ランニングを3時間続けたときの肝グリコーゲンと筋グリコーゲンの使用比率を教えてください。
ランニングを長時間つづけると、エネルギー源を脂肪のみにしてすることは可能でしょうか?
よく20分後に脂肪が燃え始めるといいますが、この場合の肝グリコーゲンと筋グリコーゲンの脂肪の燃焼比率はどうなるのでしょうか?


ランニングのエネルギー比率は、時間の経過では変化しません。
ランニングをいくら継続しても、エネルギー源が完全に体脂肪のみになることはありません。

その理由の説明はかなり長くなります。


説明の前提として、肝グリコーゲンは枯渇する前に糖新生が起こるので枯渇しないことと、
また、筋グリコーゲンはフルマラソンを走っても枯渇することはないことが前提になります。


2~3のウェブサイトに、「肝グリコーゲンが枯渇したら脂肪が燃える」とか、「筋グリコーゲンが枯渇したら脂肪が燃える」などと記載されていますが、その記述は誤りです。


下図は、筋肉でグリコーゲンが燃えたら乳酸が発生し、血液を通じて肝臓に送られ、肝臓でグルコースに変換されて、筋肉に送り返される様子を示します。


ダイエット7


下図は、血液中の乳酸値濃度のグラフです。


ダイエット7

トレッドミルで時速4km/hでウォーキングし、血中の乳酸濃度を測ると、だいたい、2ミリモルくらいの値を示します。
血中の乳酸濃度が2ミリモル以下では、筋肉に乳酸が貯まることがなく、常に肝臓でグルコースに変えられるので、被検者は理論上は疲れることがありません。この被検者が疲れない乳酸値をLT(乳酸閾値)といいます。


トレッドミルで、序々にスピード上げていくと、はじめのうちは楽です。楽なスピードでは乳酸が蓄積されません。
ところが、あるスピードからは乳酸が蓄積され始めるため、それ以上のスピードで走るとどんどん苦しさが増して、走り続けることができなくなります。
この地点をAT(無酸素性作業閾値)といいます。AT以上が無酸素運動で、エネルギー源は100%グリコーゲンです。


トレッドミル上の被検者にダグラスバッグをつけてもらって、酸素摂取量と二酸化炭素の量を測定すると、体内で脂肪が燃えたか、グリコーゲンが燃えたかがわかります。
トレッドミルの速度を5Km/h、6Km/hと序々に上げていくと、二酸化炭素の急激な上昇が起ります。この地点をVT(換気性作業閾値)といいます。

VTとATはほぼ一致し、VT以上が無酸素運動領域になります。


昨日のダグラスバッグの記事で、トレッドミルのスピードを徐々に上げていくと、ある速度までは、脂肪の燃焼量が速度に比例して増加していきますが、ある点を越えると脂肪の燃焼が低下に転じて、代わりにグリコーゲンの燃焼が急増することを説明しました。

つまり、エネルギー源の使用比率はランニングスピードによって決まります。

ランナーの意志でゆっくり走れば脂肪の燃焼比率が増加し、スピードを上げればグリコーゲンの燃焼が増加します。


> ランニングを3時間続けたときの肝グリコーゲンと筋グリコーゲンの使用比率を教えてください。


エネルギーの使用比率は被検者の心肺機能によりますが、一般には、時速8Km/hで3時間走れば、その時間中を通じて使用比率は筋グリコーゲン50%:脂肪50%程度です。
もしも、時速10kKm/hで走ると、使用比率はキングリコーゲン60%:脂肪40%程度になります。
使用比率は、経過時間に関係なく、ランニングスピードによって決まります。

長時間のランニングでは、疲れるためにスピードが落ちて、脂肪の燃焼量が増えるかもしれませんが、それは長時間走ったために脂肪の燃焼量が増えたのではなく、スピードを落ちたから脂肪の燃焼量が増えたのです。

ラストスパートでスピードを上げると、グリコーゲンの燃焼量が増えるので、時間によって使用比率が変わるのではなく、スピードによって使用比率が決まることがわかります。


一方、肝グリコーゲンは血糖の維持に使用され、脳のエネルギー供給のために貯蔵されたものです。肝グリコーゲンと筋グリコーゲンは完全に独立しているので、運動時間とは関係がありません。


> ランニングを長時間つづけると、エネルギー源を脂肪のみにしてすることは可能でしょうか?


脂肪のみをエネルギーとして走ることは不可能です。
たとえば、フルマラソンを走る場合、筋グリコーゲンだけでは30Kmくらいしか走れません。残りの12Km分は脂肪の助けが必要なので、マラソンではペース配分が重要です。
もしも、ペース配分を考えないで、トップスピードで走ると、30Kmの壁にぶつかって失速し、そこからは歩くか棄権するしかありません。
そのようになった選手の筋肉からサンプルをとって調べてみると、グリコーゲンが枯渇していることはなく、20~50%も残っています。


どこかのサイトの記述のように、肝グリコーゲンが枯渇してから、脂肪が燃えるなどということは、もともと肝グリコーゲンは枯渇しないので起こりません。

また、血液中のグルコースが枯渇してから、次に脂肪がエネルギー源になるどということも起こりません。

そんなことが、もしも起こるとしたら、ランニングをするたびに、私たちは低血糖状態になり、脳にグルコースが行かないので、ぶっ倒れてしまいます。


> よく20分後に脂肪が燃え始めるといいますが、この場合の肝グリコーゲンと筋グリコーゲンの脂肪の燃焼比率はどうなるのでしょうか?


燃焼比率はスピードが同じだったら変わりません。