BL妄想です
苦手な方はご注意くださいませ
Side O
休みをどうしよう、と考えて、はたと思い当たることがあった。
昔、信頼できる人に新宿二丁目のバーに連れて行ってもらったことがある。そこのマスターが、確か昔、売 り 専をやっていたと言っていたはずだ。何回か通ったけど、とても気立てのいい人だった。本人よりもずっと若かったけれど、高◯純次に似てるという理由で、タカジュンと呼ばれていた。
タカジュンに、こそっと聞いてみっかなぁ…
男同士のアレのやり方…
休みの日の夕方、俺はタカジュンのバーを訪ねることにした。
「いらっしゃいませ…あらっ…久々ねぇ。サトシじゃない?」
厚いドアを開けると、こぢんまりとした店内には何人かの客がいた。カウンターの中で、タカジュンが目を丸くしている。
「俺…わかる?」
目深に被った帽子にマスク、そしてメガネまでかけているのにタカジュンはすぐにわかったようだった。
「わかるわよ。男前を感知するスキルは高いからね」
カウンターを拭きながらタカジュンはニコッと笑った。
「どうぞ、掛けて?」
「そん前にさ…見た目と声変わりすぎじゃね?俺がわかんねぇわ」
数年前は、高田純◯に似たオネェの「男」だった。
今の姿は少しガタイのいい女性といったところか。注意深く観察すれば元男性かと見当がつきそうだ。声もずいぶんと細くなっている。くりっとした大きな目に昔の面影があった。
「ふふ、お金貯めてお直ししたのよ。芸能人もやるでしょ」
「おいらはやんねーよ」
「ふふっ、そりゃそうよね」
タカジュンは妖艶とも言える笑みをこぼすと、「何をお飲みになります?」と涼やかな声をあげた。
2杯ほど飲んだ後、俺はタカジュンに用件を切り出した。
「つきあい始めた奴がいんだけど…男でさ」
「あらぁ、男の子なの?」
「しっ、声でけぇよ」
俺は焦って店内を見回したけれど、後ろのテーブルにいる数人の他の客達は皆自分たちの話に興じていて、こちらを見るものはいない。
「なぁんだ、だったら昔の私でもイケたのかな?」
タカジュンはまるっきり女のような声でいたずらっぽく笑った。
「で、今日はその子のことで来たのかな?」
「ん…」
俺は次の言葉をどう切り出していいかわからず、しばらく考え込んだ。タカジュンはカウンターでグラスを磨きながら、静かに待っていてくれた。
「えっと…その…そいつんこと、どうやったら…その…傷つけずに…イヤな思いもさせずに…男同士でできんのかなって…」
一気に言い終わると、俺はほうっと息を吐いた。
「大事にしてるのね。その子も男同士は初めて?」
俺が「たぶん…希望だけど」と言うと、タカジュンは微笑んだ。
「いいわ。教えてあげる」
タカジュンは、後ろの客に聞かれないように声を潜めて、丁寧にそのやり方を俺に教えてくれた。
「できそう?ちゃんと相手の様子を見ながらよ」
「うん…」
ニノにそんなことするなんて…
この前の夜、指で 撫 でただけで、あんな腹 の 奥 を 疼 かせる声をあげてたのに…
おいら、ちゃんと我慢して、できんのかな…
…や、ちゃんとやれるかな、じゃねぇか。
ちゃんとやんなきゃ。
「頑張る。あんがと」
「ふふ…お役に立ててよかったわ」
タカジュンはにこっと笑った。