『大きくステップアップ』『自分への挑戦』フィギュアスケート界“注目の新星たち”の現在地…シニアデビューを飾った『二人の高校3年生』とは

  フィギュアスケートの2023-2024シーズンは、国内外の大会を経てグランプリシリーズがスケートアメリカからスタート。今週末にはスケートカナダが始まる

 

  新たなシーズンは、雪辱を期して、あるいは飛躍を志して、それぞれの思いとともに臨むシーズンでもある

 

鍵山優真が描く写真

『すべてをリセットして、新しい自分が100%であるようにと思っています』

 

  今シーズンへ向けて、鍵山優真はこう青写真を描き進んできた

 

  2022年の北京五輪と世界選手権で銀メダルを獲得。だが昨シーズンは左足の怪我により、出場は全日本選手権に限られた。その大会もまた、万全というところからは遠い状態にあった。そんなシーズンをこう語っている

 

『最初は試合に出られないのが悲しかったですが焦りはないです。(全日本は)プラスでしかなかったです。今まで以上の悔しさもすごく感じて、次につなげていきたいなって思えたので』

 

  着実に一歩ずつ足を進め、2月末に氷上で滑り始めた

 

『国内だけでもほんとうにレベルが高い』

  7月には全日本合宿に参加

 

『国内だけでもほんとうにレベルが高いものになっているので、自分の中で競技に対する気持ちがまたすごく燃えてきています。世界を見ればほんとうにいろんな個性を持っている選手がいて。4回転アクセルだったり、表現がすごい選手がいたり、いろんな選手たちから学ぶことがあると思うので、うまく吸収していけたらいいし、僕自身も世界に出たときに今シーズンのプログラムで目立つよう頑張っていきたいと思っています』

 

  ジャンプを戻していくこともさることながら、表現にも力を注ぐ。それを示すのがカロリーナ・コストナーがコーチとして加わったことだ。スケーティングを中心に屈指のスケーターとして活躍してきたコストナーに今春、イタリア合宿で指導を受けたとき、そのスケーティング技術や細部に行き届いた表現に圧倒された。もっと学びたいと思った

 

『理想はオールラウンダー』を掲げる鍵山は、あらゆる面で進化を遂げるべく、ただ復帰するにとどまらず、新シーズンへと備えてきた

 

島田高志郎22歳の決意『心が震えるような演技を』

『自分への挑戦』

 

  島田高志郎は言う。今シーズンのフリープログラム『死の舞踏』に寄せての言葉だが、それはフリーに限らず、トータルでのスタンスでもあるだろう

 

『クラッシックな曲に挑戦したいとステファン(・ランビエル)コーチに掛け合って、ディスカッションののちに決まりました』

 

  演奏のバージョンにもこだわり、オーケストラではなくピアノによるものとし、今までの自分になかった領域の表現に取り組む

 

『今日の演技だとお客さんが感動で心が震えるというところまでまったく及んでいないと感じました。自分にしか出せない特別な世界観を大事にプログラムを作り込んでいって、いつかは心が震えるような演技を目指して、練習をまずはしっかり積んで頑張っていきたいと思います』

 

  島田は昨シーズンの全日本選手権で自身初めての表彰台となる2位となった。その成績を受けて四大陸選手権にも初めて出場。階段を上がって見えた光景は、さらなる挑戦と成長へと島田を促す

 

  何よりも彼の姿勢が伝えるのは、早くから注目される中、ときに苦しみながらも絶えることのないスケートへの情熱

 

シニアデビューを飾った二人の高校3年生

  初戦のスケートアメリカには、今シーズン、シニアデビューを飾った2人の女子選手が出場した

 

  その一人が千葉百音だ

 

  シニアへと移行する今シーズンを前に、大きな決断をする。5月、生まれ育った仙台を離れ、京都の木下アカデミーに移籍したのだ

 

『大学に入ってからか今シーズンからか、すごく悩みました』

 

  それでも、目標とする2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪出場のためには『準備期間が2年では足りないと思いました』

 

  これまでもこだわって取り組んできた表現やスケーティングに磨きをかけたかった。そして昨夏の国内大会で4回転トウループに挑戦したのが示すように、高難度のジャンプも習得したかった。どこか感じさせる芯の強さが導いた決断だった

 

  その成果を示すべく臨んだグランプリシリーズデビュー戦、スケートアメリカは6位。得点を目にした表情は硬かった。順位以上に、昨シーズン3度出した合計得点200点台に及ばない177.79点が示すように内容に満足できなかった。苦さとともに終えたデビュー戦を糧に、フランス大会を見据える

 

スケートアメリカ4位の新星

  もう一人は吉田陽菜。千葉と同じ高校3年生。千葉に先駆けて2020年の春、名古屋から木下アカデミーに加入した

 

  中学1年生でトリプルアクセルを成功させ注目を集めていた吉田の存在をあらためて知らしめたのは昨シーズンの全日本選手権だ。ジュニアグランプリシリーズで連勝するなどして迎えた大会で、ショートプログラムは14位にとどまる。だがフリーではシニアのそうそうたる顔ぶれが並ぶ中で3位、総合でも6位とジャンプアップ

 

『すごいうれしいです。もっともっと伸びしろはたくさんあるので、少しずつ上に上がっていければと思います』

 

  その後、四大陸選手権にも出場を果たしている

 

  迎えたスケートアメリカではショート9位と出遅れるがフリーでは3位で巻き返し4位。晴れやかな表情を見せた

 

  彼らにとどまらず、誰もがそれぞれにテーマを持ち、より高みを目指して進んでいく。その中でどのような姿を見せていくのか。シーズンは進んでいく