今頃ユナクのBirthday | S.E.C.R.E.T超新星☆アリスタのブログ

S.E.C.R.E.T超新星☆アリスタのブログ

超新星大好き‼ソンジェ寄り寄りのオールペン、アリスタです。
「私の彼は超新星」のイベントストーリーを小説風にアレンジして記事にまとめてます♪☆ゲーストーリーに基本忠実に…いいカンジに盛ったり妄想が渦巻いたり、アリスタバージョンでお届けしてます\(^o^)/


部屋の真ん中に正座して
頭だけ動かす。


ひとつだけある窓は昼間でもきっと明かり取りの役目を果たさない。
そのくらいこのビルと隣のビルとは接近していた。


殺風景で広い
彼の部屋にひとり


冷蔵庫
玄関へ続くドア
大きなゴミ箱
タンス
小さなテーブル


キッチンからぐるりと見渡して
今はきちんと整えられているベッドに目を止め、あの日を思い出す。



「名前…」



「えっ…?」



「名前を… …呼んで…」



一度だけ…ここで
お互いさみしすぎたからとしか理由が見つからないような関係を結んだ。

衝動的で本能的な時間の波間に
彼は私に頼みごとをした。



「ユ・ナ・ク」



「…ユナク」



「そう…もう一度…」



「ユナク…」



そんなはじまりとは対照的に
それからの私たちの関係は驚くほどプラトニックだった。



彼が会いたいと言って来たのはいつも晴れた日のお昼間で…

ふたりで海辺を歩いたり。
自転車の乗り方を教えてもらったり。
オカリナの吹き方を教えたり。

何度も会ったわけではないけれど…彼については知らないことの方がまだまだ多いけど、私は彼にすでに強く深く惹かれていた。




危ない仕事をしているかもしれない…
そう確信したのは今日。つい数分前。
電話で呼び出されて慌てて出かける彼を見た時。

大きな背中で隠しながらゴミ箱から札束をたくさん取り出して彼は鞄に詰め込んでいた。



待っててくれるかな…少し時間がかかるかもしれないけど、ここで待ってて。そうだお土産…お土産買って来るよ。食べたいものない?何でも言って。


どちらかと言えば無口な彼の、普段とは違う饒舌ぶりに不安感が増しながらも私はぽつりと

「たい焼き…」

そう答えた。




わかった。たい焼きだね。僕も大好きだよ。たくさん買って来るからね。後でふたりで食べよう。


にっこり微笑んで、一瞬真剣な顔をして私の頭に手を置いた。少し首を傾げてじっと見つめて…その顔はゆっくりと近づく。唇を中心にして私たちは重なった。





…ここで待ってて。そう言われて
彼が出て行った後しばらく動けなくて
こうして部屋の真ん中。。。



タンスの上にある写真立てを見ようとやっと立ち上がる。手に取るとそこには小さなユナクと女の人が頬を寄せ合う姿があった。


大きな丸いケーキ…5本のロウソクの灯りがふたりの笑顔を照らしている。


写真の日付は1991.12.2…


今日?12月2日…?


今日はあなたの誕生日なの?


だから会おうって言ったの?


夜なのに珍しいなって思ってた。




何かお祝いしたいと思って冷蔵庫を開ける。中にはミネラルウォーターのペットボトルがひとつだけ。

『ちょっと夕食の買い物に出て来ます。すぐに戻ります』

そう置き手紙して部屋を出た。





君のこともっと知りたい。

そう言われたのはついこの前の海辺のデート…



ー好きな季節は?

「秋」


ー好きな色は?

「藍色」


ー好きな食べ物は?

「さくらんぼ」


ーふふ…

「なあに?」


ーいや、何でもないよ。好きな果物は?

「さ…」


ーさくらんぼ‼︎当たってる?

「当たってるけど」


ーほらだいぶわかって来た。ふふ…



私の言葉を遮ったあなたの笑顔が鮮明に浮かぶ。
ユナクは何がすきなの?と聞くといちごだと答えた。


今度は私が笑う番。
いつものクールなイメージからはかけ離れすぎてる。
赤くて小さな可憐ないちご…



…スーパーでいちごのパックを手に取ると籠の中の玉ねぎがころりと落ちて転がった。


転がる玉ねぎを拾いながら
彼のことがとてつもなく心配になって、その気持ちを追い払うように次々と食材を籠に入れた。


いちごは常に籠の一番上に…
潰れないように気をつけながら。






戻るとやっぱりまだ帰ってなくて
黙々と食材を下ごしらえして
次々に料理を作った。


テーブルに並べるとぎっしり…
彼の分と私の分と。


スーパーでわり箸とプラスチックのスプーンを貰って来てよかった…
彼の部屋にはお箸もスプーンもひとつずつしかなかった。


郵便受けに溜まっていたチラシをきれいに延ばしてテーブルの上の料理にかけて…



…帰って来ない彼を待った。



いつ帰って来てもいいように



何度か温め直して



また器によそって…



日付が変わっても淡々と



私はその作業を繰り返した。











ドン…



「…ん?ユナク…⁉︎」



テーブルの横でいつの間にか寝ていたみたいで大きな物音で目が覚める。



ドアに何かぶつかった音?



「…ユナク?」



ドアの向こうに声をかける…



… …



「…うん…」



かすかな声は確かにユナク…


ドアをそっと開けると傷だらけのユナクが壁にもたれて苦しそうにうな垂れていた。



ああ…よかった。
そっと抱きしめる。



「…ごめんね…遅く…なって…」



血がたくさん付いた自分の手のひらを広げて見ながら、ああ…全部置いて来ちゃったと言ってユナクは嘆いた。



「たい焼きたくさん買ったんだよ。それと…ケーキも…大きな丸いいちごのケーキも… …食べたかったから…」



「あなただけでいい。あなただけ帰って来てくれたら私は…」



ユナクの怪我はこのまま病院に連れて行った方がいいと一目でわかるほど酷かった。



でもどうしても部屋に入りたいと言ってきかなくて…私は抱きかかえるようにして彼を部屋に入れた。



テーブルの上の、たくさんの料理と大きな丸いいちごのケーキを見つけると
どうして?と言うように不思議そうに私の顔を覗き込む。



ケーキの横の写真立てを指差して
「お誕生日おめでとう」と伝えた。



ふっ…と微笑むと同時に崩れ落ちそうになって。必死に支えてベッドに連れて行ってそっと寝かせた。




「ユナク…病院に行こう…」

泣きながら懇願する。



「ちょっと待って。眠ってから…ここで…葉子の隣で…ちょっとだけ眠らせて…」



迷ったけど私は愛する人の言うとおりにしようと決めた。


しゃくり上げながら何度も頷くとユナクは安心したように私に寄り添った。




肩を抱いて


「葉子…名前を…呼んで…」




髪を撫でて


「ユナク… …私のユナク」




あなたが眠るまで


「葉子…ありがとう…愛してる…」




私も愛してる…


傷を避けながら額に口づけてそう言うと



ユナクはかすかに微笑んで



その柔らかな表情のまま



静かに目を閉じた。








END







{A0BA3BAE-F78B-4CB7-93F5-5EFA2789CAFF:01}