「それ、俺としか思えない」って自信満々のソンジェさんは、
からかったり、からかうの休憩にしながらも…全力で否定する私から相手は誰なのかをなんとか聞き出そうとした。
それでも聞き出せないとわかると
私がその人にチョコ渡せるように協力したいとか言いだして。
協力も何も
あなたがその人なんですけど。
あなたが私に…
自分に自信を持って、勇気を出して渡せるようにしてくれるって言うのなら
そんな私になりたいって私は私でそう思う。
あなたに後押ししてもらって
あなたに渡したい…
その密やか かつ ややこしい計画はなんだかすごーく乗り気のソンジェさんによって順調に進んでいった。
チョコ渡すも何も。
チョコ渡さなくても
私たちはすごくいいかんじになる
…少なくとも私はそう思っていた。
そうあの時までは。
…今日は特別レッスンだからアレ着て来てねって言われてアレに身を包んだ私をソンジェさんは、そんな顔して見つめないでお願いだから…というような顔をしてじーっと見つめた。
上から下まで。
指先とか肩とか。
足首とか頬とか耳元とか。
ソンジェさんの視線が、私の身体にほんのり赤い跡を残して行くのがわかる。
気づかれないようにそっと薄手のストールを羽織り直した。
「やっぱりちょっとフィットしすぎですか?」
「フィットと言うより…その…
何もかも最高だね。やっぱりそれにしてよかった。」
ソンジェさんこそ。
光沢のある濃紺のスーツでバッチリ決めていてため息が出るほどかっこいい。
夜景を見下ろせる最高のロケーションの高級レストランのその仄暗い雰囲気よりも何よりも、ソンジェさんのお気に入りのブランドでお揃いな私たち…という事実に完全に私は酔いしれてもいた。
幸せな食事に幸せに満たされながらの最後のデザート。
テラスで食べようよって
そう言ったのはソンジェさんなのに。
寒い寒いって大騒ぎ(^^)
寒いから葉子ちゃんこっち来てよ~って無邪気に両手を広げたりもして。
そんなあなたのぽっかり空いた胸の中に
あなたが大好きだと、そう叫んで…
今すっぽり収まることができれば
どんなに心が落ち着くことだろう?
でもまだそんな勇気はなくて
そんなソンジェさんを私は楽しむ…
「お断りします」
「俺が凍えちゃってもー?」
ってじゃれじゃれ…
ああこんな時間がずっと続けばいいのにな。そんな気持ちが心に灯った矢先…
すっごく綺麗なモデルの桃子って人がふたりのテラスに現れる。
その人にソンジェさんは
私のこと…彼女は友だちですからって
なんだかスマートに対応するから
違う世界の人だ…
ただすれ違っただけのそのふたりの様子に
一瞬にして私は目が覚めて
目を合わすこともできない。
さっきみたいに話すこともできない。
フィットしたドレスも
ストールから覗いた肩口も
急に恥ずかしくなって
ただ無口になってうつむいていた。
「なんか様子がおかしい」
ソンジェさんにそう言われても…
③に続く☆