表現力を磨く島田麻央、新たな振付師と組む三原舞依  それぞれの意志が見えた新シーズンのプログラム

″強い女性”を演じる島田のショート

  7月になり、フィギュアスケート界は2023-24シーズンに入った。6月30日に横浜で開かれた『ドリーム・オン・アイス』初日公演では、スケーター達が新プログラムを披露している

 

  ジュニアデビューした昨季、全日本3位、ジュニアグランプリファイナル優勝、世界ジュニア選手権優勝と圧倒的な成績を残した島田麻央。この日はレディー・ガガの曲を使った新しいショート『Americano』を披露した

 

  白のトップスと黒のパンツ、ところどころにピンクのリボンをあしらった衣装で登場した島田は、3本跳んだすべてのジャンプを着氷させた。技術面での安定感は変わらない一方で、表現面では少し大人っぽさが感じられる。ラテン調のリズムに乗り、時折強さを感じさせる表情や動きをみせた

 

  島田自身が『表現力を見せるというところがテーマ』だと説明したこのプログラムは、ケイトリン・ウィーバー氏の提案によるもので『表現力のつけ方を教えてもらいました』という

『(昨季は)ただ笑うところだけだったのですが、今年は少しにらむっていうか、そういうところもあるプログラムなので。笑顔と少し怖い部分という使い分けが少しできるようになったと思います』

『強い女性で、少し上から目線っていうか、少し偉そうな感じだったり…後は笑顔で、歌詞にもあるのですが「誰にも私はつかまえられないよ」みたいな感じで、滑りました』

 

  14歳にしてトップアスリートの風格を漂わせる島田の芯の強さを表に出すのが、振付師の意図なのかもしれない。『自分は表現をつけるのが苦手なので、すごく難しかったです』という島田だが、ジュニアでは世界トップの座についた彼女の新たな一面をみせるプログラムになりそうだ

 

『今シーズンは、ユースオリンピック出場に向けて、(4回転とトリプルアクセル)二本成功を目標に頑張りたいです』

  目標をはっきりと口にした島田は、新しいショートで表現力も磨いていく

 

世界選手権開催国・カナダを意識した三原のショート

  昨季グランプリファイナル女王の三原舞依は、新しいショートプログラム『To Love You More』を披露した。青と白のグラデーションカラーの衣装を身に着けた三原が、透明感のある歌声に乗せて伸びやかなスケーティングをみせる

 

  終演後、三原は『歌詞に合わせた振付や表情を、しっかり一つひとつ気持ちを込めて滑れたらいい』と語った

『表現の部分では、間の作り方や一つひとつの動きの余韻を大切にしながら。歌詞もすごく強い部分も柔らかい部分もあるので、歌声に合わせてしっかりスケートで表現できたらいいなと思っています』

  セリーヌ・ディオンの歌唱と三原の滑らかなスケートは良く合っており、代表作になりそうな予感も漂う

 

  振付を手がけたのは初めて組むジェフリー・バトル氏で、カナダ人のバトル氏が母国の歌手であるセリーヌ・ディオンの曲を選んだという。今季の世界選手権はカナダのモントリオールで開催されることも考慮した選択で、『有名で大好きな曲なので、一つひとつ心を込めて滑っていけたら』と三原は意欲を見せている

 

  今季の目標を聞かれた三原は、ショート3位につけながらフリーでミスがあり総合5位に終わった世界選手権について触れている

『昨シーズン世界選手権ですごく悔しい思いをしたので、新シーズンは最初から最後までしっかりパーフェクトな演技をし続けられるように、体調管理もしっかりして。グランプリファイナルの2連覇と世界選手権の表彰台に乗ることを目標に、一つひとつ大切に、毎日全力で頑張りたいなと思っています』

 

  三原は昨季を前にしたオフシーズンに続きこのオフにもカナダに留学しており、アイスショーにも精力的に出演した。『もっと強くなりたい』『どんな状況でも自分のベストを尽くす』と考え、栄養や睡眠、トレーニングなど体のケアにも注意して過ごしてきたという

『それが、シーズンに生きてくるなと思って。そのまま続けていきたいです』

  三原は、今からシーズンの最後まで力を発揮するための準備をしている

 

  表現力という新たな武器を携えようとする島田、世界選手権に向けて特別なプログラムと体力を備える三原。オフシーズンも日本女子は着々とそれぞれの強さを磨いている