2月26日 【BBC】 http://www.bbc.co.uk/news/magazine-17155304

「ギリシャ人はヨーロッパで一番の働き者?」

ヨーロッパという家族がユーロ圏の経済危機によって分断され、ギリシャは特にその批判の中心の的となっている。ギリシャ人たちは身分不相応の生活をしていたのだろうか?ギリシャ人は怠け者なのだろうか?後者については、統計をみることで驚くような事実が見えてくる。

ギリシャは国家破産を免れるため、今週1300億ユーロ(約14兆円)の財政援助を得るための取引の一部として、さらなる財政支出の削減に直面している。

しかし統計をみると、ギリシャが道を誤ったのは国民が怠けていたわけではないことがわかる。労働者一人当たりの年間勤務時間の平均をみれば、ギリシャ人は非常に勤勉なようだ。

経済協力開発機構(OECD)による統計によると、平均的なギリシャ人労働者は年間2,017時間と、他のヨーロッパの国のどこよりも長時間あくせく働き続けているという。経済協力開発機構の加盟国34か国の中では、韓国、チリに次いで世界で3位となっている。

その一方で、普通は勤勉さの典型と思われているドイツの一般的な労働者は、一年あたりわずか1,408時間の労働に留まっている。ドイツは34か国の同機構加盟国のリストの中で、33位(また、ヨーロッパの国だけをみると25か国の加盟国の中24位)となっている。OECD加盟国の中で、唯一ドイツよりも労働時間が短いのはオランダで、1,377時間だ。

(訳注 ちなみに、日本は1,733時間で15位、イギリスは1,647時間で24位です)

平均としては、ギリシャ人はドイツ人に比べ40%以上も長く労働していることになる。しかしこの統計には目に見える以上の意味がある。両国の年間労働時間がここまで異なっている理由には主に二つ挙げられる。

OECDで労働市場の統計を担当しているPascal Marianna氏は言う。「長時間の労働が必要な自営農家や小売店主などが、ギリシャの労働市場の中で大きな割合を占めています」

自営業主は、雇用契約に基づいて定められた時間だけ労働する者よりも長時間働く傾向がある。

そしてもう一つの理由は、各国のパートタイムの労働者の数の違いにあると、Marianna氏は指摘する。

ドイツでは、パートタイム労働者の割合がかなり高くなっています。だいたい4人に1人といったところです」

これらの年間労働時間数はすべての労働者に関するもので、ドイツ国内で大きな割合を占めているパートタイム労働者がその全体的な平均値を引き下げている。ギリシャではパートタイムで労働している労働者の割合はずっと低い。

ドイツ・ギリシャ両国の労働市場の構造が異なっているため、実際のところはこのような方法で比較することは困難となっている。

パートタイム労働者や自営業者を差し引いてフルタイムのサラリーマンだけで計算した場合、それでもギリシャ人はドイツ人と比べて10%長時間働いていることになる。

これはドイツ人がギリシャ人と比べ、長期休暇(ホリデー)や病欠、産後休暇などをもっと長く取っているからである。

これまでのところ、雇用されている労働者に注目してきたが、労働可能人口のうちドイツ人の72%が仕事を持っているのに対し、ギリシャでは60%に留まっている

じゃあ、もし労働人口全体の平均労働時間、つまり全労働時間を労働人口数で割った場合ドイツが上位にくるのでは?と思う人もいるだろう。しかし、それでもなお、ギリシャはドイツに勝っているのだ。

では、財政的緊急援助が必要なのがドイツではなくギリシャである理由とはなんであろうか?これは複雑な質問だ。しかしもう一つ簡単な計算をすれば、この答えを考える手助けとはなるだろう。

GDPつまり国内総生産を考えてみよう。GDPとは国内で生産されたすべてを合わせたものだ。これを労働者の数で割ってみるのだ。

この基準によると、ドイツ人労働者はギリシャ人労働者よりも平均として生産性が高いことになる。OECD加盟国の中で、ドイツは各労働者による生産性は8位(ヨーロッパ内では7位)と高くなっている。一方、ギリシャは24位に留まっている。

Marianna氏によれば、これは主にドイツの生産業の生産性が非常に高い点があげられるという。また、ドイツでは農業従事者の割合は低めになっているが、農業の分野でもまた、ドイツは生産性が高めになっている。「テクノロジーがもっと普及しているのがその理由です」というのが一因であると彼は言う。

しかし結局のところ、Marianna氏はこのような統計を考える際は少し気を付けた方がいいと強調する。

統計上の数字は各国の統計局によって集計されたものであって、各国、データの収集の方法や収集した情報は独自の方法を用いているためである。