事務所には今年も伝えたい愛が集結して甘い香りが溢れて幸せな気持ちになる。
でも今日は
埋れてしまうくらい小さな、
たったひとつのチョコがほしくてほしくてたまらない…
おまえがほしくてたまらない…
レイに呼び止められて
6分の1のチョコを受け取った。
受け取りながらも心が探す…
見つけた時にはもう後ろ姿で…
しかも事務所のドアを開けたところで…
もうおまえが誰に渡すかとかグァンスどこ行ったんだってなるかもとか関係なかった。
全速力で追いかけてすぐに辿り着く。
すごく焦った分だけ力を込めて
おまえの腕に手を伸ばす。
触れたところから記憶されて
刻み込まれて
このまま離れなくなればいいのに
by グァンス
勝手にって…
振り返ったらグァンス…で、すごくすごくうれしいのに私は「勝手に」っていうところに激しく反応して…
私たちイルミネーションまでとてもいい雰囲気だったじゃない。
ジヒョクさんとの食事に誘われた時なんてそこに行けばふたりの愛が深まったり進んだりするんだって信じて疑ってなかったんだからね。
勝手に他の子といいことしたのはそっちでしょ。
…そう心で思う分だけ言葉はトゲを含んだものになって、グァンスからやっぱりこの前からちょっとヘンだぞとか体調でも悪いんじゃないかとか言われます。
そしてグァンスは私のすべてを隈なく見つめてバッグの中のチョコを見つける…
…
掴んでいた腕からスッとグァンスくんの手が離れた。
「…ああ、そうか。…今から渡しにいくのか?」
さっきとは打って変わって元気のない声でグァンスくんは言った。
「あっこれはいらないチョコだから」
「もしかしたら受け取ってもらえなかったのか?」
「…渡してないの」
「なんでだよ?渡すために買ったんだろ?」
「それができないから苦労してるのに。
大したことないみたいに言わないで‼︎」
…ああ、何も言わないつもりだったのに
「勇気出す前からなんであきらめるんだよ。頑張って渡して来いよ。」
「……だってグァンスくん、あんなにいっぱいチョコもらってるじゃない。」
「えっ?」
「しかもさっきはレイさんからもらってたし」
…もう止まらない。
「あんなかわいい人にチョコもらったらもうこんなチョコ必要ないでしょ」
…あっ言っちゃった
言った後で青ざめる
「えっ?…いや
ちょっと待て…いいか?…」
グァンスくんは浮かんだひとつの考えを確かめるように私のバックからチョコを取り出した。
そしてリボンに挟んでいたメッセージカードを開く。
ああ~
それは~
今読んじゃダメ~
『いつもありがとう
グァンスくんのことが大好きです』
下を向く。顔は見れない。
グァンスくんが背を屈めて顔を覗き込むから、さらにあっちを向いて…
「おい」
「…はい」
次の瞬間全く予想のできない感覚が額に走った。
「い、痛っ‼︎」
パチンとグァンスくんのデコピン
「バーカ
俺のチョコを勝手に誰かに渡そうなんて考えるからだ。」
次のの言葉は聞き取れないくらい小さな声で…
でもうれしすぎて聞き取れちゃった^ ^
「誰に渡すのかって
モヤモヤしてた俺がバカみたいじゃねーか」
「あの時だってこのチョコ見つけて…
ショックだったんだからな…」
「ユナク兄さんと会ってたとか言うし」
「それって…ヤキモチ?」
「う、うるさいぞ…」
全部言い終わるより前に柔らかいものが額に触れる。
それはグァンスくんの唇だった。
⑤(終)に続く