⑤~
「ねぇどうして髪もメイクも元に戻ってるの?」
ジヒョクくんはそんなことをあまりにもあっさりと言う。
私の気持ちも知らないで…
「私のことなんかどうでもいいんでしょ」
「そんなこと一言も言ってないじゃん。今の言葉取り消してよ」
「ジヒョクくんは何もわかってないからそんなこと言うんだよ」
もう止まらない…
どうせ今もホントは新しいモニターの子で頭いっぱいなくせにーーとかなんとか酷いことをたくさんぶつけた。
私のことただのお客さんだと思ってるジヒョクくんなんてイヤ
すぐそこまで来ている「その時」が恐ろしくもなって
呼び止めるジヒョクくんを振り切って私はその場を逃げ出した。
もうぐちゃぐちゃ…
サロンのすべてを封印しよう…
サロンを思い起こさせるものは処分したい。
部屋でひとりもくもくと
チラシとか
アンケートとか
ん?記入してなかったアンケート…これはデートの前の日の分だったっけ
「……」
書かれていたのはジヒョクくんからのメッセージ…
『…もうすぐモニターを卒業になっちゃうけど、俺は葉子ちゃんにこれからも会いたい。これからも俺と会ってくれますか?』
そんな。
聞いてないよ。
知らなかったそんなこと思ってくれてるなんて
会って謝らなきゃ。
焦る気持ちを押さえながら、丁寧にメイクする。
ジヒョクくんが教えてくれた通りに。ひとりで。自分の力で。
サロンのいつもの個室
驚きながらもジヒョクくんは
こっちに座ってと私をやさしく受け入れてくれた。
あんなにひどいこと言ったのに…
ひたすら謝る私に
顔を上げて…大丈夫だからとジヒョクくんはいつもの素敵なジヒョクくん。
「私新しいモニターの子にヤキモチやいて…」
「その先は俺から言わせて」
ジヒョクくんは私の言葉を遮ぎると真剣な眼差しで私に言った。
「葉子ちゃんのことが好きだよ。恋人になれたらいいなって…」
「…そんなそぶり見せなかったのに」
「先輩とのキズが癒えるまで一番近くで見守るって決めてたんだよ」
差し出された手に手を重ねて応える。
引き寄せられてあっという間にジヒョクくんの腕の中…
いつも近くで感じていたジヒョクくんの香り…
極上の愛に包まれる。
「両思いなんだからいいでしょ」
うれしそうなジヒョクくんの声が頭の上で響いた。
きっと私を見てる。
見上げると
大好きな人の笑顔があった。
END☆