適正心拍数について教えてください。


適正心拍数は、一般には、心拍数=(220 - 年齢)x50~70% で計算しますが、安静時心拍数が極端な人には合わない場合があります。

カルボーネン法では、次の式で計算しますが、これなら、安静時心拍数に左右されません。
適正心拍数 = ((220 - 年齢)- 安静時心拍数) * 0.5~0.7 + 安静時心拍数


> しかし適正心拍数よりも、強度を高めたトレーニングのほうがカロリーの消費が高く、脂肪が燃えそうな気がするのですが、どうなのでしょうか?


ランニングの消費カロリーと脂肪の燃焼量は、ダグラスバッグをつけて測定するとわかります。

トレッドミルのスピードを時速4Kmから序々に上げて行くと、消費カロりーと脂肪燃焼量、心拍数がスピードを上げるほど増加していきます。
ところが、ある地点から脂肪の燃焼量が減少に転じ、グリコーゲンの燃焼量が急激に増加し始めます。この地点を換気性作業閾値といいます。

さらにスピードを上げると、息があがってしまい心拍数が増加しなくなります。この地点を無酸素性作業閾値といいます。


下図のグラフは、エアロバイクを漕いで負荷を重くしていったときの、消費カロりーと脂肪燃焼量、心拍数の関係を調べたものです。


ダイエット7

この実験をした人は、某有名メーカーの元技術者で、ダグラスバッグを自作した人ですが、この人の場合、心拍数が125までは、消費カロリーと脂肪燃焼量が増加しますが、それ以上では燃焼量が減少に転じています。

ある速度を超えると、脂肪燃焼量が逆に少くなるのは、脂肪の燃焼速度が遅いからです。
脂肪の燃焼速度はグリコーゲンの1/8しかなく遅いので、間に合わなくなるので、脂肪燃焼が少なくなるのです。



> ダイエットでは、無駄にカロリーを消費しても意味が無いといわれる理由を教えてください


運動の目的には、競技や体力向上などいろいろな目的がありますが、ダイエットが目的の場合にかぎって考えると、無駄にカロリーを消費してもあまり意味がない場合があります。


ダイエットの目的は、余分に貯蔵されている脂肪と落とすことです。
体内には10Kg以上の脂肪が蓄えられているので、少しでもこれを消費するために、私たちはいろいろ工夫をします。

脂肪は摂取カロりーを少なくすると、基礎代謝で脂肪が消費されるので減っていきます。
しかし、食事を減らすのも限界があって、食事だけでは1ヶ月に2Kgくらいしか脂肪は落ちてくれません。もっと脂肪を減らしたいときは、運動で脂肪を燃やすわけです。


ここで、上図のグラフをもう一度見てみると、この人の場合、心拍数135のときの消費カロりーは多いのですが、脂肪の燃焼量がむしろ低下しています。その分、筋グリコーゲンが多く消費されるのです。


筋グリコーゲンは、本来は敵に遭遇したときに一目散に逃げる時のための緊急用エネルギーです。
このエネルギーは緊急用なので、できるだけ早く回復させておく必要があります。そのために運動をすると、お腹がすくのです。
もしも、筋グリコーゲンの回復に体脂肪が使えるのだったら、ダイエットはもっと楽になるのですが、脂肪からグリコーゲンは作ることができません。
エネルギー収支に欠損があれば、体脂肪で補われますが、運動で消費したグリコーゲンの分だけは脂肪で補えないのです。


注:栄養管理上では、有酸素運動をした場合、運動量の1/10の蛋白質と運動量の1/2の炭水化物を栄養必要量に加算しなければならないのです。無酸素運動の場合では、使われるエネルギーの100%がグリコーゲンなので、運動量に相当する炭水化物を栄養必要量に加算する必要があるのです。


上図の人の場合、心拍数125までは、ダイエットのための効果がありますが、それを以上では、いくら消費カロりーが増えても、脂肪の消費はむしろ低下するのです。
心拍数125以上では、緊急用エネルギーを消費するので、空腹感が多くなり我慢のダイエットになるのです。


有酸素運動については、多くの研究機関が膨大な研究結果を蓄積しててきました。その結果、ダイエットには、カルボーネン法の心拍数で運動するのが最も効果的だとされているのです。
目標心拍数 = ((220 - 年齢)- 安静時心拍数) * 0.5~0.7 + 安静時心拍数


世の中には有酸素運動無用論者も多いので、摂取カロりーと消費カロりーが同じだったら、24時間の脂肪燃焼量が同じだったという研究結果を読んだ人もいると思います。
しかし、この研究結果は的はずれです。摂取カロりーと消費カロりーが同じだったら、脂肪燃焼量が同じになるのは、当り前の話しです。


ダイエットはそうではなく、摂取カロりーを減らしながら、消費カロりーを多くしたいのです。そのためには、脂肪の燃焼量が多い運動が求められるのです。


この人の場合では、心拍数125以下なら、消費カロりーが大きくなるほど、脂肪の燃焼量が多くなります。
心拍数125以上では、消費カロりーがいくら増えても、グリコーゲンの消費が大きくなるばかりで、脂肪燃焼量がかえって少なくなります。

これでは、せっかくがんばって消費カロりーを上げても、無駄になるのばかりです。