苦手な方はご注意くださいませ
Side O
予定より遅くなってマンションに着くと、俺は慌ててエレベーターに乗った。仕事の合間にニノに「メシ食って、わかれば風呂入って先に寝てて」とメッセージを送っておいたけれど、どこまでできているか心配だった。
それに、きっと、さびしがってる。
だけど、翔くん家に預けなかったのは、昨日そうしたら、俺の方が気になって、さびしくてたまらなかったから。
今日は帰ったらニノに会える、と思うと、一日中嬉しくて、いつもより仕事に集中できていた気がする。
遠慮がちに自分ちのドアを開けると、部屋の中は灯りは点いていたものの、しん、と静まり返っていた。ダイニングテーブルで食事をした跡はあった。風呂は沸いていない。
やっぱ風呂はわかんなかったか…
寝室をそっと開ける。照明はついていた。ベッドにかかった薄い掛け布団が膨らんでいてホッとする。近づくと、ニノが目を閉じてすうすうと寝息を立てているのが見えた。横向きに丸まって、いつも俺が掛けている薄い掛け布団にくるまっている。
声聞きてぇな…と思ったけれど、起こすのは忍びなく、そうっと部屋を出ようとしたら「おーのさん?」と小さな声がした。振り向くと、目をこすりながらニノが起き上がるところだった。
「ごめん、起こしちまった」
「会いたかった…」
ニノはベッドに座ったまま、俺をじっと見つめて呟いた。俺が近づくとニノは「抱っこ」と言いながら、両手を広げる。
はあ…
甘えてくるニノ…可愛い…
「ん」
俺はベッドサイドに立って、起き上がったニノをぎゅっと抱きしめた。とたんにニノが俺の腹に顔を埋めてくる。
「おかえり」
「ただいま…ごめんな、遅くなっちった…メシ食った?」
ニノは俺の体に顔をつけたままこくんと頷いた。
「風呂はまだ?」
「うん」
「じゃあ一緒に入っか」
ニノは顔をぐりぐりと俺の腹に押し付けてきた。
「ふふっ…どうした?さびしかった?」
「さびしかった…」
俺を見上げる瞳は子犬みたいに濡れている。口付けたくなるのをこらえて、俺はニノの頭を撫でた。
「ごめんな…昨日、翔くん家、どうだった?」
「昨日…楽しかったよ!みんなでおやすみのチュウしたりして」
ニノは思い出したのか、ふふっと笑った。
「え?みんなって?チュウしたの?」
聞きたいことがいきなりぶわっと出てきた俺は、混乱気味で聞いた。
「あ…えと…しょうちゃんが…ほっぺにチュ、って」
一瞬、言い淀んだように見えたけど、すぐにふふっとニノは微笑んだ。
ほっぺか…
ま、いっか…
そんなことで妬いてたら身がもたねぇし…
「そか…楽しかったんだな、よかった…じゃ風呂入ろ」
俺が言うと、ニノはにこっと笑ってベッドを降りて、ふたりで風呂に向かった。