すべて終わって私たちが部屋へ戻った時にはもう日付が変わっていた。
玄関ではおきまりのKissの嵐
いつもはソンジェさんから…
今日は酔ってるせいで私からも…
「あ"~さっきのしなきゃ…ステージで我慢した分‼︎」
思い出したようにソンジェさんはオーバーアクションでそれはそれはうれしそうに顔や首筋にKissを降らせた。
ひとしきり玄関での儀式を終えるとようやくじゃれ合いながらリビングへと向かう。
「お茶、入れるね」
「ん…ありがとう。
俺、先に着替えて来ていい?」
ソンジェさんが寝室に入って行く後ろ姿を見送りながら改めて幸せを感じた。
…ショーの後の打ち上げで突然ソンジェさんは私たちの関係を発表した。
「恋人でもある葉子と仕事で共演できて」
ソンジェさんの周りへの気配り満載のあいさつをうんうんって聞いてて、
最初はこの部分も普通に私は頷いてしまった。
ざわつきが黄色い歓声に変わって一斉に視線が集まってはじめて
事の重大さに気づいた。
「勝手に言ってごめん。でも俺…言いたくて仕方なかったから」
ここにいる人たちは俺たちのことを面白おかしく広める人たちじゃないよって…
みんなに知ってもらったことをソンジェさんはとても喜んでいた。
「あると思いますか?」
いつだって覚悟はできてます…
…あの後、宴会は私たちのことで持ちきりで、質問攻めに合って
その都度ソンジェさんは好感の持てる切り返しをしてさりげなく私を気遣ってくれた。
「葉子…」
名前を呼ばれて振り返ると着替えに行ったはずのソンジェさんがそのままの格好で
何かの袋を持って立っていた。
「どうしたの?」
「やっぱりお茶入れる前にこっちに来て…」
手招きされてソンジェさんの向かいに行くと持っていた紙袋を差し出される。
「ショーと初モデル…おつかれさま」
「ソンジェさん…」
「よく頑張ったね。仕事ぶりを見て惚れ直したよ。」
穏やかで真摯な響きの言葉に涙が溢れた。
「開けてもいい?」
「もちろん」
大好きなブランドのロゴの袋そっと開ける。中にはいつか私を釘付けにした若草色のストールが入っていた。
「いつの間に…?」
「この間、こっそりね…。だって葉子、それ欲しそうだったから」
ソンジェさんがストールを手に取って
私の頭にふわりとかける…
俯くとやさしく手を引いて照明の真下に連れて行く…
ただされるがままでいる。
ソンジェさんは私の向かいから横へ移動して自分の腕に私の腕を絡めた。
パパパパーン…♪
パパパパーン…
ソンジェさんのウェディングマーチ^^
「葉子さん、あなたは彼を敬い、寄り添い、一生愛し抜くことを誓いますか?」
「ふふ…誓います」
笑った私に真剣なんだと言うようにソンジェさんは咳払いする。
「俺も葉子を一生愛し抜くことをここに誓います」
真剣な新郎は私を再び自分の向かいの位置に立たせた。
ベールの代わりのストールを上げる…
「このまま行くと誓いのKissだけど、意義はありますか?」
「あると思いますか?」
「ないと思います」
間髪入れず否定するソンジェさんは甘い微笑みのまま顔をゆっくり近づけて
間髪入れず否定するソンジェさんは甘い微笑みのまま顔をゆっくり近づけて
深くて長い誓いのKissをした。
「誓っちゃったね」
「はい、誓いました。」
「覚悟はいい?」
「何の覚悟ですか?」
「俺にとことん愛される覚悟」
いつだって覚悟はできてます…
そう言う変わりに背伸びをしてソンジェさんの唇に自分の唇を重ねる。
次の瞬間、背中に回された腕のぬくもりに
終わりのない確かな愛情を感じて
私はもう一度目を閉じた…
END