トーマ王子は潤王子を見て、驚いた表情を見せた。
そうか…
確か、潤王子の顔が、亡くなったいとこさんに似ているんだっけ…
「ようこそ、トーマ王子」
「あなたが潤王子…」
驚くトーマ王子の、脇にいた男も叫んだ。
「あ、トーマの…絵の人や」
「こら、ヨコ…」
トーマ王子は、隣の男をたしなめたが、反対側にいる男も声を上げる。
「ホンマや!めちゃくちゃ似とるがな」
「ヒナ、失礼だぞ」
トーマ王子は焦った様子でもう一方の男もたしなめた。
「絵?」
訝しげな顔をした潤王子に、俺は口を開いた。
「俺の…絵です」
「J を描いた、大野さんの絵だよ」
潤王子は驚いて俺とニノを交互に見た。
「J…あの絵はいっときトーマの城にあった。俺はあの絵を求めてこの国に来たんだ」
「カズ…そうなんだ…俺の絵を…」
潤王子が呟くと、トーマ王子が口を開いた。
「それは…全て私のことを思ってのこと…」
トーマ王子はニノを心配そうに見つめた後、潤王子へ向き直った。
「どうか、ニノを我が国へ返してくれないか?」
「トーマ…」
ニノと俺をつなぐ鎖がじゃらん、と音を立てる。
「もしかして…訪問の理由はそれなのか」
「ああ…」
驚く潤王子に、トーマ王子はさらに告げた。
「ニノは私と共に育った大切な乳母子…もともと貴国とこのような状態になったのは私の曽祖父や貴殿の祖父の時代の争いからだ」
トーマ王子は、目を閉じた。
「昔の争いのために、ニノを失うわけにはいかない…」
「同感だ」
潤王子は深く頷いた。トーマ王子はその場にひざまずいて深く敬礼した。取り囲む人々から、嘆息が漏れる。
「停戦を申し込みたい」
「トーマ…」
ニノが小さく呟いた。潤王子は、すぐにひざまずいて、トーマ王子の二の腕に触れた。
「私も長らく…そうした方がいいのではと…本当は思っていた。トーマ王子に言わせてしまい、申し訳ない。どうか、顔を上げてくれ」
「では…」
トーマ王子は潤王子に促されて立ち上がり、ほっとした顔になって、ニノをちらりと見た。
「しかし、カズは渡せないんだ」
潤王子は申し訳なさそうに、しかし毅然と告げた。
「なぜ…」
うろたえたように潤王子を見つめるトーマ王子に、潤王子は静かに告げた。
「カズは、我が国の王子だからな」
「な…」
「ハア⁈」
「ニノが王子⁈ 」
「え⁈ ニノが⁈ なんで⁈ 」
戸惑う西国の者たちの声と相葉ちゃんの声が広間に飛び交った。