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おおともゆうのブログ

こんにちは! シンガーソングライター、おおともゆうです。
このブログでは日々の生活の中で遭遇する摩訶不思議中で超常現象をご紹介致します。


甲州生まれで5つになるシゲ子という女児を持つ
シヅ子に、またもや惚れられてしまった大庭は
高円寺の彼女らのアパートに転がり込むことになる。
男めかけ。
ヒモだ。



「お金が、ほしいな」大庭
「......いくら位?」シヅ子
「たくさん。......金の切れ目が、縁の切れ目、って、本当の事だよ」大庭


お化けの絵を描けていた本当の自分とは
程遠い道化の自分。

いわば

飲み残した一杯のアブサン。

堀木なんかより自分の絵の方がうまい。
自分の画才を信じ込ませようとするのに必死な大庭に対して、シヅ子は、
あなたは、まじめな顔をして冗談を言うから可愛い。と一蹴してしまう。

私自身も熱弁をふるっている時に
カッコいいと言われるより
可愛いと言われることがあるので
どんなに力が抜けしまうかが分かる。
いわば、キラークイーンだ。
シヅ子役のシンガーソングライター
ゆたにまきこさん。
改めて見てみると
衣装にかなりのこだわりが見え、
一瞬ケープのように見える黒の袖がなんとも
大人の妖艶美を醸し出している。


......あなたを見ると、
たいていの女のひとは、
何かしてあげたくて、
たまらなくなる。
......いつも、おどおどしていて、
それでいて、滑稽家なんだもの。......時たま、ひとりで、
ひどく沈んでいるけれども、
そのさまが、
いっそう女の人の心を、
かゆがらせる。


これは成熟した大人の女性にしか言えない
殺し文句ですな。
私だったらベンジャミンバトンしてしまうかもしれぬ。


さうして
シヅ子の計らいで無事に漫画家となった大庭は
1日をほとんどを女児のシゲ子と過ごすことになる。

「お父ちゃん。
お祈りをすると、神様が、
何でも下さるって、
ほんとう?」

「うん、そう。
シゲちゃんは、いったい、
神様に何をおねだりしたいの?」

「シゲ子はね、
シゲ子の本当のお父ちゃんがほしいの」

シゲ子役の俳優の西田いづみさん。
童顔という以上に
もう完全に5歳の女児になりきった声音と表情。これには参った。







子どもだと油断し
完全に信頼していたシゲ子までも
本当は物事の一切を把握している
怖い大人であると確信した大庭は
またしても奈落の底へ突き落とされることとなる
喪黒福造なら
ドーン!
と確実に言っていたであらう。


そこへあのダークヒーロー堀木が

「色魔!いるかい?」と登場

その日以来
また悪の交友を続けることになってしまった大庭に対し、堀木が

「しかし、お前の、
女道楽もこのへんでよすんだね。これ以上は、世間が、
ゆるさないからな」




世間。
世間とは一体何なのか。
人間の複数のことを指すのか?
それとも世の中全体か?
どこにその世間の実体があるのか?

世間。
世間とは君のことじゃないのか?
君が許さないだけだろ?
世の中に対して始めてその恐ろしさの
ヴェールを剥がすことに成功した
大庭は表では、

「冷汗、冷汗」


と言って笑っただけであったが、

以前より物怖じをしなくなり
少しわがままになり
おどおどしなくなっていくのである。

世間を完全に無視して
物怖じをしなくなった大庭は、
外で酔っ払って帰ってきては
歌を歌い、シヅ子に絡み。

バアで無頼漢の振りをしたり
片っ端からキスをしたり

金がなくなると
シヅ子の服を質屋に入れ
その金でまた飲みに行き
酒量は増える一方。。。



さうして
さすがに三日三晩飲み歩いていたせいで
具合を悪くした大庭の足は自然と
シヅ子とシゲ子の住む高円寺のアパートへ
向かっていた。

部屋の前まで来ると
親子の楽しそうな会話が聞こえます。



「なぜ、お酒を飲むの?」

「お父ちゃんはね、
お酒を好きで飲んでいるのでは、ないんですよ。
あんまりいいひとだから、......」

「いいひとは、お酒を飲むの?」

「そうでもないけど、......」

「お父ちゃんは、きっと、
びっくりするわね」

「おきらいかも知れない。
ほら、ほら、箱から飛び出した」

「セッカチピンチャンみたいね」

「そうねぇ」



親子の心から幸せそうな声を聞いた大庭は
この幸せを邪魔したくないと思い
そこにうずくまって合掌したい気持ちに。

幸福なんだ、この人たちは。
自分という馬鹿者が、
この二人のあいだにはいって、
いまに二人を滅茶苦茶にするのだ。

それ以来アパートへは帰らず
世間とは個人と個人のその場限りの争いで
毎回その場その場で勝てばよいのだと
多少世間の大洋から解放された大庭は
またも京橋のスタンド・バアのマダムの
ところへ転がり込むことに。

「わかれて来た。」

それだけ言って
それで充分。
つまり世間との一本勝負は決まったのだ。。。


ゆたにまきこさん扮するシヅ子のテーマ。

彼女らしいお洒落な明るい曲調が
親子の幸せを物語っていた。



その⑤へ続く。。。



撮影は全て Nobuaki Saito 氏による。