BL妄想です
苦手な方はご注意くださいませ
Side O
「体の異常はないが、どうやら、8、9歳くらいに戻ってしまったらしい」
帰ってきたチーフは、楽屋に集まった俺たちにそう告げた。
9歳…マジで子供になっちまったのか…
「そこらへんの年齢くらいまでの記憶はしっかりあるみたいだ。ただ8、9歳以降の記憶、つまり事務所に入ってからの記憶も含めて、かなり混濁している。人のことは見ればなんとなくわかるようだが、どこで知り合ったか、どういう関係なのかはわからない」
ニノはもう泣いてはいなかった。神妙な顔つきで俺たちを見回す。
自分のことで、大人がたくさん動いてるって感じてるんだろう。
「嵐としてデビューしたことは?」
「言われればそうだったかもしれない、という感じらしい。自分のことなのか、テレビで見た映像なのかわからないと」
「そうなんだ…」
皆がおし黙る重苦しい雰囲気の中、相葉ちゃんが力なく呟いた。
「本人には、一通り説明した。嵐というグループの一員で、本当は大人で、ドリンク飲んだら心だけ子供に戻ってしまったこと…ちゃんと理解してくれている。もうすぐ本番で、穴が開けられないことも」
「ご…ごめんなさい…」
ニノは申し訳なさそうに肩をすくめた。
「大丈夫、ニノは悪くないよ」
俺はソファに座るニノの隣に座って、体を抱き寄せた。
「おーのさん…」
「や、そもそも俺が悪…」
「松潤も悪くないよ」
松潤が謝ろうとするのを俺は制した。
「とりあえず、目の前の本番をどうすっか、だよ」
「そ…だよね。ニノ、歌とかダンス…覚えてるかな?」
俺が言うと、相葉ちゃんは時計を気にしながら、ニノの顔を覗き込んだ。
「やるしかないでしょ」
翔くんの一言で、俺たちはソファから立ち上がった。
幸いにも、楽屋の広い一角で曲を鳴らして俺たちが踊って見せると、ニノは真似してすんなりと踊ることができた。
「すっげー、ニノちゃん、覚えてるの?」
相葉ちゃんがびっくりして、ニノの頭を撫でると、ニノははにかんだように笑った。
「覚えてないけど…なんか体動くから…」
「体が覚えてんだよ!ね、リーダー」
「ん…」
俺のことは…
俺とのことは、どれだけ覚えているんだろう。
俺と…キス…したこととか…
俺と…最後まではしてないけど…肌を重ねたこと、とか…
ひどいこと言い合って、ケンカしたこととか…
黙ったままの俺をニノは心細そうに見つめていた。俺は慌てて言った。
「あっ…そうだよな…ニノ振り覚えんの早いし…染み込んでんだよ。えらいな」
「大人のときの俺はダンス上手かった?」
「上手かったよ。今も上手」
「ふふ」
俺が褒めると、ニノははにかんだように笑った。突然の無邪気な笑顔が可愛くて、胸がどきん、と鳴る。