小塚崇彦選手

【9月26日付 日刊スポーツから】

羽生結弦、金博洋ら進化した4回転時代/小塚崇彦氏

 

<小塚崇彦氏がジャンプ語る(1)>

 

 11年世界選手権銀メダル小塚崇彦氏(28)が、日刊スポーツでフィギュアスケートを解説する。10年バンクーバー五輪も経験した小塚氏が、男子シングルで注目を集めるジャンプについて語った。フリーで4回転を3~5種類で5本組み込むなど、多様な時代に突入し、平昌五輪は4回転ジャンプを含む要素をミスなくこなした選手がトップに立つと予想。6種類のジャンプそれぞれの違いについても語る

 

 4回転ジャンプをめぐる状況は急激に変化した。ここ2年で宇野昌磨がフリップ、羽生結弦がループに成功ネーサン・チェン(米国)と金博洋(中国)はルッツを跳ぶ。4回転半以外の5種類が出そろう現状を、小塚氏は『ほぼほぼ人間の限界に近づいている』と表現する

 

小塚氏

まず、羽生選手という4回転のトーループサルコーをすぱすぱ跳ぶ選手が出た。そこに勝つにはどうするか。ただ同じことをやっても二番煎じで羽生選手には勝てない。皆が新しいジャンプを、と考えたと思う。それに伴って技術点が伸び、演技構成点も伸びた。その傾向を見れば、最初にジャンプで技術点を上げて、あとから後半の点を出す。それがこの採点方式では近道と考えることもできます

 

 小塚氏は羽生とともに、19歳の金博洋にも注目する

 

小塚氏

彼の功績も大きい。14年9月にジュニアGPシリーズ愛知大会で(当時16歳の)金を見た。4回転のトーループ、サルコーを跳んで、その後にルッツも習得した。ジュニアがあそこまで4回転を跳ぶなら、シニアも負けていられない、やるしかない。4回転の進歩の裏には、そのような気持ちもあっただろう

 

 現在の4回転時代は羽生、宇野、チェン、金の4人が軸だ。3種類の羽生に対し、チェンは史上初の5種類を、宇野と金は4種類を実践に投入。2季前の羽生は1度転倒しても優勝できるほどジャンプの構成=基礎点で大きくリードしていたが、状況は変わった

 

小塚氏

他の選手がフリップ、ルッツを習得したことで、ひとつのミスが命とりになるのではないか。試合当日にミスなくできた人が、上にポンと上がると思った。これまではジャンプの技術面で差があった。そこが追いつけ、追い越せとなって実力が拮抗(きっこう)している

 

 羽生は今季のフリーで4回転を3種5本組み込むと宣言している。後半には3つの連続ジャンプに4回転トーループを用意。その上で基礎点が高いルッツを組み込む準備もしている。羽生、金博洋らが進化させた4回転時代。活発で過酷な平昌五輪シーズンが始まった