マーフィーの法則って、この前クラスメイト達と話したなあ…
こういう大事な日に限って、電車遅延とか…
ニノから連絡を受け、いてもたってもいられなくて、一人暮らししてる大学近くの自分の部屋から飛び出した。
改札前に立って目を凝らす。
そろそろ着く頃だけどニノの姿はなかなか見当たらない。大学に着いていなきゃいけない時刻まで、15分をきっている。
ニノは肝が座ってるけど…
入試なんて初めてだから、
ニノは肝が座ってるけど…
入試なんて初めてだから、
やっぱり、緊張してると思うんだよな…
やきもきしながら時計と改札を交互に見ていると、駅から出てきた乗客の塊の中に、ニノを見つけた。
「ニノ!」
「翔ちゃん」
ニノは俺を見つけて安心したような表情になった。改札を抜けたところで、その手をぐっとつかむ。
「翔ちゃ…」
「慎重に急げっ」
「なにそれ…ちょっ…」
ニノと手をつなぐ。
大学の誰かに見られるかも、と一瞬思って、見られてもいい、とまた一瞬で思う。
手をつないだまま、ニノを引っ張るように走り出した。
階段を一段飛ばしで駆け上がる。
「翔ちゃ…はやい…」
「お前、今までの努力を無駄にするな」
息を切らして登りきると、かたわらに止めてある自転車に乗った。
「ホラ、後ろ乗れよ」
ママチャリだからか、ニノは俺の自転車を見てふき出したけれど、俺が焦った顔で後ろに乗るよう促すと、すぐに荷台に乗った。
手をつないだまま、ニノを引っ張るように走り出した。
階段を一段飛ばしで駆け上がる。
「翔ちゃ…はやい…」
「お前、今までの努力を無駄にするな」
息を切らして登りきると、かたわらに止めてある自転車に乗った。
「ホラ、後ろ乗れよ」
ママチャリだからか、ニノは俺の自転車を見てふき出したけれど、俺が焦った顔で後ろに乗るよう促すと、すぐに荷台に乗った。
漕ぎ出すと、ニノが俺の体にぎゅっと腕を巻きつける。力強く漕いで、スピードに乗る。
背中に当てられたニノの頰の感触とか、ぎゅっと密着する薄い胸の感触とか…
ちゃんと感じたいけど、そんな余裕は時間的にも俺のフィジカル的にも、メンタル的にもなかった。
「翔ちゃん…ママチャリ…なんだ」
笑いを堪えるようなニノの声が背中から聞こえる。
「こういうとき役立つだろ?」
信号で止まっている車を横目に俺のママチャリは颯爽と大学までの道を駆け抜けた。足が痛くなって、息がきれる。
「お前…人生の岐路かも…しれないのに…けろっとしてんな…」
「だって…俺の人生の岐路、今翔ちゃんに託されてるもん」
涼しい声で背中から返ってくる。
「こらこら…」
こんなときまで、こっちが翻弄されるってどういうことなんだ。
正門が見えてきた。自分の通学でも同じ道をこんな早く着いたことはない。
「ニノ、教室どこって書いてあった?」
「A館の5番教室」
そらんじているのか、すぐに返事が返ってくる。
「よし」
キャンパス内を自転車にしては爆走といってもいいくらいのスピードで疾走し、A館前で止まる。時計をちらりと見る。入館締め切りまであと2分。
「間に合った…ニノ、早く行けっ」
「うんっ」
ニノは素早く自転車の荷台から降りると、A館の入口に小走りで近づいた。入口の直前で振り向く。ニノはにこっと笑った。
「櫻井先生、ありがとう!好きだよ」
「…え」
あっけにとられ、うまく言葉を返せないうちに、ニノは館内の受付の方へ消えていった。
俺が…
背中に当てられたニノの頰の感触とか、ぎゅっと密着する薄い胸の感触とか…
ちゃんと感じたいけど、そんな余裕は時間的にも俺のフィジカル的にも、メンタル的にもなかった。
「翔ちゃん…ママチャリ…なんだ」
笑いを堪えるようなニノの声が背中から聞こえる。
「こういうとき役立つだろ?」
信号で止まっている車を横目に俺のママチャリは颯爽と大学までの道を駆け抜けた。足が痛くなって、息がきれる。
「お前…人生の岐路かも…しれないのに…けろっとしてんな…」
「だって…俺の人生の岐路、今翔ちゃんに託されてるもん」
涼しい声で背中から返ってくる。
「こらこら…」
こんなときまで、こっちが翻弄されるってどういうことなんだ。
正門が見えてきた。自分の通学でも同じ道をこんな早く着いたことはない。
「ニノ、教室どこって書いてあった?」
「A館の5番教室」
そらんじているのか、すぐに返事が返ってくる。
「よし」
キャンパス内を自転車にしては爆走といってもいいくらいのスピードで疾走し、A館前で止まる。時計をちらりと見る。入館締め切りまであと2分。
「間に合った…ニノ、早く行けっ」
「うんっ」
ニノは素早く自転車の荷台から降りると、A館の入口に小走りで近づいた。入口の直前で振り向く。ニノはにこっと笑った。
「櫻井先生、ありがとう!好きだよ」
「…え」
あっけにとられ、うまく言葉を返せないうちに、ニノは館内の受付の方へ消えていった。
俺が…
俺が先に言うって言っただろー⁈
今のは特殊状況下のためノーカウントだな、とひとりごちて、俺は止めておいた自転車のスタンドを外した。