の日は滅多にないことが立て続けに
あった変な1日のスタートでした。




朝起きて外を見ると、真っ白でどこが牛舎で
どこが通路か全くわからないくらいの大雪。



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牛舎での作業をする為にも、まずは
辿り着けるように除雪をしないと始まら
ないくらいの状態。


いつもなら僕より早く起床し、無言で支度を
しているはずの親方がいない。

あー、そう言えば昨日の夜はちょっと遅めの
農協の新年会とか言ってたっけ。
普段はお酒を一滴も飲まない親方ですから
二日酔いはあり得ないとは思いましたが
きっと遅くまで楽しんでたのかな
って気を利かせて、1人で作業を始めるため
雪をかきわけタイヤショベルまで。


とりあえず必要最低限の雪かきをし
餌やりなどの作業を進めていても起きてくる
様子はありません。


おかしいなぁ。


仕方がないので1人で搾乳も終わらせました。

その間も雪はドンドン降り積もり、牧場内の
雪かきをと思い、タイヤショベルに乗って
除雪作業をしていましたが、何せ雪でどこが
どうなってるのかわからないのもあって
タイヤショベルのタイヤを脱輪させてしまい
にっちもさっちも行かなくなり、また
怒られるかなぁなんて思いながら親方の
お部屋に。


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『お休みのところすみません。
親方、ショベルのタイヤ脱輪させたので
助けてもらえませんか?』
と言いながら、お部屋の中に

すると
親方は目を開いたままイビキをかいてる。
少しだけ吐いたあともありましたが、
どう見ても異常が起きてるのは明らか。


慌てておばあちゃんを呼び、救急車を手配
するものの、大雪の為になかなか来ない。
やっと来た救急車で運ばれて行きました。


脳梗塞でした。


小さな町の病院では手がつけられず
そのまま、旭川の病院に救急車で3時間ほど
かけて搬送されましたが、手遅れでした。


心配でしたが、作業を止めることもできず
1日中いつもは親方と2人でやっている事を
1人でやっていました。夕方になり連絡を
受けて間に合わなかった事を聞き、
ガックリと落ち込みましたが、それでも
夕方の搾乳をしないわけにはいきません。


夕方になって農協がヘルパーを手配して
くれたので、お通夜や告別式には
出る事が出来ました。


牧場主がいなくなった今
詳しい事がわかるのは僕だけになってしまい
酪農研修に入って半年も経たないヒヨッコの
僕がその後の牧場運営を任されることに。


享年48歳
後で聞いた話では発見が遅すぎるのが
悲しい結末につながったと。

もし、ご夫婦で同じ寝室にいる状態で
異常を察知するのが早ければ違う結果も
あったとのこと。


僕がもっと早く親方のお部屋に行ってたら
とも思いましたが、その時点でもう遅いと
言われました。


いろんな事が積み重なって、きっと心労も
されていたと思います。これも後になって
聞いた話ですが、僕に対しては怒鳴りつけ
怒ってばかりでしたが、外では結構僕の事を
褒めてくれていたそうです。


真面目で
無骨で
無愛想で
怒りっぽくて
無口で
それでいて
目に見えない優しさや家族に対しての
愛情深く、思いやりのある人。


僕は親方に怒られた、怒鳴られた経験は
宝なのかもしれません。だって今どきは
面と向かって怒られるってなかなか無い
ことですよね。


その後、牧場は閉鎖することになり
徐々に牛を売却していきましたが
それでも最後の一頭がいなくなるまでは
僕の責任と思い、仕事させてもらいました。


僕の北海道移住の最初はそんな感じ。
波乱万丈で密度の濃いわずかな日々。
期間的には短かったけど、その後の僕の
人生に与えた影響力は半端ない。


またまた次回に続きます。