空腹で運動すると、糖新生で筋肉が分解されると聞きました。それでは、食後すぐジョギングを始めると、筋肉分解は何時間経つと始まりますか?
有酸素運動は消耗性の運動なので、空腹でジョギングをすると、筋肉が消耗するという人がいますが、
空腹でジョギングをしても、筋肉の分解はおこりません。
その理由を説明します。最初の部分は、遠回りな説明になりますが、しばらく我慢してください。
体内の蛋白代謝
生体内では、一日に約250gの蛋白質が合成されています。
体内で必要な蛋白質の量が250gなのに、食事から摂取する蛋白質が普通は70gなので、体内で必要な蛋白質は大部分がアミノ酸の再利用によって得られていることがわかります。
一日に250gの蛋白合成のうち、腸粘膜、筋肉、血液蛋白、白血球、ヘモグロビンの合成に70gが消費されます。
食事の栄養を消化吸収するために、蛋白質から消化酵素が作られます。栄養として、蛋白質を70g摂取すると、蛋白質の消化のために、アミノ酸から50gの消化酵素が合成されて胃壁から分泌します。
栄養の摂取蛋白70gと消化酵素50gが胃の中で混ざり、120gのうちの110gがアミノ酸に分解されて腸管から再吸収されます。
食事の
分泌された消化酵素のうち10gが回収されずに大腸を通って排泄されてしまいます。
このような蛋白質の回転が、ジョギングをしてもしなくても、常に行われています。
空腹時になるまでの時間は、ジョギングをしてもしなくても、ほとんど変わりません。
肝臓は、脳のためのグリコーゲンを100g貯蔵しています。
脳は1時間に6gの割合でグルコースを消費し、血液が1時間あたり1.5gずつグルコースを消費します。肝臓は約13時間分のグリコーゲンを貯蔵できます。
肝グリコーゲンが枯渇することはありません。
肝グリコーゲンが残り少なくなる前に、肝臓は血中アミノ酸から糖新生を始めます。
この糖新生によって血糖が維持されるので、肝グリコーゲンが枯渇することはありません。
肝グリコーゲンが残り少なくなる前に、糖新生が始まりますが、平均的には、
13時間 x 0.7 = 9時間を経過した頃から、糖新生を始まると考えられます。
この時点では、まだ筋肉の分解は起こりません。
前述したように、体蛋白の新陳代謝や消化酵素の分泌、血液の再生などのために、血中には多量のアミノ酸が存在しています。
血中に多量のアミノ酸がある間は、肝臓は血中アミノ酸から糖新生を行うので、筋肉の異化を始める必要がありません。
血中のアミノ酸が何時間もつかは、状況によりますが、満腹から20時間以上経過するまでは、筋肉異化は起こらないと考えられます。
ジョギングの影響について考えると、仮に、2時間のジョギングをしたとしても、筋肉の異化が1時間以上早まることはありません。
ミズノ マラソンクリニック
ミズノ マラソンクリニックでは、大会の日の朝食はスタート3時間前までに済ますように、もしも、3時間前に食べられなかったら、2時間前に消化の良いパンなどで済ましてくださいとアドバイスします。
これは、マラソンは空腹にして走りなさいという意味です。
筋肉の異化は、肝グリコーゲンで血糖の維持ができなくなったときに起こるものですから、たとえ、空腹でフルマラソンを走っても、筋肉の異化はおこらないのです。
結論として、ジョギングを12時間走り続けても、筋肉の異化はおこらないのです。