ショートストーリーズvol.8
裏話です。気の抜ける裏話。
ぴょん
この公演のことを語るのにまず真っ先に頭に浮かぶ男、キクチシンキチ。あだ名はぴょんきち。略してぴょん。
ぴょんと出会ったのは今からおよそ5年くらい前、ボスにドトールに呼ばれて「おまえにも後輩ができたぞ」って紹介されたのが高校1年生のぴょんでした。
小さくてお肌モチモチ、きゅるきゅるしたおめめ。ボスにご馳走になったカプチーノを両手で大事に持ってハフハフと啜って、お口まわりの産毛を泡まみれにしていたぴょん。
時が経ってぴょんもしっかり成人なわけだけど、ビールを飲んでいる姿は何回見ても背徳感に包まれてしまうよ。
ぴょん②
居酒屋でみんなで一杯やっているとき、ぴょんが必ず頼むものがあります。それは、なめろう。「マシュマロが大好きです！」みたいな顔してるくせに、ぴょんはなめろうが大好きなのである。
ただ、ぴょんが頼むなめろうはいつも売り切れ。
そして必ず、こんな顔する
いやこっちがびっくりやわ。
切ないおれら
わたしと同じく、ぴょんを溺愛する男がひとり。伊藤龍太郎。通称りゅうちゃん。
りゅうちゃんとわたしだけ稽古場からの帰り道が皆と逆。いつもふたり寂しくトボトボ帰っていたわけなんだけど、ぴょん大好きなおれらは知っていた。ぴょんもこっちから帰れるっていうことを。
ぴょんを誘い込むこと数日、ついにぴょんがこっちサイドに来てくれた日がありました。
喜んだわれわれ。喜ぶだけならまだしも、「おもろいと思われたい！」っていう邪な欲望が溢れ出し、見事に空回り。大して面白くない話を謎のテンションで畳み掛け、その状況に焦ってまた空回り。
そして「じゃ、ぼくあっちなんで」と帰ってしまうぴょん。並んで手を振るわれわれ。三輪車並みに小さな車輪のお洒落自転車をキコキコ漕ぎ出すぴょん。並んで手を振るわれわれ。すぐに赤信号で止まるぴょん。並んで手を振るわれわれ。じっと青信号を待つぴょん。休まず手を振るわれわれ。青になってまたキコキコし始めるぴょん。絶えず手を振るわれわれ。どんどん離れていくぴょん。変わらず手を振るわれわれ。ゴマつぶみたいになっていくぴょん。ひたすら手を振るわれわれ。消え去ったぴょん。手を振るわれわれ・・・
ぴょんがこちらを振り返ることは、ありませんでした。
りゅうちゃんとヤギ
りゅうちゃんはとってもポヤポヤした男。1日のうち起きてる時間よりも寝てる時間の方が長いらしくって、いつもホニャニャンとしてて、話しかけても8割方聞いてない。
でもヤギがいると話は別らしい。
なんでや。
うのきち
われわれCチームの自慢のヒロイン、最大の戦力であった鵜木結綺はとっても多忙な女の子。おててが。
そして笑いすぎると泣く。
わたしはもっと女優うのきの魅力をゆっくり落ち着いて噛み締めて静かに感動してリスペクトして…ってしたいのに、オフのうのきちのおてての忙しさに巻き込まれてわたしも忙しく笑っている。迷惑だわ。楽しくって。あいしてる
袖問題
この物語の各シーンの終わりは必ずわれわれが駅のホームへ進んで電車に乗るという展開になっており、ホームがあるという設定の出口に皆ゾロゾロとハケてゆきます。
そこの袖がまあ狭いのよ！
当初は最大で5人ハケることになってたのだけれど、それは絶対無理ってなって
いやどうする？ツムツムする？
って、まあまあ血迷ったよ。
最終的には脚本をちょこちょこと変えてもらってどうにかなりました。よかった〜
幻の名シーン
主人公・裕人(ぴょん)と主人公の幼馴染・瑠花(わたし)の子供時代から現在までの回想シーンから始まるこの作品。
本当はドあたまにふたりの出会いのシーンが存在してたんです。実はめちゃくちゃ気に入ってた。
晴れて公園デビューを果たしたチビヒロトとチビルカ。
せっせと砂をいじくるチビルカ。
キラキラしながら近づいてくるチビヒロト。
目が合う。
チビルカ(怪訝)
チビヒロトに砂を投げつけるチビルカ。
びびるチビヒロト。
ケタケタ笑うチビルカ。
そして裕人のナレーション
「なんだこいつ。それが第一印象でした。」
ってまあ、あくまでイメージなんだけど、そんな感じのシーン。
再現↓
ほんっと、なんだこいつ
子供をやるにあたって、参考にしたのは自分の子供時代の記憶と姪1号2号および甥なわけなのだけれど
そうするとね、何故かしゃくれちゃうの。
中川家の子供ってしゃくれがち。喜怒哀楽ぜんぶしゃくれ。もちろんわたしもそうだった。
あと笑い方ね。
姪たちがやってる通りに「クヒッ！キッシッシ！」って笑ったら、「不穏だからやめて」って、即NGでした。
しゃくれで不穏。
そんな中川家をわたしは愛してるんだよ〜
クールな男
ぴょんはわりと冷めているように見える。
ぴょんの前ではしゃぎすぎると冷たい目で見られてしまうんじゃないかって警戒してる。
しかし
そんなぴょんのお顔がちょっとウキウキしてるように見える日があったの。わずかに、かすかに、かすっっかにルンルンしてるの。
よーく見てみると
あぁうまい棒うれしいのねあの子。先ゆーといてや。
そんな感じで
このほかのキャストとの思い出も、さらにほかの皆様との思い出も、個人的な思い出も死ぬほどたくさんあるけど、このへんで。
ではまた！
