⑦~
私はグァンス社長から行って来い‼︎と後押しされて、空港へ駆け出します。
そして出発ロビーで見つける。
イスの背もたれに身体を預けてパスポートを弄んでいる人…
大好きなソンジェさん
あなたに会えなくなるなんて
私は考えられません。
そう思いながらそっと近づく
「勝手ですね」
私のその声は雑踏の中に溶け込むほどの小ささだったかもしれない。
でも確かにあなたへ届いたはず…
ピタっとソンジェさんの動きが止まった。
…
完璧な幕引きだ…
我ながらよくやったと思い返してみる
何より彼女の意思を尊重したかった。
ただでなくても人のことばかり考えてるんだから…
もう別れた人の思いグセなんて覚えていて何になるんだろう。
それはあまりにもリアルで…まだ過去のことになんてできていないなと思い知る。
自分で引いた幕の代償は
さみしさだったり…
耐え難い抜け殻感だったり…
旅立ちのロビーがこんなに悲しい場所だったなんて。
子どもの無邪気な笑顔も
恋人たちの抱擁も
自分とは無縁のものだと思えてさみしくて仕方がない。
何のために…
どうやって…
生きて来たんだったっけ…
くるくるとパスポートを弄ぶ。
出会う前に戻ればいいだけ
そう、あのエントランスで
ペンを落とす前に…
拾ってもらう前に…
「勝手ですね」
「……‼︎」
その瞬間、周りのすべての音が消えた。
会いたいなんてひとことじゃ済ませられないくらいのその声の元に
すぐにでも飛び付きたいのを我慢して
立ち上がり
向き合った。
…
お互い…一緒にいる日常がどれだけ幸せだったかを、離れて再確認したふたりは
気持ちを伝え合います。
私からは
迷ったまま今は一緒に行けない…でも必ずあなたのところに行きますと。
ソンジェさんからは
その「あなたのところに」…って言ったあたりで引き寄せられて抱きしめられる。
どんな言葉よりも伝わる
ぬくもりにやさしさに大好きなあなたの香りに…
何より大きな愛情を感じながらも
私は「気持ちをまだ聞いてない」って言って甘えた。
感情をコントロールできないくらい、君が好き。
たぶん出会った時から。
ペンを拾ってもらった瞬間から。
超恥ずかしいこと言うよ。
今思うと俺にとっては運命でしかなかった…
…葉子
大好きだから。
だから俺のこと信じて待っててください。
ソンジェさんは抱きしめた両手の力を抜いて私の顔を見た。
瞳に頬に唇に…視線を受け取る。
ソンジェさんは前髪をかき分けるように
おでこにそっとKissをした。
それは、手のひらに握りしめていた
いちごのキャンディよりも甘い交わり…
私たちのはじまりのKiss…