Side N
ごくん、と喉を鳴らして、俺が薬を飲みこんだ後も、リーダーの唇は俺から離れようとしなかった。俺の 舌 を捉えて、さらに深く貪ろうとする。
あれ…
面食らいながらも、俺からも強く吸い付くと、彼は俺の顔を腕で抱きしめながら、俺を優しく、そして時折激しく求めた。ちゅっ…ちゅくっ…って楽屋に似つかわしくない音が何度も響いて、俺は彼の背中に回した腕に力を込めた。
あー、もう、熱上がりそう…
何度も口付けを繰り返した後、はあっ…って息を吐いてリーダーは唇を離した。
「ニノ…ごめん…なんか全然…やめらんなかった…」
申し訳なさそうな顔をして呟く、掠れた声に、胸が騒ぐ。
「ふふ…うつっちゃうかもね、風邪」
俺はわざといたずらっぽく笑って言った。
「…ニノのなら、うつってもいんだよ」
リーダーはまた照れくさそうに、んふふ、って笑った。
その笑顔に、また、どきりとする。
なんでこの人は…臆面もなくこんなこと言うんだろ…
「…俺の風邪菌、ひねくれてるよ、たぶん」
「っふふ…いいよ。おいらにうつったら、ニノの風邪、早く治るかもしんないし」
リーダーは笑いを含んだ声でそう言いながら、向かいのソファに座った。傍らに置いてあった雑誌を膝に乗せる。
「しばらく、寝な。ここにいるから」
「うん…リーダー、飲ませてくれて…あんがと」
急に恥ずかしくなってきて、リーダーにかけてもらった彼のシャツを鼻まで引っ張りあげながら、小さく呟くと、彼はかすかに笑った。
「いんだよ、そんなの……ただ…さ、」
リーダーは何か考えているように言葉を切った。
「…俺以外の奴にああやって薬飲ませてもらうの…無しな」
「…な、なんで…」
「なんでも」
リーダーは俺をじっと見て、きっぱりとした口調で素早く呟いた。そして、今度は俺から目をそらして、小さな声で拗ねたように呟く。
「なんか…ヤダから」
…な…
それって…
俺は鼻まで引っ張りあげた彼のシャツを両手でぎゅっと握った。リーダーが少し不安そうな顔でまたこっちを見つめるから、返事の代わりにこくんと頷くと、彼は安心したように笑った。
「ホラ、寝ちゃいな。風邪引くから」
「いやだから、風邪引いてんだって…」
俺は恥ずかしさを隠したくて、わざと呆れた声を出した。
…ああ、もう、
あなたといれば
胸の中は、いつも、
嵐。
俺はうるさく騒ぐ胸を落ち着かせようと、無理やり目を閉じた。
ったく…
あなた以外に
あんなことして欲しいなんて、
思うわけないじゃん…
けど、
けど…ね。
あなたが、俺のこと、
欲しくて欲しくてたまらなくなるまで、
そしてあなたが、それを
自分ではっきりと思い知るまで、
絶対に…
絶対に言わないよ。
だってこれは、
本気の狩猟(ハント)なんだから。
リーダーが雑誌のページをめくる音を聞きながら、俺はつかの間の眠りに引き込まれていった。