Side N
次の日、収録のため楽屋のドアを開けると、翔ちゃんが新聞を読んでいた。
「おはよ」
俺が声をかけると、翔ちゃんは顔をあげてこっちを見た。
「あれ?智くんと一緒じゃないの?」
「大野さんは雑誌の取材あったから。もうすぐくると思うよ」
翔ちゃんが座ってるテーブルの向いの椅子に腰掛ける。
翔ちゃんが俺を見つめて、くっくっと笑った。
「なに?」
「いや…どんなおしおきされたのかなって」
ニヤっと笑って言う翔ちゃんの視線の先を追うと、俺の鎖骨のあたりで…
あ…
もしかして…
慌てて鏡にそこを映すと案の定紅く印が浮き上がっている。途端に顔が熱くなった。
「もう…またかよ、あいつ」
「自分じゃ気づかないよね、その位置」
「…そういや、最近のファンデは高機能だからとか言ってたな…」
「ああ確かに、多分消せるよ。それくらいなら」
翔ちゃんは含み笑いのまま、鏡の前に置いてあったメイク道具からファンデーションとスポンジを物色して、立ち上がって俺に近づいた。
「ちょっと消せるか確かめよ?ニノ、襟持ってて」
俺は翔ちゃんが見やすいように着ていたTシャツの襟を少し引っ張ってアトになってる箇所を露わにした。
…なんか、人に…それもメンバーにこんな近くで見られんの、恥ずかしいな…
俺のそんな気持ちを知ってか知らずか、涼しい顔した翔ちゃんが俺の首筋に顔を近づけて、スポンジをそこにあてがう。翔ちゃんの香りがふわっと近づいた。
当たり前だけど、大野さんとは、全然ちがうんだよな…
大野さんにこんな至近距離に来られたら…もっとすごく…胸が騒ぐ。
「あ、消える消える」
翔ちゃんが明るい声をあげたとき、ガチャ、とドアが開いて、大野さんが現れた。
俺は翔ちゃん越しに目を合わせて「リーダー、おはよ」って言ったんだけど…
ん?
目を見開いて固まってる…
俺はその視線をおそるおそる追った。
俺の首筋に顔を埋めてる(ようにみえるであろう)翔ちゃんと、Tシャツの襟を自分で引っ張ってる俺…
っこれかーーー‼︎
「また…浮気してる…」
「違う違う違う違う違う‼︎」
むっと口を尖らせて大野さんが呟くのを全力で否定する。
「何?智くんどしたの?」
翔ちゃんがスポンジを持ったまま振り返るから、鎖骨のアトを見せながら言った。
「お前が、こんなところにアトつけるから、翔ちゃんがファンデで消してくれてたの‼︎」
言った途端、大野さんは安心したように笑った。
「よかったあ。カンペキ翔ちゃんがニノに手ぇ出してるように見えちゃった」
「いやー昨日の今日でそんなことできないでしょ…怖くて」
翔ちゃんが笑いながら言うと、大野さんはにやっと笑って、俺に近づいた。
顔を俺の顔に近づけて、呟く。
「まあ、またおしおきさしてくれんなら、ちょっとくらいは許したげる」
昨夜のことを思い出して、身体中の温度が上がっていく。そんな俺たちを横目で見ながら翔ちゃんが呆れた声を出した。
「だから、どんなおしおきしたんだか…」
「聞きたい?まずね、ニノの手をね…」
「おまっ…!そんなこと話すんじゃねーよ‼︎」
「えぇー聞きたいのかなって…」
「そんな話してたら、また松潤に怒られるよ…」
「…もう、怒ってますけど」
はっと振り向くといつのまに現れたのかドアにもたれかかって呆れ顔の潤くん…。
「何、また松潤怒らせたの、大宮は」
潤くんの後ろから相葉さんも登場して、興味津々の瞳で俺たちを見た。
「あ、やっぱ聞きたい?昨日ニノが、自分から…」
「お前、ヤメろよ、ぶっとばすぞ‼︎」
俺が怒った顔で声をあげると、大野さんは俺の両手首をとって、俺の胸の前で両手で束ねて、ニヤっと笑った。
「だから、どうやってぶっとばすの?こんな細い腕でさ」
「キモチの問題だっつってんだろ」
「ふふ…ウソ、言わない。みんなには内緒だもん、あんなニノ…」
「…だーかーら、い え で や れ」
松潤が怒りMAXの声をあげたから、俺も大野さんもはーい、って呟いて、着替えを始めた。
着替えの途中で、大野さんが「あ」と何かを思い出したように呟いた。
「翔くん」
「ん?」
新聞から顔をあげた翔ちゃんに大野さんは満面の笑みで言った。
「俺、翔くんへのおしおきのこと、忘れてないからね」
「えぇえ、それってまさか振付の件…?」
うん、ってうなずいてにこにこ笑う大野さんに翔ちゃんは情けない声を出した。
「勘弁してよー、智くーん」
ふふふって大野さんが笑って、それにつられてみんなが翔ちゃんを見て笑った。
終
これで、この妄想は
おしまいデス( ´ ▽ ` )ノ
ここまでお読みいただきありがとうございました!