(①~)
CM撮影を終えて事務所に戻るとオーディションを受けていた舞台の主演が決まっていた。
ロミオとジュリエット
念願のジュリエット役…
ロミオやりたかったな~と言いながらも、ジヒョクくんはとっても喜んでくれた。
プライベートな時間もロミオになってジヒョクくんは気持ちよく練習にもつきあってくれる。
…気持ちよくというよりやろうやろう!!ってカンジかな^^
私にジュリエットのセリフを言ってほしいんだって。
私がロミオへの愛をセリフで伝えるとジヒョクくんはそれはもう感激してうるうるきて…
「だ~い好き!!」
って飛びついてくる^^
ハードな練習もなんとか乗り越え、初日まで後3日…という昼下がり
私は稽古場へと向かうタクシーで事故に巻き込まれる…
………
「よかった~~
気がついたんだね」
気がついた時まずはじめに見えたのは大好きな人の笑顔だった。
全身が痛くて動けない。
ジヒョクくんは戸惑い不安げな私の様子を察したのか、
やさしく慎重に状況を説明してくれた。
タクシーに乗ってて
追突されたんだよ…
タクシー…
稽古場に…
稽古に行かなくっちゃ!!
動こうとする私を
ジヒョクくんはそっと抱き込んで
ダメだよ…と言った。
動いちゃだめだよ。
口調から真剣さが伝わってきて私は体をおとなしく横たえた。
何かとても嫌な予感がしたけどただ
ジヒョクくんの次の言葉を待つ…
聞くなら彼の口から。
その方法だけが
この状況に耐えうる唯一の方法と思ったから。
「頚椎捻挫で全治1カ月 絶対安静なんだよ。
…舞台は
…
…舞台はムリなんだって」
ジヒョクくんの言葉ひとつひとつからも無念さが伝わってくる。
どうして?くやしい…
何も言葉も出ない。涙が溢れてくるけど必死にこらえる
もっとダメになりそうで…
…葉子くやしいよね。
でも今は体を治すことだけを考えようね。
ジヒョクくんは静かにこう言った。
「葉子…」
私をそっと抱きしめるジヒョクくんも震えている
「俺がついてるから、大丈夫だよ。不安かもしれないけど、何があっても俺が側にいるからね」
だから何にも心配いらないよ…
ジヒョクくんのやさしさが私を包んでくれるから
悲しみも不安も何もかも包み込んでくれるから
今はただ
この腕の中で
涙を流し続けるだけで
いい
そう思えて私は泣いた
③に続く
☆☆☆☆☆☆