先日、「まんだらけ」中野店で万引き犯の顔写真を公開する事を予告した店側が警察によって取り下げられ、その後犯人が逮捕されるという事件があった。


その際に、Amebaニュースのコメントやブログ等で、盗まれた品物がその後どう扱われるのかという点で間違ったコメントをしている人がとても多い事、また、私の入れたニュースコメント上の反論に対し何人かの人からメッセージをいただいたという経緯もあり、ここで法律に関する話と、私個人の見解を記事にしたいと思う。


まず、犯人が万引きした品を持っている場合、当然返還義務はある。


今回のまんだらけの事件では、犯人が別の買取店に盗難品を売ってしまっている

その際、買取店はそれが盗難品である事を知らないで買い取った場合「善意の第3者」となり、その商品は買取店の所有物である。

ここが勘違いされるポイント。


確かに、民法で、盗難被害者は善意の第3者から商品を取り戻すには善意の第3者が商品を購入した際の代金を支払わないといけないとある。


民法第192条(即時取得)
取引行為によって,平穏に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり,かつ,過失 がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する。

民法第193条(盗品又は遺失物の回復)
前条の場合において,占有物が盗品又は遺失物であるときは,被害者又は 遺失者は,盗難又は遺失の時から二年間,占有者に対してその物の回復を請求することができる。

民法第(194条)
占有者が,盗品又は遺失物を,競売若しくは公の市場において,又はその物と同種の物を販売する証 人から,善意で買い受けたときは,被害者又は遺失者は,占有者が支払った代価を弁償しなければ,そ の物を回復することができない。


しかし、もう1つの重要な法律がある。

古物営業法である。


古物営業法20条:盗品及び遺失物の回復
古物商が買い受け、又は交換した古物(商法第五百十九条 に規定する有価証券であるものを除く。)のうちに盗品又は遺失物があつた場合においては、その古物商が当該盗品又は遺失物を公の市場において又は同種の物を取り扱う営業者から善意で譲り受けた場合においても、被害者又は遺失主は、古物商に対し、これを無償で回復することを求めることができる。ただし、盗難又は遺失の時から一年を経過した後においては、この限りでない。


つまり、1年以内ならば買取店は被害者に返還義務があるという事。
もちろん、警察に盗難届が出されており、かつそれが盗難品だという事が確定してからの話だけど。
この場合、買取店が買い取り金をまるまる損する事になる


仮に、その買取店でさらに別の客にその商品が売れた場合、先ほどの民法上の「善意の第3者」として扱われる為、まんだらけはその人に初めて代金を支払わないと買い戻せなくなるというわけだ。



以下は私の見解。


私は中古カー用品店でアルバイトしていた事もあり、過去記事にも書いたけど、このような買い取り金を損する事がバカらしいので、あきらかに盗難品とわかっても警察に届けなかったり、警察から問い合わせがあると商品を隠してさっさと叩き売ってしまう買取店が多い(私のいた店ではない)。
私のいた店でも過去記事に書いたとおり盗難品の持ち込みが多く、ずいぶん警察に没収された。
稀に犯人の親かなにかが弁護士をやとって、それに見合った金額を賠償する事もあるが、そんな事はめったにないし、警察から捜査協力費や報奨金が出ても買い取り金には及ばない。
ぜめて一時保障するとか、このような買い取り側が泣き寝入りするシステムを早急に変えないと、結果盗難被害者が泣き寝入りする事になり、盗難が増え、治安も悪くなる
犯人が一番悪いのだから。


ただ、だからといって盗難品とわかって買い取ったり、警察から隠したりするのは「共犯」扱いになり、発覚すれば指導、組織的な場合は営業停止になる。


過去記事にも書いたとおり、盗難品を隠す悪質な店もある為、店で自分の盗まれた物を発見した場合、警察に報告してそのままにするのではなく、さっさと転売されない為にも事情を説明して店に取り置きしてもらう事も大切である。



さて、今回のまんだらけの事件では犯人の顔写真を晒す事についての是非も議論された。
私はわりとコンビニなどで、防犯カメラに映った万引き犯が貼りだされているのを見るので、それがいけない事だという認識はなかった。


ただ、「人権侵害」や「冤罪の可能性」の話云々よりも、別の観点でデメリットがあるとは思う。
それは、情報の錯綜による、捜査のかく乱という事で、逮捕に支障が出る場合があるという事


人は固定観念にとらわれる。
3億円事件の犯人の指名手配写真はヘルメットをかぶっていて、皆そのイメージにとらわれすぎて素の髪型・顔が思い浮かばなかったとも言われている。

また、数年前に犯人が逃亡の末逮捕された英国人英語教師殺害事件については、「犯人はホモ」という噂が一人歩きし、ムダな女装イメージのイラストが出回った


間違った情報が拡散されればさらに間違ったそれに関する通報も寄せられる。
「いい加減な情報でも警察に報告して手柄を立てたい」という人は思ったよりも多いらしい。
その間違った情報に警察が右往左往している間に、盗難品も犯人もどんどん遠ざかってしまうのだ。