俺の机から見ると左斜め前…
出先から帰って部屋の扉を開けるといつも右手に君は居たから
自然とそちらを向くくせがついてる。
でも今日は居るはずの所にすっぽり君が居なかった。
すぐに俺は置き手紙を見つけてグァンスの部屋に行ったことを知る…
ホントはすぐにまた出かけなくちゃだったんだけど、ちょっとだけグァンスの部屋に行ってみることにした。
…社長室の前で乱れた息を整えてると中からは笑い声が聞こえて来た。
君の声…グァンスも笑ってる…?
一瞬躊躇ったけど
「あ~告げ口してる」って、
勢いよく合流することに成功する。
なになに?ソンジェさんはイジワルだ~とか言ってなかった?
さり気なく君の隣に座りながらちょっと冗談めかして探りを入れた。
本当は君がグァンスとふたりきりで何を話したのかが気になってしょうがなかった。
だって君はグァンスのことが好きなんでしょ。
出会いのシチュエーションなら負けてないはず。
だけど君はちゃんとグァンスのことをよくわかった上で思いを寄せてるって…
グァンスが大きな存在になったきっかけを
君から聞き出したのは自分なのに…
よくわかってる。
よくわかってるからこそ
グァンスには渡せない。
…グァンスは少し浮かない顔して
「ソンジェさんは大変じゃないか?」なんて君に言ってる。
「くやしいけど仕事しやすいんですよ」って君は答えた。
「それならよかった」
言葉には似合わない無表情…
どことなく不本意な感じさえ漂わせてる。
今度は俺が君に
「くやしいけど…っていうとこ何かひっかかるなあ~」って言う。
いつものように君は3倍くらいの声量と言葉で応戦して来る。
すると小さく頷きながらも不思議そうにグァンスは呟いた。
「ソンジェさんの前だと自分の意見をそんな風に言えるんだな」
…手元から離れて初めて気づく感情になんて負けないよ。
グァンスはいいやつだけど
それとこれとは話が別で。
あの時、ちょうだいって
俺はちゃんと言ったからね。
by ソンジェ
…
「ソンジェさんの前だと自分の意見が言えるんだな」
グァンス社長に言われて
そのことに初めて気づいた。
ソンジェさんもそんな時に限って冗談でかわさずに黙ってしまってちょっと困った。
なんだか重い雰囲気を感じて私はわざと明るい声で名古屋出張の話を持ち出す。
「来週3人で名古屋行くんですよね。楽しみですね。」
「…ああ。そうだね。
話は終わったんだよね。じゃあ行こっか」
ソンジェさんは私の方だけを見ながら立つように促した。
グァンス社長に会釈して部屋を出ようとする。
その時不意にグァンス社長に呼び止められた。
グァンス社長は私を名字で呼ぶ…
振り返ってグァンス社長を見る。
「いや……なんでもない」
思わず呼び止めたというような声…
気になりながらもそのまま部屋を出る
私が先に
ソンジェさんが後に…
「わかりやすいな」
ソンジェさんは誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
そっとスローモーションでパタリと社長室の扉が閉まる…
それは恋の蕾が開いた合図…
3人の恋が絡んで行く
ひとつのものを取り合う
濃厚に。
⑤に続く☆