パーティ会場はすでに賑わっていた。
なんだか気おくれしてしまって隣のユナクさんを何度も見上げる…
その度にユナクさんは必ず気づいてやさしく微笑んでくれた。
約束通りユナクさんは目立たないように…
スーツから立ち振る舞いから抑えに抑えぎみ。
それでも滲み出るオーラは輝きを放って
周りの視線を集めてしまう。
ただならぬ様子に吸い寄せられるようにやって来たエリカは羨望の根源が私の彼氏と知るとすごすごとその場を去って行ってしまった。
どうだという気持ち…。
私の彼のユナクさんは存在感がハンパないんだぞと、目立たないでと願っておきながらひけらかしたくもある。
でもそれは私が頼んだから。
彼氏役なだけ。
…通院デートの日、バレンタインパーティのことから自然と話題はチョコもらうとか渡すとかになった。
「今年もきっとひとつは本命チョコがもらえるはず」
確かにあの時ユナクさんはそう言った。
ユナクさんにはずっとつきあってる人がいる…
そう解釈するしかなくて
なのに彼氏役頼んだりしてって落ち込んで…
浮上したり落ち込んだりもっと深く落ち込んだり這い上がったりしながら
ユナクさんに彼女がいたとしてもパーティの時だけのパートナーでいさせてもらおうって…そう決めたはずだった。
…思い出して悲しくなったのは素敵な彼だねってみんなから褒められたからじゃなくて、ユナクさんがあまりにもやさしかったから。
一緒に歩く時は少しだけ後ろを。
座っている時は膝が僅かに触れて。
立ち止まると視線に守られる。
その何とも言えない距離感に
まだ渡すかどうか迷ってるバックの中のチョコみたいに私自身がカンタンに溶けちゃいそうになった。
「素敵なバレンタインに乾杯」
…溶けちゃいそうでも溶けちゃいけないのに
言われるがまま見つめられるままワイングラスを傾ける。
それから私たちはパーティの余興に乗っかって秘密を打ち明け合った。
実は葉子さんに秘密にしていたことがあるんだとユナクさんから切り出された内容は秘密でもなんでもなくて…
ハウンちゃんから預かってるというかわいらしいチョコを渡される。
僕ももらってるんだよってチョコ見せて…
「今年唯一の本命チョコだよ」なんて言う。
ああ…これこそがあなたの秘密。
フリーなの?彼女いないの?
じゃあ渡してもいいよね。
ユナクさんの秘密に後押しされて
私が胸を張ってチョコを渡す頃には
さっき飲んだワインも程よく効いてきて良い感じによろめいたりもして…
ハッと抱きとめたユナクさんは、もう大丈夫ですって言ってるのに
「うん、知ってる」なんていいながらも離してくれなかった。
ユナクさんも酔ってるの?
酔ってるユナクさんは深く息を吸い込んだ後もうひとつの秘密をハニカミながら打ち明けた。
「実は僕は匂いに敏感で…
ずっと気になってたんだけど
この匂い…シャンプーかな?」
言い終わると同時に素早くユナクさんに引き寄せられて
よろめいた時よりもダメダメになりながら
厚い胸に顔を埋める…
④終に続く☆
今日の寝る前の一曲は
♪「Stay with Me」
大好き‼︎