(①~)
この夜…
いつものふたりだけの夜
私たちは一緒に近所のスーパーに買い物に行ったり、
ソンジェさんが豆腐チゲとキムチチャーハンを作ってくれたりします。
食後にシザーハンズのDVDを観て、
ソンジェが「俺がエドワードだったらどうする?」ってかわいいこと聞いてきたり、
私も、「どんなふうでも…手がハサミでも、ソンジェさんだったら好きです」ってかわいいこと答えたり、
それでソンジェがとても喜んだりもします。
…DVD観ている私たちはもちろんぴったりくっついてる。
ソンジェは足の間の床をポンポンしてここ、ここって言ったんだけど、そこじゃあ落ち着かないから横がいいって相談したら、ぴったりくっつくならいいよってそれで許してくれて。
夜ベッドに行く前
ココアを飲みながらイブの計画を立てる。
初めてのふたりのイブはふたりで共演する映画のクランクアップの日。
撮影の後、ソンジェさんの提案で沖縄に行くことになった。
映画のラストは
ふたりの別れのシーン
私は自分から切り出したソンジェさんとの別れのことを思い出して悲しくなっていた。
目の前でソンジェさんが撃たれるし。
入り込んで
のめり込んで
思い出して
入り込んで…
涙が止まらなくなってしまう。
カットがかかっても、
ソンジェさんが花束をもらって90°のおじきをしていても、
ずっと涙が止まらない
どうして私はソンジェさんと離れようとしたのだろう…
「ほら、どうした?」
ソンジェさんが隣に来て背中をポンポンたたいてくれる。その手が大きくてあたたかくてますます涙が止まらない。
「もしかしてあの時のこと思い出して泣いてるの?」
そう言った後
あのさぁ…って。
向きを変えて。
ソンジェさんは少し怒ってる?私は反射的にごめんなさいと謝った。
「過去は振り返らないの。傷は思い出すたびに深くなって行くんだよ」
「葉子の隣にはいつだって俺がいるって約束したよね」
ふわりと抱きしめられて私は綿菓子のようにしぼんでしまった。
ねぇ…ほら…
もう泣かないで。
クリスマスを笑顔で過ごそう。
ソンジェさんにそう言われて、世話のやける私はすっかり元気になってふたりして空港へ。
でもそこで天候のなんかか何かで、沖縄への便は飛ばないことがわかる
ソンジェがパパ~って手配して、私たちは札幌行きの飛行機に飛び乗りました。
③に続く
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