2011年 11月24日 【RT】http://rt.com/news/bird-flu-killer-strain-119/

ある実験室で、人類の半分の人口を死亡させる可能性を秘めたウィルスが作られた。現在、その製造方法を公開するかどうか、またそもそもこのような研究がなされるべきであったかどうかについて、学識経験者や生物テロの専門家らが議論している。

 

このウィルスはH5N1鳥インフルエンザの変種で、感染力を高めるよう遺伝子的に改造されたものであり、オランダのロッテルダムにあるエラスムス・メディカル・センター(Erasmus Medical Centre)のロン・フォウチャー(Ron Fouchier)によって製造され、9月にマルタで開催されたインフルエンザ議会(influenza conference)で発表された。

 

フォウチャーによると、この変種ウィルスは動物、特に鳥の間で流行するが、人間にはほとんど影響を与えないという。

 

アジアで鳥インフルエンザが発生してから10余年経ち、人間への感染が認められたのは600事例以下となっている。しかしH5N1型鳥インフルエンザは特に危険性の高いもので感染が認められた患者の約半数が死亡している。人間から人間へは簡単に感染しないため、公衆衛生に対する深刻な脅威とならなかった。少なくとも感染はしなかった・・・今まではである。

 

フォウチャーのチームの研究員が使用したのはフェレットだ。人間のインフルエンザに対する反応が非常によく似ているため、フェレットは実験用の動物に利用されている。H5N1型ウィルスを一匹ずつ感染させていくと、ウィルスは徐々に新しい感染媒体に適応していった。そして、感染を10回行ったところで、ウィルスは空中に浮遊するように突然変異した。つまり、感染したフェレットの近くにいるだけでもう一匹のフェレットが感染するようになったということである。

 

ある遺伝学研究によると、この新しく危険性の高い変種は元のウィルスと比べると突然変異体が5か所あるという。そしてその変異体の全ては、単に全部が揃うことはなかっただけで以前から自然界の中で見つけることができたものだ。フォウチャーの変種ウィルスは、毎年何万人もの死亡者を出している季節性のインフルエンザと同じくらい感染性が高く、万が一、外部に出た場合には死亡者数が激増する可能性が高い。

 

長年に渡り、細菌兵器に使われる炭疽菌の研究を行っている微生物の遺伝子学者Paul Keim氏は、サイエンス・インサイダー(Science Insider)に対して語った。「このウィルスほど恐ろしい病原体は、他には考えもつきません。これに比べると、炭疽菌など全然怖くありません


 そして今、バイオセキュリティ国家科学諮問委員会(National Science Advisory Board for Biosecurity NSABB)の議長であるKeim氏と同委員会の他のメンバーは、非常に困難な決断を迫られている。フォウチャーは自らの研究成果を発表することを望んでいる。また、ウィスコンシン大学、マディソン大学、東京大学の共同で同様の研究を行っていたウィルス学者の河岡義裕氏もまた、それに匹敵する成果をあげている。そして、彼らに認可を与えるのがNSABBの権限となっているのだ。

 

全世界を受け渡すような完全な製造方法のレシピを、生物兵器テロリストの手に渡らせる可能性のある情報を公表することに関しては、学識経験者やバイオ・セキュリティの専門家の多くは、もちろん慎重だ。そもそも、最初からこのような研究は行われるべきではなく、有害となる可能性のある研究に対して国際的な監視を呼びかけるべきだという一部の専門家もいる。

 

科学者が致命的なウィルスを、致命的で感染性の高いウィルスに改造するなんて、単なる性質の悪いアイディアにすぎない。そして、他の者たちが模倣できるようにどのように行ったかを公表する、というのは、二番目の性質の悪いアイディアだ」とピッツバーグ大学医療センター内のバイオセキュリティー・センター所長でバイオテロの専門家であるThomas Inglesby博士は考える。

 

しかし、まさしくそのデータがもし科学界で入手が可能になると、H5N1の人類の間での大流行に備えることができるようになる可能性が出てくる。そしてH5N1の大流行は、当初考えられていたよりもずっと高い可能性で起こる可能性があることをフォウチャーの研究が示唆している

 

科学の分野内で情報の自由を弾圧することは、自然発生すると思われるインフルエンザに対して、人類が無防備となる結果をもたらす可能性がある。

 

NSABBは間もなく公式声明を公表する予定であるとKeim氏は言う。そして、この種類の研究について追加的な勧告を行う可能性が高いとも。「言わなければいけないことが山積していますから」