてプライベートで会ったのは、２０１２年９月８日のことだった
どうしてこの３人で食事することになったのか、その経緯は思い出せない
テラスで夕陽を見ながらごはんが食べたい、という豊原さんの謎のリクエストに、坂元さんが応えるかたちでお店を探してくれて、夕陽を見ながらテラスでアフリカ料理を食べた
「今度坂元さんと朗読劇やるんですよ！坂元さんも私も初めての朗読劇なんです！朗読劇でも舞台は舞台だし、できるかな。でもさ、本が面白いんですよ！」
なんて話を豊原さんにして、「じゃあ観にいくよ！」なんて言ってくれて、「俺、こんだけ坂元と長い付き合いなのに一回も仕事したことないんだぜ」なんて笑ってた
楽しくて日付けが過ぎるまで会は続いた
翌日９月９日は私の誕生日だったが、初めての食事会だったし、私は二人が私の誕生日を知っているわけもないと思っていたし、だいたい、私自身が誕生日のことなど興味がなかった
だから当然、欲張りな期待などなかったわけだが、二人がサプライズでお祝いしてくださった
そもそもどうして私が朗読劇をやることになったのか、それは知らない
うっすらは聞いているが、まぁ、運が良かった、という感じだろう
相手役は誰がいいかと聞かれ、当時会ったこともなかった高橋一生くんを指名した
初恋〜は同級生二人のお話なのだが、私たちはリアルに同い年
私の朗読劇デビューの相手役として、安心できる同世代の役者は他に思いつかなかったくらいだった
会ったこともないのに
（一方的に彼の出演舞台等は観ていたのでニアミスはしていたが）
この朗読劇をきっかけに、のちに彼は坂元作品の常連になって大ブレイクしていくことになるのだが、それは皆さんのほうがきっとお詳しいのではないかと思う
初演は青山 2012年9月
『不帰の初恋、海老名SA』
一生×若菜ペア、１組での２回公演
豊原さんが観にきてくれた
再演は赤坂 2014年6月
『不帰の初恋、海老名SA』に加え、新作『カラシニコフ不倫海峡』
再演では３組のペアが日替わりで赤坂の本公演、更にはセット公演として中目黒で４組のペアが演じたので、ぜんぶで７組ものペアが誕生した
このときは、一生くんが先に決まっていた
私もやることになったが、一生くんとのペアではなくなる可能性があった
しかし一生×若菜ペア、は切り離されずに済んだ
続投、という形で、私たちはトップバッターを務めた
豊原さんは、新作の『カラシニコフ不倫海峡』を観にきてくれた
再再演は新宿 2017年9月
『カラシニコフ不倫海峡』豊原功補×酒井若菜
『不帰の初恋、海老名SA』太賀×松岡茉優
たった一回限りの復活公演
いよいよ、豊原さんが名乗りをあげた
一生くん以外の相手役なんてまったく想像していなかったから、正直戸惑った
でもやることに決めて、というか「きっと浮気とか不倫とかって、こんな風に最初から“やる”って決めてるんだろうな。そして、それを受容していくうちに、罪悪感とか欲とか出てきて、のめり込んでしまうんだろうな」なんて考えていた
そして、そんな罪悪感を実際に体感して生まれるカラシニコフがどんなものになるのか、興味があった
更には、単純に豊原さんの待田健一役を観てみたかったし、坂元さんと豊原さんの初仕事の立会人になれることも嬉しかった
そして、トップバッターを務めることになった
まぁ２日しかないのでトップバッターとラストバッターしかいないのだが あは
更には、この朗読劇、唯一の皆勤賞俳優になった
そして９月７日、本番当日
実はとんでもないハプニングからスタートしていたのだが、意外とバレないのだな、と思いつつ、それはまた話せる日がきたら話すことにして…とにかく面白かった
観劇してくださったお客さまも、一人一人がみな、生物の舞台を創るメンバーとして、一緒にこの作品を創ってくださった
お客さま、ありがとうございました
まあそんなわけで、とても楽しい朗読劇だった
翌日の９月８日、茉優と太賀くんの『不帰の初恋、海老名SA』も観劇
私が観たかった玉埜くんと明希を、やっと観ることができた
素晴らしかった
終演後、茉優は体感で言うと握力800kgくらいでずっと私の手を握って離さなかった
「あのね、ここは絶対若菜さんとおなじ言い方をしてるな、って確信しながら演ってた台詞がいっぱいあったんだ」
まったく同じことを、観劇中に私も思っていた
前回の私が演じた初恋〜のDVDでも観たのかな、と思うくらいだった
彼女からの手紙には、久しぶりに「若姉」の文字
最近はわりと若菜さんと呼ばれることが多かったのだが元々は、若ねぇ、と私を呼んでいた彼女
その久しぶりの呼びかたに歴史を感じた
私たちの歴史も感慨深い
そして、役を演じる上で生まれたシンクロっぷりにも、胸が熱くなった
打ち上げ
初めて坂元さんと豊原さんと会ったの、9月8日でしたよね！初演の少し前でさ！カラシニコフはアフリカが出てくるけど、私たちの初めての食事がアフリカ料理だった、ってなんかすごいよね！
なんて話していると、お店のライトが消え、茉優がケーキを持って登場した
や…や…やってもうた…
どおりで坂元さんと豊原さん、相槌が不自然だったわけだ
ヒヤヒヤするよね、そりゃ すみません
ちょっとはサプライズの可能性とか汲み取れよ、って話ですよね 笑
ほんとにね…この年になるとね、お祝いとかね、まったく頭にないんですよ…この年っていうかね、元々あんまりお祝いとかね、期待するタイプじゃないんですよ…
そもそもね、打ち上げに参加するか迷ってたんですよ
前日に軽打ち上げもしてたし
なんかなんとなく流れで参加しただけで、もし私がしれっと帰ってたら、あのケーキどうなってたんだろ…
そんなわけで、坂元さんと豊原さんにお誕生日をサプライズでお祝いしてもらえたのは２回目だった
お二人が、9月8日の夜から日付が9日に変わる瞬間を共に過ごしてくれたのは、初めて食事をしたあの日以来、2回目だ
だから余計に、初めて3人で食事をしたあの日のことを、痛烈に思い出し、これまた歴史を感じ、感慨深くなる
大好きなスタッフと、『初恋〜』で最高の玉埜くんと明希を魅せてくれた太賀くんと茉優たちに囲まれて
とても幸せでした
そして、観に来てくださった関係者のかたからいただいた差し入れやプレゼントの山っぷり
誕生日付近に仕事するとこんなに物が貰えるのか 笑
この二日間にいただいた、冗談みたいな数の差し入れとプレゼント
家に帰って一つ一つを「これは〇〇さんから」「これは△△さんから」等、メモと照らし合わせながら開いてるうちに、ちょっと「わーん」となった
それを選んだ「理由」みたいなものが見えて、嬉しかった
でもやっぱり嬉しかったのは、宝物のような作品を、宝物のような人たちと創り、宝物のような人たちに観て聴いてもらえたことだと思う
坂元さん、ありがとう
photo by 茉優
良き二日間でした
また一つ、成長しました
わりと大人になりました
今後ともよろしくお願いします
明日も良き一日を
ごきげんよう